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5. 研究者・開発者視点と現場視点編 なぜ理論通りに冷えないのか
5-4. 貼り合わせズレで性能が変わる 〜熱対策部材は、正しい場所に貼られて初めて機能する〜

材料・加工技術

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5. 研究者・開発者視点と現場視点編 なぜ理論通りに冷えないのか<br>5-4. 貼り合わせズレで性能が変わる 〜熱対策部材は、正しい場所に貼られて初めて機能する〜

熱対策材料は、材料そのものの性能だけでは決まらない。
どれだけ高性能なTIM、放熱シート、グラファイト、絶縁放熱材を使っても、
正しい位置に貼られていなければ性能は出ない。
これが、貼り合わせズレの問題である。
熱対策では、材料の種類や熱伝導率に注目しがちである。
しかし現場では、
どこに貼るか、どれだけズレずに貼れるかが、性能を大きく左右する。

■貼り合わせズレとは何か

貼り合わせズレとは、設計上の位置から部材がずれて貼られることである。

例えば、

 ● 放熱シートの位置ズレ

 ● グラファイトシートの貼りズレ

 ● 絶縁フィルムのズレ

 ● 粘着材のズレ

 ● EMI材のズレ

 ● 防水テープのズレ

 ● 積層部材同士のズレ などである。

一見すると、わずかなズレに見えるかもしれない。

しかし熱対策では、このわずかなズレが大きな問題になる。

■熱源から外れると冷えない

放熱材は、発熱部品に対して正しい位置に配置される必要がある。

発熱部品の中心から外れる。

ホットスポットから外れる。

冷却部材との接触範囲から外れる。

すると、熱の逃げ道が弱くなる。

つまり貼り合わせズレは、熱経路から外れるという問題を引き起こす。

熱対策部材は、そこにあるだけでは意味がない。

熱が発生する場所と、熱を逃がす先を正しくつないで初めて機能する。

■面積が足りなくなる

放熱シートやTIMは、接触面積が重要である。

貼り位置がズレると、発熱部品との重なり面積が減る。

すると、熱が流れる面積も減る。

熱が流れる面積が減ると、熱抵抗が増える。

つまり貼り合わせズレは、接触面積不足を生む。

結果として、材料の熱伝導率が高くても、実際の放熱性能は低下する。

■端部が浮くと空気層ができる

貼り合わせズレによって、部材が段差に乗り上げたり、端部が浮いたりすることがある。

浮いた部分には空気層ができる。

空気は熱を伝えにくい。

つまり、貼り合わせズレは、

空気層を作る原因にもなる。

これは熱抵抗を増やし、局所的な温度上昇につながる。

■積層ズレで複合機能が壊れる

熱対策部材は、単一材料ではなく、複数材料の積層構造になっていることが多い。

例えば、

 ● グラファイト+絶縁フィルム

 ● 金属箔+粘着材

 ● 放熱シート+保護フィルム

 ● EMI材+絶縁層

 ● 防水材+粘着材 などである。

このとき、各層がズレると、複合機能が崩れる。

熱は流れても、絶縁できない。

防水はできても、熱が逃げない。

ノイズ対策はできても、端面が露出する。

つまり積層ズレは、熱だけでなく、複数機能を同時に壊すことがある。

■絶縁層のズレは危険である

熱対策部材には、絶縁層が組み合わされることがある。

例えば、グラファイトや金属箔は導電性を持つ場合がある。

そのため、絶縁フィルムで覆う必要がある。

しかし、絶縁フィルムがズレると、導電材が露出する。

その結果、

 ● ショート

 ● 漏電

 ● ノイズ経路

 ● 安全性低下 につながる可能性がある。

つまり熱対策部材の貼り合わせズレは、

電気的なリスクにもつながる。

■防水ラインのズレは水の侵入につながる

防水テープやシール材では、貼り位置が非常に重要である。

防水ラインがズレると、隙間ができる。

端部が浮く。

圧着不足になる。

その結果、水が侵入する可能性がある。

つまり貼り合わせズレは、防水性にも影響する。

熱対策部材が防水機能を兼ねている場合、

>熱性能防水性能の両方がズレで壊れる。

■ノイズ対策材のズレも問題になる

