TECH COLUMN 技術コラム

3-6. FinFET・GAA構造の進化

材料・加工技術

公開日:

【1】はじめに

MOSFETは半導体の中心技術として長年進化してきましたが、
微細化(トランジスタの小型化)が進むにつれて「限界」が見え始めました。

問題となったのは以下の点です。
 ● リーク電流の増加

 ● ゲート制御能力の低下(短チャネル効果)

 ● 性能ばらつきと熱集中


これらの課題を克服するために登場したのが、3次元構造トランジスタです。
代表格が FinFET と、その後継の GAA(Gate-All-Around) 構造です。

【2】FinFET(フィン型トランジスタ)の構造

FinFETは、従来の平面型MOSFET(Planar MOSFET)に代わる3次元構造デバイスです。
その名の通り、魚のヒレ(Fin)のような縦長のシリコン構造を持ちます。

特徴的な構造:

 ● チャネル領域が垂直に立ち上がったフィン形状

 ● ゲートがフィンの3側面を包み込むように配置される(トライゲート構造)

 ● より強い電界制御が可能で、リーク電流を大幅に低減

【3】FinFETの動作原理

従来のMOSFETでは、ゲートがチャネル上面しか制御できませんでした。
FinFETでは、ゲートがチャネルの3方向(上面+両側面)を覆うため、
電子の流れを立体的に制御できます。

 

これにより:

 ● チャネルの短縮によるしきい値変動を抑制

 ● オン電流(Ion)の向上

 ● オフ電流(Ioff)の低減

 ● 微細化(10nm以下)でも安定した特性維持

【4】FinFETの登場背景と効果

FinFETは、Intelが2011年に22nm世代で量産化したことで実用化が進みました。
その後、TSMC・Samsungなども導入し、現在は主流構造となっています。

FinFETのメリット:

 ● ゲート制御能力が高い(高オン/低オフ)

 ● 微細化してもリーク電流が少ない

 ● 高速動作と低消費電力の両立が可能


FinFETのデメリット:

 ● 製造プロセスが複雑

 ● フィン形状のばらつきが性能に影響

 ● フィン高さの均一化が難しい

【5】GAA(Gate-All-Around)構造の登場

さらに進化したのが、GAA構造(ゲート全周囲型)です。
FinFETでは3方向だったゲートを、GAAではチャネルを全周囲から包み込む
形に拡張しました。

構造の特徴:

 ● チャネルがナノワイヤ(細い棒状)またはナノシート(薄い板状)

 ● ゲートがその周囲360度を完全に囲む

 ● チャネル制御性が最大化され、リークを最小化

【6】GAA構造の利点

GAAでは、以下のような性能向上が実現されます。

 ● ゲート制御力のさらなる向上(電気的干渉の最小化)

 ● オフ電流の極小化による超低消費電力化

 ● チャネル幅(ナノシート厚)を制御することで特性を調整可能

 ● 微細化限界を2nm以下まで拡張可能


このため、GAAは「ポストFinFET時代の主流技術」として注目されています。

【7】代表的なGAAアーキテクチャ

半導体各社では、GAAの呼称や実装方式が異なります。

 ● Samsung:MBCFET(Multi-Bridge Channel FET)

 ● TSMC:Nanosheet GAA

 ● Intel:RibbonFET

 ● IBM / IMEC:Horizontal Nanowire GAA


いずれも基本原理は同じで、チャネルを完全にゲートで囲む方式です。

【8】FinFETとGAAの比較

 ● 構造:FinFET=3面ゲート、GAA=全周ゲート

 ● 制御性:GAAの方が優れる(電界制御100%)

 ● リーク電流:GAAの方が少ない

 ● 製造難易度:GAAの方が高く、工程数も増加

 ● 世代適用:FinFET=10nm〜5nm世代、GAA=3nm以降世代

【9】今後の展望

GAAの次の候補として、さらに新しい構造が研究されています。

 ● CFET(Complementary FET):NMOSとPMOSを縦に積層した構造。さらなる高密度化を実現。

 ● 2D半導体GAA:MoS₂などの原子層材料を用いたGAA構造。極限の微細化が可能。

 ● 量子ドットトランジスタ:電子の量子効果を利用して動作する究極のナノデバイス。


今後は「構造 × 材料 × 物理現象」の三方向からの革新が進むと予測されます。

【10】まとめ

・ FinFETは3D構造のMOSFETで、微細化の限界を突破した技術。
・ GAAはFinFETをさらに進化させ、チャネルを全周囲から制御する構造。
・ FinFET → GAA → CFET の順で進化が進んでいる。
・ 微細化が進むほど、構造技術と材料技術の融合が鍵となる。

【理解チェック】

1.FinFETと従来MOSFETの最大の違いは?

2.GAA構造のメリットは?

3.FinFETの後継技術として注目される構造は?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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