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10-6. 絶縁材・粘着材・金属箔加工(前編) ― 熱だけでは成立しない。電気を止め、固定し、必要な場所だけ機能を持たせる ―

材料・加工技術

公開日:
10-6. 絶縁材・粘着材・金属箔加工(前編) ― 熱だけでは成立しない。電気を止め、固定し、必要な場所だけ機能を持たせる ―

熱対策部材を実際の製品へ組み込むとき、必要になるのは熱伝導材だけではない。
絶縁材。
粘着材。
銅箔。
アルミ箔。
これらは一見、熱対策とは別の材料に見える。
しかし実際には、
熱を逃がす。
電気を止める。
部材を固定する。
ノイズを抑える。
軽量化する。
という複数の役割が、同じ狭い空間で求められる。
つまり熱対策を成立させるには、TIMやグラファイトだけを見るのでは足りない。
その周囲にある絶縁材・粘着材・金属箔まで含めて、一つの機能部材として考える必要がある。

■絶縁材は「熱を邪魔する材料」ではない

絶縁材を入れると、一般に熱抵抗が増える可能性がある。

そのため熱設計だけを見ると、

「できれば入れたくない」

と考えたくなる。

しかし高電圧機器やパワー半導体では、絶縁がなければ製品そのものが成立しない。

重要なのは、絶縁材をなくすことではない。

必要な絶縁性能を、できるだけ小さな熱抵抗で成立させることである。

■絶縁材には多くの種類がある

絶縁材と一括りにしても、

PET。

PI。

PEN。

樹脂系シート。

セラミック系シート。

熱伝導性絶縁シート。

など、さまざまな材料がある。

それぞれ、

耐熱性。

耐電圧。

厚み。

柔軟性。

加工性。が違う。

つまり絶縁材選定では、電気性能だけでなく、熱・加工・実装条件を同時に見る必要がある。

■絶縁フィルムは薄いほど熱には有利になりやすい

絶縁フィルムを薄くする。

熱が通る距離は短くなる。

製品も薄くできる。

一方で、

傷。

ピンホール。

金属バリ。

異物。

の影響を受けやすくなる。

つまり薄膜化するほど、

材料メーカーの耐電圧スペックだけではなく、加工後の実製品として絶縁できるかが重要になる。

■絶縁材の位置ズレが安全性を変える

絶縁フィルムの外形は合っている。

しかし貼付位置がずれる。

すると高電圧部の一部が露出する可能性がある。

逆に大きすぎると、必要な熱接触面を覆ってしまう。

つまり絶縁材では、寸法だけでなく、どこを絶縁するかという位置精度が重要になる。

■開口加工で「絶縁する場所」と「接触する場所」を分ける

全面を絶縁フィルムで覆えば安全性は高めやすい。

しかし熱を直接伝えたい場所まで覆ってしまうことがある。

そこで、

熱源直上だけ開口。

電極周辺だけ絶縁。

ネジ部だけ逃がす。

という加工を行う。

つまり絶縁フィルム加工では、絶縁機能を面内で作り分けることが重要になる。

■絶縁距離を形状で作る

高電圧機器では、

沿面距離。

空間距離。

が重要になる。

絶縁フィルムの外形や開口位置によって、必要距離を確保することがある。

つまり加工形状は、単なる見た目ではなく、電気安全設計の一部になる。

■金属箔のバリと絶縁材はセットで考える

銅箔やアルミ箔を加工する。

端面に微小なバリが残る。

その上へ薄い絶縁フィルムを貼る。

すると局所的にフィルムへ負荷がかかる。

つまり、

絶縁材の品質だけを見る。

金属箔の品質だけを見る。

では足りない。

積層後の相互作用を見る必要がある。

■粘着材は部材を固定するためだけではない

粘着材は、

位置を固定する。

組立を簡単にする。

防水性を持たせる。

仮固定する。

といった役割を持つ。

熱対策部材では、TIMやグラファイトを製品へ取り付けるために使われることがある。

しかし粘着材を追加すると、

厚み。

熱抵抗。

硬さ。

が変わる。

つまり粘着材は、組立性と熱性能をつなぐ材料である。

■全面粘着が最適とは限らない

全面に粘着材を配置する。

固定力は上げやすい。

しかし熱経路へ粘着層が入る。

気泡も閉じ込めやすい。

そこで、

外周だけ。

数点だけ。

片側だけ。

といった部分粘着を使うことがある。

つまり、粘着材をどこへ置くかも機能設計である。

■熱源直上から粘着材を外すという考え方

例えば、

発熱体
↓
グラファイト

を直接接触させたい。

しかし部材全体は固定したい。

この場合、熱源直上は非粘着。

周囲だけ粘着。

という構造も考えられる。

これにより、

固定。

熱接触。

の両立を狙う。

つまり部分粘着加工は、単なる材料節約ではなく、熱経路を守るための加工になることがある。

■微粘着や仮固定も価値がある

量産工程では、

最終固定はネジやクランプ。

しかし組立中だけ部材を保持したい。

という場合がある。

ここで強粘着材を使う必要はない。

微粘着。

仮固定。

を使えば、組立性を上げながら後工程への影響を減らせる。

つまり粘着材は、

最終使用状態だけでなく、組立工程のために使うこともある。