EMI材やシールド材も、正しい位置に配置される必要がある。

ズレると、

 ● シールド範囲が不足する

 ● グランド接続が不安定になる

 ● ノイズ経路が変わる

 ● 導電材が不要な場所に接近する ことがある。 

つまり、熱 × ノイズ対策部材では、貼り位置精度が非常に重要になる。

■AIサーバーでの貼り合わせズレ

AIサーバーでは、GPU、HBM、電源部品、高速通信部品が高密度に配置される。

部材間の隙間は小さく、熱対策材料も複雑になる。

このような環境では、わずかな貼り合わせズレが、

 ● ホットスポット

 ● 冷却不足

 ● 絶縁不良

 ● EMI不良

 ● 組立不良 につながる可能性がある。

つまりAIサーバーでは、

高密度化するほど、貼り合わせ精度が重要になる。

■EV・ESSでの貼り合わせズレ

EVやESSでは、バッテリーセル、冷却板、絶縁材、断熱材、バスバー周辺部材が組み合わされる。

ここで貼り合わせズレが起きると、

 ● セル温度差

 ● 絶縁不足

 ● 熱暴走対策不良

 ● 防水不良

 ● 振動耐久性低下 につながることがある。

EV・ESSでは、安全性と長期信頼性が重要である。

そのため、貼り合わせズレは単なる外観不良ではなく、

安全性に関わる問題になり得る。

■スマートフォン・ウェアラブルでの貼り合わせズレ

スマートフォンやウェアラブル機器では、部材が非常に小さく薄い。

そのため、少しのズレでも影響が大きい。

例えば、

 ● 放熱シートが熱源から外れる

 ● グラファイトが筐体へ接続しない

 ● 防水テープがシールラインから外れる

 ● 粘着材がはみ出す

 ● 絶縁フィルムがズレる といった問題が起きる。

特にウェアラブル機器では、人体に近いため、局所的な熱ムラが不快感につながることもある。

■貼り合わせズレはなぜ起きるのか

貼り合わせズレには、さまざまな原因がある。

 ● 材料の伸び

 ● 材料の反り

 ● 剥離紙の剥がれ方

 ● 静電気

 ● 自動機の位置精度

 ● 吸着搬送の不安定

 ● 粘着材のタック

 ● 温湿度変化

 ● 巻き癖

 ● 作業者の手貼りばらつき

つまり貼り合わせズレは、材料だけの問題ではない。

材料、加工、供給形態、設備条件、作業条件が組み合わさって発生する。

■柔らかい材料ほどズレやすい

熱対策材料には、柔らかいものが多い。

例えば、

 ● ゲル

 ● グリス

 ● 柔軟放熱シート

 ● 粘着材

 ● 発泡材 などである。

柔らかい材料は接触には有利である。

しかし、形状が安定しにくく、貼り合わせ時にズレやすいことがある。

つまり、接触しやすい材料は、

貼りにくい材料でもある場合がある。

■薄い材料ほどズレやすい

薄い材料も注意が必要である。

薄いフィルムやシートは、

 ● 伸びる

 ● シワになる

 ● 静電気で貼り付く

 ● 搬送中に揺れる

 ● 剥離時に浮く ことがある。

つまり薄型化が進むほど、貼り合わせ精度は難しくなる。

未来産業では、小型化、薄型化、高密度化が進む。

そのため貼り合わせズレの問題は、今後さらに重要になる。

■研究者視点:貼り合わせズレは実装誤差である

研究開発では、材料物性や熱解析が重視される。

しかし実際の製品では、部材が設計通りの位置にあるとは限らない。

貼り合わせズレは、実装誤差である。

この実装誤差が、

 ● 熱抵抗

 ● 絶縁距離

 ● 防水ライン

 ● EMI性能

 ● 接触面積 に影響する。

つまり研究段階でも、理想配置だけでなく、ズレを前提にした設計が重要になる。

■現場視点 : 貼り合わせズレは量産で必ず起きる前提で考える

現場では、貼り合わせズレをゼロにすることは難しい。

重要なのは、ズレないことだけではない。

ズレても性能が壊れにくい設計にすることである。

例えば、

 ● 位置公差を持たせる

 ● 部材面積に余裕を持たせる

 ● 絶縁層を少し大きくする

 ● 剥離紙を工夫する

 ● 自動機で拾いやすい形にする

 ● 貼り合わせ基準を明確にする

といった考え方が必要になる。

■貼り合わせズレで起きやすい問題

量産工程では、以下のような問題が起きることがある。

