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6. 微細加工と熱問題編 熱の最後の1mmを成立させる
6-1. 微細化が熱問題を難しくする理由 〜小さくなるほど、熱は逃げにくく、わずかな誤差が大きくなる〜

材料・加工技術

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6. 微細加工と熱問題編 熱の最後の1mmを成立させる<br>6-1. 微細化が熱問題を難しくする理由 〜小さくなるほど、熱は逃げにくく、わずかな誤差が大きくなる〜

電子機器、半導体、電池、ロボット、医療機器は、年々小さくなっている。
部品は薄くなる。
配線は細くなる。
部品同士の間隔は狭くなる。
一つの製品に、より多くの機能が詰め込まれる。
これが、微細化である。
微細化は、製品を高性能にし、軽くし、小さくするために重要な技術である。
しかし熱対策の視点では、微細化するほど問題は難しくなる。
なぜなら、発熱する機能は増えるのに、熱を逃がす空間は減るからである。

■微細化とは何か

微細化とは、部品、回路、配線、加工形状などを小さくすることである。

例えば、

 ● 半導体回路の微細化

 ● 電子部品の小型化

 ● 配線間隔の縮小

 ● 薄膜部材の採用

 ● 微細な打ち抜き形状

 ● 部品間隙間の縮小

 ● 高密度実装 などである。

微細化によって、同じ面積の中に多くの機能を入れられる。

しかし同時に、発熱源も密集する。

 