■粘着力は温度で変わることがある

常温では安定。

高温では柔らかくなる。

低温では硬くなる。

すると、

固定力。

クリープ。

剥離。

が変わる。

熱対策部材は高温環境へ置かれることが多い。

そのため粘着材では、貼った直後の接着力より、使用温度での安定性が重要になる。

■粘着材のクリープが位置ズレを生む

高温状態で長期間荷重がかかる。

粘着材が少しずつ変形する。

グラファイトがずれる。

TIM位置がずれる。

絶縁端部が動く。

ということがある。

つまり粘着材加工では、接着力だけでなく、長期位置安定性を見る必要がある。

■剥離ライナーも量産性を左右する

粘着材にはライナーが付く。

最終製品には残らない。

しかし自動化工程では非常に重要になる。

剥離力が強すぎる。

部材が変形する。

弱すぎる。

搬送中に動く。

つまりライナーは、量産工程を成立させるための工程材料である。

■ライナー材質によって剥離挙動が変わる

紙。

PET。

表面処理違い。

などで、

剥離力。

剛性。

帯電性。

が変わる。

つまり同じ粘着材でも、

ライナーを変えるだけで自動化適性が変わることがある。

ここは材料メーカーと加工メーカーの協業価値が出る領域である。

■銅箔は「薄い金属部品」として考える

銅箔は材料に見える。

しかし必要形状へ加工し、

絶縁材と積層し、

粘着材を付けると、

一つの機能部品になる。

銅箔は、

熱拡散。

導電。

EMIシールド。

と複数の役割を持つ。

だから金属箔加工では、単なる金属切断ではなく、どの機能に使うかを理解することが重要になる。

■銅箔を熱の配線として使う

半導体付近から筐体へ。

発熱部から金属フレームへ。

銅箔を細長く伸ばす。

すると熱を別の場所へ導くことができる。

つまり銅箔は、

電気配線と同じように、

熱の配線として使える可能性がある。

加工形状が熱経路を決めるため、微細加工との相性がよい。

■銅箔はEMIにも効く

金属箔は電磁波を遮蔽するためにも使われる。

そのため、

放熱+EMI。

という複合機能を持たせることができる場合がある。

しかし、

どこへ接地するか。

どの範囲へ配置するか。

によって結果は変わる。

つまり熱には良くても電気的に問題になる場合がある。

金属箔配置は熱と電気の両方を見る必要がある。

■アルミ箔は軽量化で価値が出る

銅より熱伝導性能は低いが、アルミは軽い。

そのため、

EV。

航空宇宙。

ロボット。

ウェアラブル。

などでは有力な選択肢になる場合がある。

つまり金属箔選定では、最も熱を伝える材料ではなく、

必要熱性能を満たしながら最も軽い構成を選ぶことも重要に

■銅とアルミの使い分けは全体最適で決める

銅。

高熱伝導。

高導電。

重い。

アルミ。

軽い。

コストや加工性が違う。

どちらが優れているとは単純には言えない。

用途によって、

熱。

重量。

EMI。

接着。

コスト。

の最適点は違う。

加工会社は、材料そのものを決める立場でなくても、加工性の観点から比較へ参加できる。

■金属箔は薄くなるほど扱いが難しい

薄い銅箔。

薄いアルミ箔。

は、

折れる。

反る。

シワになる。

端部がめくれる。

といった問題がある。

そのため、数十μmの箔では、

金型精度だけでなく、

搬送。

支持。

張力。まで重要になる。

■金属箔の端面品質は長期信頼性へつながる

端面に小さな亀裂。

バリ。

めくれ。

がある。

温度サイクル。

振動。

を繰り返す。

その部分が起点となって破断が進む可能性がある。

つまり金属箔加工では、

初期寸法だけでなく、端面耐久性も重要になる。

■前編のまとめ:絶縁材・粘着材・金属箔は、熱対策の脇役ではない

熱を逃がすだけなら、熱伝導材を選べばよい。
しかし実際の製品では、同じ狭い空間で、
電気を止める。固定する。ノイズを抑える。重量を増やさない。
ことも同時に求められる。

絶縁材は、なくすべき材料ではない。
必要な絶縁を、できるだけ小さな熱抵抗で成立させる材料である。
だから薄くしたい。
しかし薄くするほど、傷・ピンホール・金属バリの影響が大きくなる。

粘着材は、固定するだけの材料ではない。
全面に貼れば熱経路へ入り、気泡も閉じ込める。
だから熱源直上は非粘着、周囲だけ粘着という構造が成立する。
そして粘着力は、貼った直後より使用温度での安定性が重要になる。

金属箔は、熱・導電・EMIの複数機能に関わる。
細長く伸ばせば熱の配線になる。
しかし薄くなるほど折れ、反り、端面の小さな亀裂が長期信頼性へ響く。

つまり、
これらは熱対策の周辺材料ではない。
熱対策を製品として成立させる構成材料である。

後編では、これらをどう重ね、
どこまで一つの部材にまとめるかを見ていく。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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