【1】リソグラフィとは何か
リソグラフィ(Lithography)は、
ウェハ上に微細なパターン(回路)を描く工程 のこと。
半導体製造において、
図面をシリコンに写す いわば 写像の核心技術。
最先端ほど、線幅は数 nm レベルであり、
リソグラフィの性能がそのまま 微細化の限界 を決める。
【2】リソグラフィ工程の基本ステップ
リソグラフィは以下の流れで進む。
1.ウェハ洗浄(表面の汚れ除去)
2.レジスト塗布(スピンコート)
3.ソフトベーク(余分な溶剤除去)
4.露光(光を当てる)
5.現像(露光された部分を溶かす)
6.ハードベーク(強度を高める)
7.以降の工程(エッチング or イオン注入など)
流れを一言で言うと:
レジストに光を当てて、必要な部分だけ残す → マスクとして利用
という動作になる。
【3】レジストの種類
リソグラフィの主役はレジスト(感光材料)。
●ポジ型レジスト
光が当たった部分が 溶けて無くなる。
細線パターンに向いている。
●ネガ型レジスト
光が当たった部分が 固まって残る。
厚膜形成に適している。
最先端プロセスではポジ型が主流。
【4】光源の種類と微細化の関係
リソグラフィの性能は 光の波長 に支配される。
波長が短いほど、細い線を描ける。
代表的な光源は次の通り:
● i-line(365 nm)
● KrF(248 nm)
● ArF(193 nm)
● EUV(13.5 nm)←最新
現在の最先端プロセス(3nm / 2nm)はEUVが必須。
【5】解像度を決める式(Rayleighの式)
リソグラフィの限界は以下で表される。
最小線幅 ≈ k₁ × (λ / NA)
● λ:光の波長
● NA:レンズの開口数(大きいほど良い)
● k₁:工程の工夫で下がる係数(0.25→0.2→0.15へ低減)
微細化の歴史は、
λを短くし、NAを大きくし、k₁を下げる戦い の歴史。
【6】EUV(Extreme Ultra Violet)の特徴
現代の主役、EUV(13.5 nm)のポイント:
● 波長が極端に短い=高解像度
● 空気中で吸収されるため 真空環境 が必須
● 反射ミラー方式(レンズが使えない)
● 源の光量が弱く スループットが課題
● レジストのEUV耐性も重要課題
EUV装置の価格は 1台300〜500億円 と桁違い。
【7】マルチパターニング技術
EUV以前は波長が限界だったため、
ArF光源で無理やり細線を描く必要があった。
そこで生まれたのが:
● LELE(二重露光&二重エッチング)
● SADP(Self-Aligned Double Patterning)
● SAQP(Self-Aligned Quadruple Patterning)
これは「光の限界を工程で補う」技術。
EUVでも完全に無くなっていない。
【8】アライメント技術(位置合わせ)
回路は何十層も重ねて作る。
そのため、前の層とズレずに重ねる 技術=アライメントは極めて重要。
ズレが起こると:
● 配線ショート
● トランジスタのばらつき
● 歩留まり低下
に直結する。
【9】微細化に伴う課題
リソグラフィは微細化するほど課題が増える。
● レジストの膜厚が薄くなり パターン倒れ
● 光の散乱による LWR(Line Width Roughness)
● 3D構造での光の入射の難しさ
● エッジのガタつきによる特性劣化
● EUVのスループット問題
● マスク欠陥の検出困難
実は、微細化の限界は光学だけではなくレジストと工程の限界でもある。
【10】最新動向:High-NA EUV
次世代リソグラフィは High-NA EUV。
● NAを従来 0.33 → 0.55 に拡大
● 2nm以下の量産を目指す
● マスク、レジスト、プロセスすべてが刷新される
本格量産は 2026〜2027年が目安。
【11】まとめ
● リソグラフィは回路を描く工程でプロセスの心臓部
● 光の波長が短くなるほど高解像度
● EUVは13.5 nmで最新だが課題(光量・マスク欠陥)が多い
● High-NA EUVが次世代の鍵
● 微細化は光学+材料+工程の総合戦
【理解チェック】
1.リソグラフィの目的を一言で説明してください。
2.193nm → 13.5nm のように波長が短くなると何が起こる?
3.EUV装置の大きな課題を1つ答えてください。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



