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5. 研究者・開発者視点と現場視点編 なぜ理論通りに冷えないのか
5-3. 空気層が熱を止める 〜熱対策で最も見落とされる敵は、わずかな空気である〜

材料・加工技術

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5. 研究者・開発者視点と現場視点編 なぜ理論通りに冷えないのか<br>5-3. 空気層が熱を止める 〜熱対策で最も見落とされる敵は、わずかな空気である〜

熱対策で見落とされやすいものがある。
それが、空気層である。
空気は目に見えない。
部品同士が接触しているように見えても、実際には微細な隙間に空気が残っていることがある。
そしてこの空気が、熱の流れを大きく妨げる。
つまり熱対策では、材料を選ぶことだけでなく、
空気を残さないことが非常に重要になる。

■空気は熱を伝えにくい

空気は、熱を非常に伝えにくい材料である。

銅やアルミのような金属は熱をよく伝える。

グラファイトも面方向に熱を広げやすい。

しかし空気は違う。

空気は断熱材として働く。

つまり、熱対策の世界では、

空気は熱の壁になる。

■わずかな空気でも熱は止まる

空気層は、厚くなくても問題になる。

数十μm。

場合によっては、それ以下の微細な空気層でも、熱性能に影響する。

例えば、

発熱部品

 ↓

放熱シート

 ↓

冷却部材

という構造があったとしても、放熱シートと部品の間に空気層があれば、熱は流れにくくなる。

つまり、見た目には貼れている、

でも、熱的には貼れていないことがある。

■接触しているようで、実は空気が残っている

部品表面は完全な平面ではない。

金属も樹脂もフィルムも、顕微鏡レベルでは凹凸がある。

そのため、部品同士を重ねても、全面が接触するわけではない。

凸部だけが接触し、凹部には空気が残る。

これが接触熱抵抗の原因になる。

つまり熱対策では、表面の凹凸空気層を必ず考える必要がある。

■TIMは空気層を減らすために使う

TIMとは、発熱部品と放熱部品の間に入れる熱伝導インターフェース材料である。

TIMの役割は、単に熱伝導率が高いことではない。

本質は、空気層を埋めることである。

グリス、ゲル、放熱シート、相変化材料などは、部品表面の凹凸に入り込み、空気を減らすために使われる。

つまりTIMは、熱を伝える材料である前に、空気を追い出す材料である。

■気泡も空気層である

量産現場で特に問題になるのが、気泡である。

放熱シートや粘着材を貼るときに気泡が入ると、その部分は空気層になる。

気泡のある部分では熱が流れにくくなる。

つまり気泡は、見えない熱抵抗である。

外観では小さな気泡に見えても、熱的には大きな問題になることがある。

■浮きも空気層を作る

部材の端部が浮く。

段差部分で浮く。

曲面に追従できずに浮く。

粘着力が不足して浮く。

こうした浮きも、空気層を作る原因になる。

浮いている部分には空気が入る。

その結果、熱が流れにくくなる。

つまり、浮きは放熱不良の入口である。

■圧着不足で空気が残る

放熱シートや粘着材は、貼るだけでは不十分なことがある。

適切な圧力で圧着しなければ、空気が残る。

圧力が弱いと、表面の凹凸に材料が追従しきれない。

その結果、空気層が残る。

つまり熱対策では、何を貼るかだけでなく、

どう圧着するかが重要になる。

■厚みが合わないと空気が残る

部品間に段差や公差がある場合、材料の厚みが合っていないと空気層が残る。

薄すぎると、隙間を埋めきれない。

厚すぎると、圧縮不足や浮きが出ることがある。

つまり空気層をなくすには、材料の厚み設計が重要になる。

薄ければ良いわけでもない。

厚ければ安心というわけでもない。

■硬い材料は空気を残しやすい

熱伝導率が高い材料でも、硬すぎると表面凹凸に追従できない。

すると、材料と相手部品の間に空気が残る。

その結果、熱伝導率が高いのに冷えない、ということが起きる。

つまり熱対策では、高熱伝導と、

密着性の両方が必要になる。

■柔らかい材料は空気を減らしやすい

柔らかい材料は、表面凹凸に追従しやすい。

そのため、空気層を減らすには有利である。

ゲルやグリスが使われる理由もここにある。

ただし、柔らかすぎると、

 ● はみ出す

 ● 変形する

 ● 厚みが安定しない

 ● 位置がずれる

 ● 長期信頼性が落ちる ことがある。

つまり柔らかさは重要だが、柔らかければ良いわけではない。

■空気層は熱ムラを作る

空気層がある部分では熱が流れにくい。

一方、接触している部分では熱が流れる。

その結果、温度ムラが発生する。

つまり空気層は、局所的なホットスポットを作る原因になる。

AIサーバー、EV、スマートフォン、ウェアラブル機器では、この局所熱が大きな問題になる。

■AIサーバーでの空気層問題

AIサーバーでは、GPUやAI半導体が大きな熱を出す。

その熱を冷却プレートへ逃がすには、界面に空気層を残さないことが重要になる。

もしGPUとTIMの間、TIMと冷却プレートの間に空気層があれば、熱は流れにくくなる。

その結果、

 ● 温度上昇

 ● サーマルスロットリング

 ● 性能低下

 ● 寿命低下 につながる。

つまりAIサーバーでは、空気層を制御することが冷却性能を左右する。

■EV・ESSでの空気層問題

