■工場設備の中には発熱源が多い
工場設備や自動化装置には、多くの発熱源がある。
● モーター
● サーボ
● インバーター
● 制御盤
● 電源
● 画像検査用照明
● カメラ
● センサー
● ヒーター
● エア機器
● 搬送機構
● 摩擦部
これらが長時間動く。
しかも量産現場では、数分だけ動けばよいわけではない。
朝から夜まで。
場合によっては24時間。
同じ精度で動き続ける必要がある。
だから設備の熱問題は、短時間の発熱ではなく、
長時間稼働による熱の蓄積として現れる。
■熱は設備精度を変える
工場設備で怖いのは、熱によって設備そのものの寸法や位置が変わることだ。
金属は温度が上がると膨張する。
樹脂も温度で変形する。
治具も、フレームも、搬送部も、微妙に変化する。
すると、
● 位置ズレ
● 寸法ズレ
● 貼り合わせズレ
● 打ち抜き位置ズレ
● 搬送ズレ
● 検査位置ズレ が発生する。
つまり熱は、設備の精度そのものを変える可能性がある。
■高精度加工では、わずかな熱変化が効く
一般的な加工であれば、多少の温度変化は許容できるかもしれない。
しかし、高精度加工では違う。
数十μm。
場合によってはそれ以下の精度が求められる工程では、わずかな熱膨張や治具変形が問題になる。
つまり高精度量産では、熱は寸法公差に影響するのである。
■設備が温まると、朝と昼で状態が変わる
現場ではよく、朝一番と昼以降で設備の状態が変わることがある。
設備が冷えている状態。
動き続けて温まった状態。
室温が上がった状態。
モーターや制御盤が発熱した状態。
これらによって、同じ条件で動かしているつもりでも、実際には設備状態が変わっている。
つまり量産現場では、設備が安定するまでの熱変化も考える必要がある。
■熱は材料にも影響する
設備だけではない。
加工される材料も熱の影響を受ける。
特に、
● フィルム
● テープ
● 粘着材
● 発泡材
● 樹脂シート
● 薄膜材料 などは、温度や湿度によって状態が変わりやすい。
材料が伸びる。
粘着力が変わる。
剥離性が変わる。
反りが出る。
搬送テンションが変わる。
つまり工場設備の熱問題は、設備側だけでなく、
材料側にも現れる。
■粘着材は熱で変わる
特に粘着材は、熱の影響を受けやすい。
温度が上がると、
● 粘着力が変化する
● 柔らかくなる
● 糊残りが増える
● 剥離しにくくなる
● 逆に保持力が落ちる ことがある。
つまり粘着材を使う工程では、熱によって加工条件そのものが変わる可能性がある。
■自動化装置では安定搬送が熱で崩れる
自動化装置では、材料を安定して搬送することが重要である。
しかし熱によって材料状態が変わると、
● 蛇行
● シワ
● 浮き
● 位置ズレ
● 剥離不良
● 巻き取り不良 が起きることがある。
つまり自動化装置の熱問題は、設備が熱いという単純な話ではない。
材料が安定して流れなくなる問題でもある。
■画像検査も熱の影響を受ける
画像検査装置も熱の影響を受ける。
例えば、
● 照明の発熱
● カメラ周辺温度
● レンズの熱変化
● ワーク位置の熱変形
● 装置フレームの膨張 などで、検査条件が変わることがある。
すると、
● ピントズレ
● 位置ズレ
● 明るさ変化
● 誤判定
● 見逃し につながる可能性がある。
つまり熱は、加工精度だけでなく、
検査精度にも影響する。
■制御盤の熱も無視できない
工場設備では、制御盤の熱も重要である。
制御盤の中には、
● PLC
● 電源
● サーボアンプ
● インバーター
● リレー
● 通信機器 などが入っている。
これらは発熱する。
制御盤内部が高温になると、電子部品の寿命低下や誤動作リスクにつながる。
つまり設備の熱対策では、製品加工部だけでなく、
制御部も見なければならない。
■工場環境そのものも熱条件になる
量産現場では、設備単体だけでなく、工場環境も重要である。
● 室温
● 湿度
● 空調
● 設備配置
● 日射
● 排熱
● 作業者の出入り
● 周辺設備の発熱 によって、工程状態が変わることがある。
つまり工場設備の熱問題は、装置内の問題だけではなく、
