TECH COLUMN 技術コラム

3. 半導体デバイスの基本構造と動作原理
3-4. MOSFETの基本構造と動作原理

材料・加工技術

公開日:

【1】はじめに

MOSFETは、現在の半導体デバイスの中心的存在であり、
CPU、メモリ、スマートフォン、電源IC、センサーなど、
ほぼすべての電子機器で使われています。

MOSFETの特徴は、「電圧で電流を制御する」ことです。
BJTが電流制御型であるのに対し、MOSFETは電圧制御型トランジスタです。
この仕組みにより、消費電力が低く、高速・高密度な集積が可能になりました。

【2】構造の概要

MOSFETは、以下の4つの主要部分から構成されます。

 1.ソース(Source):電子や正孔が流れ出す端子。

 2.ドレイン(Drain):電子や正孔が流れ込む端子。

 3.ゲート(Gate):電界を使って電流を制御する端子。

 4.基板(SubstrateまたはBody):半導体の土台となる部分。


ゲートの上には絶縁膜(酸化膜:SiO₂)があり、
金属電極を介して電界を形成します。
これがMetal-Oxide-Semiconductorという名前の由来です。

【3】NチャネルMOSFETの動作原理(例)

MOSFETの代表的なタイプであるNチャネル(NMOS)の動作を見てみましょう。

 1.ソースとドレインはN型、基板はP型半導体で構成される。

 2.通常は、ソースとドレインの間に電子が流れない(OFF状態)。

 3.ゲートにプラス電圧を加えると、P型領域内に電子が引き寄せられ、
   表面にチャネルと呼ばれる導電層が形成される。

 4.このチャネルを通して、電子がソースからドレインへ流れる。


このように、MOSFETはゲート電圧でチャネルの有無を制御することで、
電流をON/OFFします。

【4】閾値電圧(Vth:しきい値電圧)

MOSFETでは、ゲート電圧がある一定値を超えないとチャネルが形成されません。
この値を閾値電圧(しきい値電圧、Vth)と呼びます。

・ Vg < Vth → チャネルなし(OFF状態)
・ Vg > Vth → チャネル形成(ON状態)


この特性により、MOSFETはデジタル回路のスイッチとして理想的です。

【5】PチャネルMOSFETの動作

Pチャネル(PMOS)は、Nチャネルと逆の構造を持ちます。
・ ソースとドレインがP型、基板がN型半導体。
・ ゲートにマイナス電圧を加えるとチャネルが形成され、電流が流れる。


NMOSが電子を流すのに対し、PMOSは正孔を流します。
CMOS回路では、この2つがペアで使われます。

【6】MOSFETの動作領域

MOSFETの動作は、ドレイン電圧とゲート電圧の関係によって以下の3つに分かれます。

カットオフ領域:Vg < Vth → チャネルなし、電流ゼロ。
線形領域(トライオード領域):Vg > Vth かつ Vdが低い → 抵抗のように電流が比例的に増加。
飽和領域:Vg > Vth かつ Vdが高い → 電流が一定になり、増幅動作を行う。


デジタル用途ではカットオフと飽和の2状態を利用し、
アナログ用途では線形領域で動作させます。

【7】BJTとの違い(比較理解)

BJTとMOSFETの代表的な違いは次の通りです。

 ● 制御方式:BJTは電流制御、MOSFETは電圧制御。

 ● 入力インピーダンス:MOSFETは非常に高く、電力損失が少ない。

 ● スイッチング速度:MOSFETの方が高速。

 ● 構造:BJTはPN接合2個、MOSFETは絶縁ゲート構造。


この特性の違いにより、BJTはアナログ増幅用、MOSFETはデジタル回路や電力スイッチ用に使い分けられます。

【8】MOSFETの利点

・ 低消費電力(入力電流ほぼゼロ)
・ 高集積化が容易(小型化・高密度化に有利)
・ スイッチングが高速
・ CMOS構造で相補動作が可能(NMOS+PMOS)


このため、MOSFETは集積回路の心臓部と呼ばれます。

【9】欠点・課題

・ 静電気に弱く、ゲート酸化膜が破壊されやすい。
・ しきい値電圧のばらつきが大きいと誤動作を起こす。
・ 微細化が進むと、リーク電流や短チャネル効果が問題になる。


これらの課題を克服するために、FinFETやGAA(Gate-All-Around)構造が開発されています。

【10】代表的な応用例

・ CPU、GPUなどのロジック回路
・ メモリセル(SRAM、DRAM)
・ 電源回路、モータドライバ
・ オペアンプなどのアナログ回路
・ センサー回路、通信モジュール


MOSFETは「増幅・スイッチ・電力制御・信号処理」の全てを担う万能素子です。

【11】まとめ

・ MOSFETは電圧で電流を制御するトランジスタ。
・ ゲート電圧によりチャネルを形成し、ON/OFFを実現。
・ 高入力インピーダンス・低消費電力・高速応答が特長。
・ 現代のIC・LSI・VLSIの基本構成要素である。

【理解チェック】

1.MOSFETの電圧制御型とは何を意味するか?

2.MOSFETの4つの端子名を答えよ?

3.NチャネルとPチャネルの違いは?

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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