EVやESSでは、バッテリーセルと冷却部材の間に空気層が残ると、セルごとの温度差が大きくなる。

温度差が大きいと、劣化速度に差が出る。

また、局所的な温度上昇は安全性にも影響する。

つまりEV・ESSでは、空気層のばらつきが、

電池寿命や安全性のばらつきにつながることがある。

■ウェアラブル機器での空気層問題

ウェアラブル機器では、人体に近い場所で熱対策を行う。

部材が曲面に追従できずに浮くと、空気層ができる。

その結果、局所的に熱がこもることがある。

人体は温度変化に敏感である。

つまりウェアラブル機器では、小さな空気層が、

大きな不快感につながることがある。

■研究者視点 : 空気層は界面熱抵抗の主因である

研究開発では、材料単体の熱伝導率だけでなく、界面熱抵抗を見る必要がある。

空気層は、界面熱抵抗を増やす主な要因である。

そのため重要なのは、

 ● 表面粗さ

 ● 圧力

 ● 材料の柔軟性

 ● 厚み

 ● 圧縮率

 ● 粘弾性

 ● 経年変化 である。

つまり空気層を減らすには、材料と構造と工程を同時に考える必要がある。

■現場視点 : 空気層は作り方で生まれる

現場では、空気層は材料だけで決まらない。

作り方で生まれる。

例えば、

 ● 貼り始め位置

 ● 貼り速度

 ● 圧着条件

 ● ローラー圧

 ● 剥離紙の剥がし方

 ● 自動貼付条件

 ● 材料の反り

 ● 作業環境

によって気泡や浮きが発生する。

つまり空気層は、工程不良として発生することが多い。

■空気層で起きやすい問題

量産工程では、以下のような問題が起きることがある。

 ● 気泡混入

 ● 端部浮き

 ● 段差部の浮き

 ● 圧着不足

 ● 曲面追従不足

 ● 粘着力不足

 ● 剥離紙起因の巻き込み

 ● 自動貼付時のエア噛み

 ● 異物による浮き

これらは、熱性能だけでなく、防水性、絶縁性、粘着信頼性にも影響する。

■空気層を減らすために確認すべきこと

空気層を減らすには、以下を確認する必要がある。

 ● 材料は表面凹凸に追従できるか

 ● 厚みは適切か

 ● 圧着条件は適切か

 ● 気泡が入りにくい貼り方か

 ● 端部が浮いていないか

 ● 曲面に追従できているか

 ● 異物が混入していないか

 ● 自動化工程で同じ状態を再現できるか

 ● 熱サイクル後も浮かないか

つまり空気層対策は、材料選定だけでなく、工程設計そのものである。

■OTIS視点

OTISは、熱材料そのものを開発する会社ではない。

しかし、熱対策材料を空気層が入りにくい形へ加工し、量産で安定して使える状態にする領域では貢献できる可能性がある。

OTIS視点で重要なのは、

 ● 高精度打ち抜き

 ● 高精度ラミネート

 ● 粘着材との積層

 ● 剥離紙設計

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態

 ● 気泡を抑える貼り合わせ構成

 ● 異種材料積層

 ● 量産時の寸法安定性 である。

空気層は、見えにくい。

だからこそ、最初から空気が入りにくい部材構成と工程設計が重要になる。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● TIM加工

 ● 放熱シート加工

 ● グラファイト加工

 ● 絶縁材加工

 ● 粘着材加工

 ● 高精度打ち抜き

 ● 微細加工

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料積層

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態設計

などを通じて、空気層の発生を抑え、熱対策部材を量産で安定して使える状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 材料そのものの配合設計

 ● フィラー開発

 ● 完成品全体の熱解析

 ● 冷却装置設計

 ● 顧客ライン全体の設備設計 を専門とする会社ではない。

しかし、熱対策部材を空気層が入りにくい形にし、量産工程で安定させる

という領域では、重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ AIサーバー

★★★★★ GPU・半導体

★★★★★ EV・電池

★★★★★ ESS・蓄電システム

★★★★☆ スマートフォン

★★★★☆ ウェアラブル機器

★★★★☆ ロボット

■まとめ

熱対策で最も怖いのは、見えない空気層である

空気は熱を伝えにくい。

そのため、発熱部品と放熱部品の間にわずかな空気層があるだけで、熱は流れにくくなる。

どれだけ高性能な放熱材を使っても、空気層が残れば性能は出ない。

空気層は、

 ● 表面凹凸

 ● 気泡

 ● 浮き

 ● 圧着不足

 ● 厚み不適合

 ● 異物

 ● 貼りズレ によって発生する。

つまり熱対策では、空気を残さない設計が重要になる。

熱は、材料の性能だけで流れるのではない。

材料が正しく接触し、空気層が少なく、量産で同じ状態を再現できて初めて流れる。

だからこそ、空気層の制御は、熱対策の基本であり、現場で最も重要な課題の一つである。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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