小さくなるほど熱密度が上がる

熱問題を考えるとき、発熱量だけでは不十分である。

重要なのは、熱密度である。

熱密度とは、限られた面積や体積の中で、どれだけ熱が発生するかという考え方である。

例えば、同じ10Wの発熱でも、

大きな金属板全体から発生する場合と、

小さな半導体チップから発生する場合では、難易度が違う。

発熱する面積が小さいほど、局所的な温度は上がりやすい。

つまり微細化すると、

発熱量が同じでも、熱問題は悪化する。

■熱を逃がす面積が減る

製品や部品が小さくなると、熱を外へ逃がすための表面積や接触面積も限られる。

大型機器であれば、

 ● 大きなヒートシンク

 ● ファン

 ● 冷却プレート

 ● 広い金属筐体 を使える。

しかし小型製品では、これらを入れるスペースがない。

つまり微細化では、発熱源は増えるのに、

冷却部品を置く場所は減るという矛盾が起きる。

■発熱部品同士が近づく

高密度実装では、発熱する部品同士の距離が近くなる。

GPUの近くにメモリがある。

電源部品の近くに通信部品がある。

モーターの近くにセンサーがある。

バッテリーの近くに制御基板がある。

すると、一つの部品から出た熱が周辺部品へ影響する。

つまり微細化では、一つの熱源だけを冷やせばよいのではなく、

熱源同士の影響まで考える必要がある。

■ホットスポットが発生しやすくなる

微細化すると、熱は狭い範囲に集中する。

その結果、一部だけ極端に温度が高くなることがある。

これが、ホットスポットである。

平均温度が問題なくても、局所的に高温になれば、

 ● 性能低下

 ● 劣化

 ● 誤動作

 ● 絶縁不良

 ● 粘着劣化

 ● 寿命低下 につながる可能性がある。

つまり微細化では、平均温度より、

局所温度が重要になる。

■数十μmのズレが大きな影響を持つ

部材が大きい場合、0.1mmの貼りズレは小さな誤差かもしれない。

しかし部材そのものが1mm、2mmの世界になると、0.1mmのズレは大きい。

例えば、幅1mmの放熱部材が0.1mmズレれば、10%の位置ズレになる。

つまり微細化すると、同じ誤差でも、相対的な影響が大きくなる。

その結果、

 ● 接触面積不足

 ● 熱源からの外れ

 ● 絶縁距離不足

 ● 防水ライン不良

 ● 導電材露出

が起きやすくなる。

■わずかな浮きが大きな熱抵抗になる

微細な部品では、部材間の隙間も小さい。

しかし、その小さな隙間に空気が入ると、熱は流れにくくなる。

例えば、0.1mmの浮きは、大型構造では小さく見えるかもしれない。

しかし薄膜や微細部品では、材料厚みと同じか、それ以上の大きな隙間になることがある。

つまり微細化すると、わずかな浮きが、

熱経路を分断する大きな空気層になる。

■表面粗さの影響が大きくなる

部品が大きく厚い場合、微細な表面粗さの影響は相対的に小さいことがある。

しかし薄膜や微細部品では、表面の凹凸が材料厚みに対して無視できなくなる。

その結果、

 ● 接触面積が減る

 ● 空気層が増える

 ● 圧力が偏る

 ● 局所的に浮く ことがある。

つまり微細化では、表面状態も熱性能を左右する重要な設計項目になる。

■バリや異物の影響も大きくなる

微細加工では、小さなバリや異物でも大きな問題になる。

部材が大きければ、数十μmのバリは小さいかもしれない。

しかし微細部材では、そのバリが、

 ● 部材を浮かせる

 ● 絶縁層を破る

 ● 導通を生む

 ● 貼り位置をズラす

 ● 接触圧力を偏らせる ことがある。

つまり微細化すると、小さな加工不良が、大きな機能不良になる。

■薄くすると熱抵抗は下がるが、加工は難しくなる

熱対策材料は、一般的に薄い方が厚み方向の熱抵抗を下げやすい。

そのため、微細化・薄型化では材料を薄くしたくなる。

しかし薄くすると、

 ● シワになる

 ● 伸びる

 ● 破れる

 ● 反る

 ● 静電気で貼り付く

 ● 自動機で搬送しにくい といった問題が起きる。

つまり、薄い方が熱には有利でも、

薄いほど量産は難しいという矛盾がある。

■微細化すると圧力管理も難しくなる

TIMや放熱シートは、適切な圧力で接触させる必要がある。

しかし微細部品では、接触面積が小さい。

同じ力をかけても、局所的な圧力が高くなりやすい。

圧力が高すぎると、

 ● 部品が割れる

 ● ゲルがはみ出す

 ● 粘着材が流動する

 ● 薄膜が変形する 可能性がある。

逆に圧力が不足すると、空気層が残る。

つまり微細化では、接触させる力の管理も難しくなる。

■熱膨張差が微細構造を壊す

材料は温度によって膨張・収縮する。

金属、樹脂、セラミック、粘着材、フィルムでは、熱膨張率が異なる。

微細構造では、材料同士が狭い範囲で強く拘束される。

そのため、わずかな膨張差でも、

 ● 反り

 ● 剥離

 ● クラック

 ● 位置ズレ

 ● 接触圧力変化 が起きることがある。

つまり微細化では、温度上昇そのものだけでなく、

温度変化による構造変形も重要になる。

■3D半導体では熱の逃げ場が減る

3D半導体では、チップやメモリを縦方向に積層する。

これにより、配線距離を短くし、高性能化できる。

しかし熱対策では難しくなる。

なぜなら、発熱源が上下に重なるからである。

下の層から出た熱は、上の層や基板を通って外へ逃げる必要がある。

つまり3D半導体では、

微細化

高密度化

積層化 が同時に進み、熱の逃げ道が複雑になる。

■AIサーバーでは微細化と高発熱化が同時に進む

AI半導体では、より多くの演算回路を小さな面積へ集積する。

さらにGPU、HBM、電源部品が近接する。

その結果、

 ● 熱密度上昇

 ● ホットスポット

 ● 界面増加

 ● 接触熱抵抗増加

 ● 局所冷却の難化 が起きる。

つまりAIサーバーでは、半導体の進化そのものが、

熱問題を難しくする要因にもなる。

■ウェアラブル機器では人体との距離が近くなる

ウェアラブル機器では、小型化と薄型化が強く求められる。

しかし人体に近いため、表面温度を上げることができない。

さらに内部には、

 ● AIチップ

 ● バッテリー

 ● 通信部品

 ● センサー が入る。

つまりウェアラブル機器では、

微細化

高機能化

人体近接 が同時に起きる。

このため、局所的な温度上昇を抑える熱拡散設計が重要になる。

■医療機器では微細な温度差も問題になる

医療機器や生体センサーでは、小型化に加えて高い安全性と測定精度が求められる。

わずかな発熱でも、

 ● 測定値がずれる

 ● 皮膚へ負担を与える

 ● センサー特性が変わる

 ● 低温火傷リスクが高まる 可能性がある。

つまり医療機器では、小さな熱問題も無視できない

■ロボットでは関節内部が高密度化する

ロボットの関節には、

 ● モーター

 ● 減速機

 ● センサー

 ● 配線

 ● 制御基板 が集まる。

関節を人間らしく細く、小さくしようとすると、内部はさらに高密度になる。

しかし関節は動くため、大きな冷却部品を配置しにくい。

つまりロボットでは、

小型化

高出力化

可動性 を同時に成立させる必要があり、熱問題が難しくなる。

■微細化では材料の方向性も重要になる

微細部材では、熱をどの方向へ逃がすかが重要になる。

例えばグラファイトは、面方向には熱を広げやすい。

しかし厚み方向は、面方向ほど熱を伝えない場合がある。

微細な構造では、部材を置ける方向も限られる。

そのため、材料性能だけでなく、

材料の向き

加工方向

積層方向 が熱性能を左右する。

■微細化では単一材料で解決しにくい

微細な熱対策では、単一材料だけで要求を満たすことが難しい。

例えば、

 ● 熱を広げるグラファイト

 ● 電気を止める絶縁フィルム

 ● 固定する粘着材

 ● ノイズを抑えるEMI材

 ● 水を止める防水材 を組み合わせる必要がある。

 