 ● 放熱材が熱源から外れる

 ● 接触面積が不足する

 ● 端部が浮く

 ● 気泡が入る

 ● 絶縁層がズレる

 ● 導電材が露出する

 ● 防水ラインが崩れる

 ● EMI材の位置がズレる

 ● 粘着材がはみ出す

 ● 自動機で貼り位置が安定しない

これらは、熱性能だけでなく、絶縁、防水、ノイズ、信頼性、歩留まりにも影響する。

■貼り合わせズレを減らすために確認すべきこと

貼り合わせズレを減らすには、以下を確認する必要がある。

 ● 材料は伸びやすくないか

 ● 剥離紙は安定して剥がれるか

 ● 自動機で吸着しやすいか

 ● 貼り基準は明確か

 ● 位置決め穴や基準形状は必要か

 ● 粘着材のタックは適切か

 ● リール供給時に蛇行しないか

 ● 温湿度で寸法変化しないか

 ● 積層時に層間ズレが出ないか

 ● 許容ズレ範囲を設計しているか

つまり貼り合わせズレ対策は、材料選定だけでなく、工程設計である。

■OTIS視点

OTISは、熱材料そのものを開発する会社ではない。

しかし、熱対策材料を正しい位置に貼り合わせやすい形へ加工し、量産で安定供給する領域では貢献できる可能性がある。

OTIS視点で重要なのは、

 ● 高精度打ち抜き

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料積層

 ● 位置決めしやすい形状設計

 ● 剥離紙設計

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態

 ● 貼り合わせ精度

 ● 寸法安定性 である。

貼り合わせズレは、材料性能だけでは解決できない。

ズレにくい形に加工すること

ズレにくい供給形態にすることが重要になる。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 放熱シート加工

 ● TIM加工

 ● グラファイト加工

 ● 絶縁材加工

 ● 粘着材加工

 ● EMI材加工

 ● 防水テープ加工

 ● 高精度打ち抜き

 ● 微細加工

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料積層

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態設計

などを通じて、貼り合わせズレを抑え、複合機能部材を量産で安定して使える状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 材料そのものの開発

 ● 顧客製品全体の構造設計

 ● 自動機そのものの設計

 ● 熱シミュレーション専業解析

 ● EMI解析専業 を専門とする会社ではない。

しかし、熱対策部材を正しい位置に配置しやすい形にし、量産工程で安定させるという領域では、

重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ AIサーバー

★★★★★ EV・電池

★★★★★ ESS・蓄電システム

★★★★★ スマートフォン

★★★★☆ ウェアラブル機器

★★★★☆ ロボット

★★★★☆ 通信機器

■まとめ

熱対策材料は、正しい位置に貼られて初めて機能する

熱対策では、材料性能が注目されやすい。

しかし実際には、貼り合わせ位置がズレるだけで性能は変わる。

貼り合わせズレは、

 ● 熱源から外れる

 ● 接触面積を減らす

 ● 空気層を作る

 ● 絶縁層をズラす

 ● 防水ラインを崩す

 ● ノイズ対策を弱める 原因になる。

つまり貼り合わせズレは、熱だけでなく、複数の機能に影響する。

だからこそ、熱対策では、

何を使うかだけでなく、

どこに、どれだけ正確に、どう貼るかが重要になる。

熱対策材料は、材料単体では完成しない。

狙った位置に、狙った形状で、量産でもズレずに貼られて初めて、本来の性能を発揮する。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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