TECH COLUMN 技術コラム

7-9. 熱・電気連成評価(Electro-Thermal Coupling)

材料・加工技術

公開日:

半導体は、電気で動き、熱で壊れる。
そして厄介なのは電気と熱は独立していない。
電流が流れれば発熱し、温度が上がれば電気特性が変わる。
この相互影響を評価するのが、熱・電気連成評価(Electro-Thermal Coupling)である。
先端AIチップ・パワーデバイス時代では、信頼性評価の中核領域となっている。

【1】熱・電気連成とは何か

定義はシンプル。

電気特性と熱特性を同時に評価すること。

評価対象は:

・発熱量

・温度分布

・電流密度

・抵抗変化

・劣化進行

 

つまり:

電流 → 発熱 → 抵抗変化 → さらに発熱

という連鎖反応を解析する技術。

【2】なぜ連成評価が必要なのか

理由は3つ。

 

① 電力密度の急上昇

AIチップでは:数百W / チップ

局所では:数W/mm²

 

② 微細化による電流集中

配線断面積が縮小。→ 電流密度増大。

 

③ 放熱限界の接近

TIM・ヒートスプレッダでも熱を逃がしきれない。

 

結果:

電気問題が熱問題に直結する。

【3】代表的な発熱メカニズム

主因はジュール発熱。

 

● ジュール熱

P = I²R

電流が増えるほど指数的に増加。

 

● スイッチング損失

高速動作時:

・充放電損失

・ゲート損失

 

● リーク電流発熱

微細化でリーク増大。

待機時でも発熱。

 

● 接触抵抗発熱

バンプ・TSV・RDLで発生。

【4】温度が電気特性に与える影響

温度上昇で変化する代表例:

 

・抵抗増加→ 電圧降下増大

・移動度低下→ 性能低下

・リーク電流増加→ 消費電力増大

・しきい値電圧変動→ 誤動作リスク

 

つまり:温度は性能劣化因子。

【5】代表的な故障メカニズム

熱と電気が絡む故障は多い。

 

● エレクトロマイグレーション(EM)

高温 × 高電流で原子移動。

配線断線。

 

● サーマルランナウェイ

発熱 → 抵抗低下 → 電流増加 → 発熱増加。

暴走的破壊。

 

● TDDB加速

絶縁膜破壊が温度で加速。

 

● はんだ疲労加速

熱サイクルで劣化促進。

【6】評価・解析手法

連成評価は単独解析では不十分。

 

● 電気解析

・IRドロップ

・電流密度

 

● 熱解析

・温度分布

・熱流束

 

● 連成解析

両者を同時計算。

ツール例:

・FEM解析

・CFD解析

・電磁界連成解析

【7】パッケージ設計との関係

熱経路設計が鍵。

主な熱流:

チップ → バンプ → 基板 → ヒートスプレッダ → 冷却系

 

影響因子:

・TIM熱抵抗

・バンプ密度

・TSV配置

・ヒートスプレッダ材質

 

つまり:パッケージは放熱回路。

【8】AIチップ / HBM時代の特徴

特徴は3つ。

 

① 局所ホットスポット

演算ブロック集中。

 

② メモリ近接配置

HBMが熱拡散阻害。

 

③ 3D積層構造

熱が逃げにくい。

 

結果:温度ムラが性能を決める。

【9】設計対策手法

代表例:

 

● 電源配線強化 → IRドロップ低減

● バンプ密度最適化 → 放熱改善

● 高熱伝導TIM採用 → 熱抵抗低減

● ヒートスプレッダ大型化 → 熱拡散

● 液冷統合 → AIチップ向け

【10】量産・信頼性との関係

連成問題は量産後に顕在化しやすい。

症状例:

・周波数低下

・消費電力増加

・熱暴走

・早期故障

 

そのため:設計段階での連成解析が必須

【11】今後の技術トレンド

注目領域:

 

● チップレット熱連成設計
● 3D積層熱解析
● Co-package Optics熱評価
● 液冷パッケージ解析
● AIによる熱予測

 

設計領域は、電気単独 → 熱連成 → システム連成へ拡張。

【12】まとめ(7-9)

・電気と熱は相互依存

・発熱は電流密度に比例

・温度は電気特性を劣化させる

・EM・暴走など故障要因に直結

・先端AIチップでは最重要評価領域

【理解チェック】

1.なぜ電気評価だけでは不十分なのか?

2.ジュール発熱の式を説明せよ。

3.サーマルランナウェイはどのように発生するか?

4.なぜ3D積層チップは熱設計が難しいのか?

 

 

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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