TECH COLUMN 技術コラム

3-5. CMOS構造と動作の理解

材料・加工技術

公開日:

【1】はじめに

CMOSとは、「Complementary Metal-Oxide-Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)」の略です。
NチャネルMOSFET(NMOS)と PチャネルMOSFET(PMOS)を相補的に組み合わせて、
低消費電力・高集積・高信頼性を実現した構造です。

現代のマイクロプロセッサ、メモリ、スマートフォンなど、
ほぼすべてのデジタル回路がこのCMOS技術を基盤としています。

【2】CMOSの基本構造

CMOSは、次の2種類のMOSFETを1組として動作します。

・NMOS:電子をキャリアとし、ゲートに正電圧でON。
・PMOS:正孔をキャリアとし、ゲートに負電圧でON。


この2つを「直列接続」し、入力信号によって一方がON・もう一方がOFFになるように構成することで、
無駄な電流が流れない仕組みを実現しています。

【3】CMOSインバータ(NOT回路)の構造

CMOSの基本単位はインバータ(反転器)です。
その構成は次の通りです。

・上側にPMOS(電源VDDと出力間)

・下側にNMOS(出力とGND間)

・ゲート端子を共通の入力信号に接続


動作は非常にシンプルです。

  1. 入力が「L(0V)」の場合:
     → PMOSがON、NMOSがOFF。
     → 出力はVDD(H)になる。
  2. 入力が「H(VDD)」の場合:
     → PMOSがOFF、NMOSがON。
     → 出力はGND(L)になる。


結果として、入力信号を反転した出力が得られます。

【4】CMOSの動作の特徴

CMOSの最大の特長は、静的消費電力が非常に小さいことです。

 ● 入力がHまたはLのいずれかの状態では、どちらか一方のトランジスタしかONにならない。

 ● そのため、電源からGNDへの直流電流がほとんど流れない。

 ● 消費電力が発生するのは、スイッチング時(状態が変化するとき)のみ。


この「電流が流れない状態で情報を保持できる」という性質が、
CMOSを今日の超低消費電力技術の基盤にしました。

【5】CMOSロジックの拡張

CMOSインバータを基本として、より複雑な論理回路を構成します。

・N AND回路(ANDの否定)
・N OR回路(ORの否定)
・X OR回路(排他的論理和)

これらを多数組み合わせることで、
加算器(ALU)、制御回路、メモリセル、CPUコアといった高度な演算機能を構築できます。

【6】CMOSの利点

CMOS技術が標準化した理由は、その優れたバランス性にあります。

  • 静的消費電力が極めて低い
  • ノイズ耐性が高く、安定動作
  • 集積化が容易で、製造プロセスが単純
  • 動作速度が高く、温度特性も良好


これにより、高性能・小型・低消費電力という三拍子が揃った回路設計が可能になりました。

【7】CMOSの課題と限界

微細化が進む中で、以下のような課題も顕在化しています。

  • トランジスタ間のリーク電流増加(電力ロス)
  • ゲート酸化膜の薄膜化による絶縁破壊
  • しきい値電圧(Vth)のばらつき
  • 配線抵抗・寄生容量の影響による遅延増大


これらの問題を解決するため、
FinFET構造GAA構造といった次世代CMOSアーキテクチャが導入されています。

【8】代表的な応用分野

・ CPU、GPUなどのロジック回路
・ メモリ(SRAM、DRAM)
・ マイコン、センサーIC
・ 電源管理IC(PMIC)
・ ディスプレイドライバ、イメージセンサー


つまり、「電子頭脳」と呼ばれる部分のほぼ全てがCMOS技術で構築されています。

【9】まとめ

・ CMOSは、NMOSとPMOSを相補的に組み合わせた構造。
・ 入力電圧によって片方がON・もう片方がOFFになる。
・ 静的電力がほぼゼロで、スイッチング時のみ消費電力が発生。
・ 微細化とともにFinFETなど新構造への進化が進行中。
・ 現代の集積回路技術の標準構造である。

【理解チェック】

1.CMOSとは何の略か?

2.CMOSで消費電力が少ない理由は?

3.CMOSの基本構成素子は何か?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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