TECH COLUMN 技術コラム

4.製造プロセスの全体像
4-10. ダイシング(Dicing:チップ切断)

材料・加工技術

公開日:

【1】ダイシングとは何か

ダイシング(Dicing)は、ウェハ上に並んだ完成チップを1つずつ切り出す工程。

前工程で作った(ウェハ)を後工程で(チップ)に分ける作業にあたる。

この工程はシンプルに見えるが、実は 割れ・欠け・クラックが最も起こりやすいリスク工程 のひとつ。

【2】ダイシング前の準備(Back Grind → Tape Mount)

ダイシング前のウェハはまだ厚い。

そのため、以下の前処理が必須:

●(1)バックグラインド(BG:裏面研削)

 ・ ウェハを薄く削る(厚み 725μm → 100〜50μm)

 ・ スマホSoCやメモリは 非常に薄い

 ・ 薄いほど割れやすいため高度な制御が必要

●(2)ダイシングテープ貼り付け(Tape Mount)

薄いウェハがバラバラにならないよう、粘着テープに固定した状態で切断する。

【3】ダイシング方式(3つの主要工法)

●(1)ブレードダイシング(最も一般的)

回転する薄いブレード(ダイヤモンド砥粒)で切断。

特徴:

 ・ 高速・低コスト

 ・ 多くの製品で標準

 ・ ただし物理的ダメージが入りやすい(チッピング)

 

●(2)レーザーダイシング

レーザーで溝を加工して切断。

特徴:

 ・ 非接触のため欠けが少ない

 ・ 速度が速い

 ・ Si、SiC、ガラス基板にも対応

 ・ 熱影響の管理が重要

 

●(3)ステルスダイシング(SD:Stealth Dicing)

近年主流化。
レーザーを シリコン内部に焦点 させ、内部を割れやすくしてから外力でパキッと割る方式。

特徴:

 ・ 表面に傷がつかない

 ・ デバイスへのダメージ極小

 ・ 3D NAND、パワーデバイスで利用拡大

 ・ ウェハ厚が薄いほど有利

現行の最も高信頼のダイシング方式。

【4】ダイシングの品質リスク(主要不良)

ダイシング時の不良は後工程の歩留まりを左右する。

代表的な不良:

 ・ チッピング(欠け):エッジが欠ける

 ・ クラック(亀裂):内部に亀裂が入る

 ・ マイクロクラック:肉眼で見えない亀裂

 ・ パーティクル汚染:切断粉が残る

 ・ テープ剥離時のダメージ

特に 内部クラックは後の温度サイクルで破損 するため危険。

【5】ダイシング工程のパラメータ

ダイシング品質は下記パラメータに依存する。

 ・ ブレード回転数

 ・ テーブル送り速度(Feed)

 ・ 切り込み深さ

 ・ 冷却水(流量・温度)

 ・ テープの粘着力

 ・ ウェハ厚み

 ・ 材料(Si / SiC / GaN)

SiCやGaNは硬度が高く、ステルスダイシングが非常に有効 となる。

【6】ダイシング後のピックアップ(Die Pick-up)

切り終わったチップをテープから吸着して取り上げる工程。

品質ポイント:

 ・ チップ裏面の平坦性

 ・ テープの剥離性

 ・ クラックがないか

 ・ チップサイズ(特に大面積は破損しやすい)

この工程でチップが破損すると、前工程の努力がすべて無駄になる。

【7】微細化・薄型化での課題

近年の課題は:

 ・ ウェハが極薄化し割れやすい

 ・ 低誘電率膜(Low-k膜)が脆い

 ・ パワーデバイスは基板が硬く加工困難

 ・ パーティクルの影響が大きい

 ・ 高密度配線エリアのチッピングリスク拡大

そのため、
レーザー / ステルス方式が急速に主流化 している。

【8】最新動向

現代のダイシングトレンド:

 ・ ステルスダイシングの量産化

 ・ プラズマダイシング(非接触エッチング)

 ・ 超薄ウェハ専用テープ

 ・ 水無しレーザーダイシング(環境対応)

 ・ AI画像解析によるクラック検出

 ・ パワーデバイス(SiC)向け高速レーザーダイシング

次世代のキーワードは、

「欠けない」「割れない」「触らない(非接触)」

【9】まとめ

 ・ ダイシングはウェハを1チップずつ切り出す工程

 ・ 方式はブレード / レーザー / ステルスの3種類

 ・ ステルスは最も低ダメージで次世代主流

 ・ 欠け・クラックは信頼性に直結する重大不良

 ・ ウェハ薄型化により難易度が年々上昇

 ・ AI × 非接触加工が今後の方向性

【理解チェック】

1.ダイシングとは何を行う工程ですか?

2.ブレード方式とステルス方式の違いを説明してください。

3.ダイシングで最も問題になる不良を1つ挙げてください。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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