【1】ダイシングとは何か
ダイシング(Dicing)は、ウェハ上に並んだ完成チップを1つずつ切り出す工程。
前工程で作った(ウェハ)を後工程で(チップ)に分ける作業にあたる。
この工程はシンプルに見えるが、実は 割れ・欠け・クラックが最も起こりやすいリスク工程 のひとつ。
【2】ダイシング前の準備(Back Grind → Tape Mount)
ダイシング前のウェハはまだ厚い。
そのため、以下の前処理が必須:
●(1)バックグラインド(BG:裏面研削)
・ ウェハを薄く削る(厚み 725μm → 100〜50μm)
・ スマホSoCやメモリは 非常に薄い
・ 薄いほど割れやすいため高度な制御が必要
●(2)ダイシングテープ貼り付け(Tape Mount)
薄いウェハがバラバラにならないよう、粘着テープに固定した状態で切断する。
【3】ダイシング方式(3つの主要工法)
●(1)ブレードダイシング(最も一般的)
回転する薄いブレード(ダイヤモンド砥粒)で切断。
特徴:
・ 高速・低コスト
・ 多くの製品で標準
・ ただし物理的ダメージが入りやすい(チッピング)
●(2)レーザーダイシング
レーザーで溝を加工して切断。
特徴:
・ 非接触のため欠けが少ない
・ 速度が速い
・ Si、SiC、ガラス基板にも対応
・ 熱影響の管理が重要
●(3)ステルスダイシング(SD:Stealth Dicing)
近年主流化。
レーザーを シリコン内部に焦点 させ、内部を割れやすくしてから外力でパキッと割る方式。
特徴:
・ 表面に傷がつかない
・ デバイスへのダメージ極小
・ 3D NAND、パワーデバイスで利用拡大
・ ウェハ厚が薄いほど有利
現行の最も高信頼のダイシング方式。
【4】ダイシングの品質リスク(主要不良)
ダイシング時の不良は後工程の歩留まりを左右する。
代表的な不良:
・ チッピング(欠け):エッジが欠ける
・ クラック(亀裂):内部に亀裂が入る
・ マイクロクラック:肉眼で見えない亀裂
・ パーティクル汚染:切断粉が残る
・ テープ剥離時のダメージ
特に 内部クラックは後の温度サイクルで破損 するため危険。
【5】ダイシング工程のパラメータ
ダイシング品質は下記パラメータに依存する。
・ ブレード回転数
・ テーブル送り速度(Feed)
・ 切り込み深さ
・ 冷却水(流量・温度)
・ テープの粘着力
・ ウェハ厚み
・ 材料(Si / SiC / GaN)
SiCやGaNは硬度が高く、ステルスダイシングが非常に有効 となる。
【6】ダイシング後のピックアップ(Die Pick-up)
切り終わったチップをテープから吸着して取り上げる工程。
品質ポイント:
・ チップ裏面の平坦性
・ テープの剥離性
・ クラックがないか
・ チップサイズ(特に大面積は破損しやすい)
この工程でチップが破損すると、前工程の努力がすべて無駄になる。
【7】微細化・薄型化での課題
近年の課題は:
・ ウェハが極薄化し割れやすい
・ 低誘電率膜(Low-k膜)が脆い
・ パワーデバイスは基板が硬く加工困難
・ パーティクルの影響が大きい
・ 高密度配線エリアのチッピングリスク拡大
そのため、
レーザー / ステルス方式が急速に主流化 している。
【8】最新動向
現代のダイシングトレンド:
・ ステルスダイシングの量産化
・ プラズマダイシング(非接触エッチング)
・ 超薄ウェハ専用テープ
・ 水無しレーザーダイシング(環境対応)
・ AI画像解析によるクラック検出
・ パワーデバイス(SiC)向け高速レーザーダイシング
次世代のキーワードは、
「欠けない」「割れない」「触らない(非接触)」
【9】まとめ
・ ダイシングはウェハを1チップずつ切り出す工程
・ 方式はブレード / レーザー / ステルスの3種類
・ ステルスは最も低ダメージで次世代主流
・ 欠け・クラックは信頼性に直結する重大不良
・ ウェハ薄型化により難易度が年々上昇
・ AI × 非接触加工が今後の方向性
【理解チェック】
1.ダイシングとは何を行う工程ですか?
2.ブレード方式とステルス方式の違いを説明してください。
3.ダイシングで最も問題になる不良を1つ挙げてください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