しかし積層数が増えると、

 ● 厚みが増える

 ● 熱抵抗が増える

 ● 貼り合わせズレが増える

 ● 工程が増える

 ● コストが上がる

という課題も出る。

つまり微細化では、多機能化したいと、

薄くしたいが衝突する。

■研究者視点 : 微細化すると熱は“平均”ではなく“局所”の問題になる

大きな構造では、全体の平均温度を見ればよい場合がある。

しかし微細構造では、局所的な温度分布が重要になる。

数十μm離れただけで温度が違う。

一部の界面だけ熱抵抗が高い。

一部の部品だけ発熱が大きい。

そのため微細化では、平均熱設計から、

局所熱設計へ考え方を変える必要がある。

■現場視点 : 微細化すると加工誤差が性能誤差になる

量産現場では、寸法、位置、厚み、バリなどを公差内で管理する。

しかし微細化すると、公差そのものが性能に直接影響する。

例えば、

 ● 数十μmの貼りズレ

 ● 数μmのバリ

 ● わずかな厚み差

 ● 微小な異物

 ● 小さな端面浮き

が、熱性能、絶縁性、防水性、ノイズ性能を変える。

つまり微細化すると、加工誤差が、機能誤差になる。

■微細化で確認すべきこと

微細な熱対策部材を設計・加工するときは、以下を確認する必要がある。

 ● 発熱密度はどの程度か

 ● ホットスポットはどこか

 ● 熱をどの方向へ逃がすか

 ● 接触面積は十分か

 ● 微小な空気層が残らないか

 ● 貼りズレ許容範囲はどの程度か

 ● バリや異物の許容値はどの程度か

 ● 厚みばらつきが熱抵抗へどう影響するか

 ● 熱膨張差で位置や接触が変わらないか

 ● 自動化工程で安定して扱えるか

つまり微細化では、材料、構造、加工、工程を切り離して考えることができない。

■OTIS視点

微細化と熱問題の交差点は、OTISが価値を出せる可能性の高い領域である。

OTISは、半導体チップそのものを設計する会社でも、熱材料そのものを開発する会社でもない。

しかし、

 ● 微細形状に加工する

 ● 薄い材料を扱う

 ● 異種材料を高精度に積層する

 ● 狙った位置関係を作る

 ● バリや異物を抑える

 ● 自動化工程へ供給する

 ● 量産時のばらつきを抑える

という領域では貢献できる可能性がある。

微細化するほど、材料スペックだけでは解決できなくなる。

材料をどの形にし、どの位置に置き、どの状態で量産するかが重要になる。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 微細打ち抜き加工

 ● 薄膜材料加工

 ● グラファイトシート加工

 ● 金属箔加工

 ● 絶縁フィルム加工

 ● 粘着材加工

 ● EMI材加工

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料積層

 ● 狭ピッチ形状の加工検討

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態設計

などを通じて、微細化した熱対策部材を量産で使える状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 半導体回路の微細化技術

 ● 半導体前工程

 ● GPU・AIチップ設計

 ● CFD専業解析

 ● 冷却装置全体の設計

 ● 熱材料そのものの配合開発 を専門とする会社ではない。

しかし、微細化によって難しくなった熱対策部材を、加工と積層によって量産成立させる

という領域では、重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ AI半導体・3D半導体

★★★★★ AIサーバー

★★★★★ スマートフォン

★★★★★ ウェアラブル機器

★★★★☆ 医療機器

★★★★☆ ロボット

★★★★☆ EV・電装部品

■まとめ

微細化すると、熱問題は小さくなるのではなく、難しくなる

製品や部品が小さくなると、熱問題も小さくなるように見える。

しかし実際には逆である。

微細化すると、

 ● 熱密度が上がる

 ● 発熱源が近づく

 ● 熱を逃がす面積が減る

 ● ホットスポットが発生する

 ● 微小な浮きや空気層の影響が大きくなる

 ● 数十μmのズレが性能を変える

 ● バリや異物が機能を壊す

 ● 熱膨張差が構造へ影響する ようになる。

つまり微細化とは、小さな世界になることではない。

小さな誤差が許されない世界になることである。

未来の熱対策では、高性能材料を選ぶだけでは足りない。

材料を薄く、微細に、正確に加工し、狙った位置に組み込み、量産でも同じ状態を再現する必要がある。

微細化が進むほど、熱対策の最後の数十μmが、製品全体の性能を決めるようになる。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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