工場全体の環境問題でもある。
■熱は再現性を崩す
量産で最も怖いのは、再現性が崩れることである。
昨日は良かった。
朝は良かった。
1時間前は良かった。
でも今はズレる。
こうした現象の裏に、熱が関係していることがある。
設備が温まる。
材料が変わる。
治具が膨張する。
粘着が変わる。
照明が変わる。
その結果、工程条件が少しずつ変わる。
つまり熱は、量産の再現性を壊す要因になる。
■AI化・自動化で熱問題は増える
今後、工場設備にはさらにAIや画像処理が入っていく。
● AI外観検査
● 画像認識
● 自動補正
● ロボット制御
● センサー監視
● リアルタイム品質管理
これらが増えると、設備内部の電子部品や演算機器も増える。
つまり工場設備は、機械装置から、
動くコンピューターへ近づいていく。
その結果、熱源はさらに増える可能性がある。
■研究者視点 : 工場設備は熱変形と熱安定性が重要になる
研究開発や設備設計では、
● 熱膨張
● 熱変形
● 放熱設計
● 制御盤冷却
● 温調
● 熱シミュレーション
● センサーによる温度監視
● AIによる状態予測 などが重要になる。
設備の高精度化が進むほど、
温度変化をどう抑えるか
温度変化をどう補正するかが重要になる。
■現場視点
熱は条件出しを狂わせる
現場では、条件出しが非常に重要である。
加工圧。
速度。
テンション。
貼り合わせ位置。
剥離角度。
搬送条件。
検査条件。
しかし熱によって材料や設備が変わると、せっかく出した条件が変わる。
つまり現場では、熱を見ずに条件出しをすると、再現性が崩れる可能性がある。
■OTIS視点
OTIS視点では、工場設備・自動化装置の熱問題で重要なのは、
● 高精度加工
● 材料搬送安定性
● 貼り合わせ精度
● テンション管理
● 剥離性管理
● 自動化供給形態
● 治具設計
● 量産時の公差管理
● 温度による材料変化の理解
● 工程成立性 である。
特にフィルム・テープ・薄膜材料では、
材料が薄いほど、熱や環境の影響を受けやすいことが重要になる。
■OTISでできること
OTISでは、
グラファイト・金属などの熱伝導シートなどの
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● フィルム・テープ加工
● 粘着材加工
● リール供給
● 自動化工程向け供給形態設計
● 異形状積層
● 量産工程での条件設計
などを通じて、工場設備・自動化工程で使いやすい部材づくりに貢献できる可能性がある。
特に、顧客の自動化工程で安定して使える形にすることは、OTISが価値を出せる領域である。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 工場全体の空調設計
● 設備メーカーとしての装置全体設計
● 制御盤冷却設計
● AI制御ソフト開発
● 工場エネルギーマネジメント
を専門とする会社ではない。
しかし、自動化工程で使われるフィルム・テープ・機能部材を量産で成立させる
という領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ 自動化設備
★★★★★ 高精度加工装置
★★★★★ フィルム・テープ加工工程
★★★★☆ 画像検査装置
★★★★☆ ロボット搬送設備
★★★★☆ 半導体・電子部品製造工程
■まとめ
工場設備では、熱が量産再現性を壊す
工場設備や自動化装置の熱問題は、単に設備が熱くなる話ではない。
熱によって、
● 設備精度が変わる
● 材料状態が変わる
● 粘着特性が変わる
● 搬送が変わる
● 検査条件が変わる
● 量産再現性が崩れる 可能性がある。
つまり量産現場では、熱対策は品質対策であり、
熱対策は工程安定化でもある。
どれだけ良い材料でも、どれだけ良い設備でも、熱によって条件が変われば、安定量産は難しくなる。
だからこそ、これからの自動化工程では、
熱を前提にした工程設計がますます重要になっていく。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



