TECH COLUMN 技術コラム

8. 産業別応用編 成長産業で熱問題はどう現れるか
8-2. 半導体製造装置の熱問題(後編) ― 半導体製造では、「熱い」ことより「温度が動く」ことが精度を壊す ―

材料・加工技術

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8. 産業別応用編 成長産業で熱問題はどう現れるか<br>8-2. 半導体製造装置の熱問題(後編) ― 半導体製造では、「熱い」ことより「温度が動く」ことが精度を壊す ―

前編では温度がプロセス条件そのものであることを、中編では加熱と冷却、真空やクリーン環境といった条件が複雑に絡み合うことを見てきた。

ここで改めて確認したいのは、なぜこれほどまでに温度管理が重要視されるのか、という点である。
装置内部で使われている部材の精度は、0.1mmや数十μmの世界である。
しかし、その装置が作り出しているのは、さらに桁違いに微細な半導体構造である。

つまり、装置側のわずかな熱変形や部材のズレが、そのまま製品の精度に跳ね返る。
後編では、この「μmの部材がnmの製品を左右する」という構造を起点に、薄膜化・EMI対策・複合部材化・自動化・量産管理といった実務上の課題を整理する。
そして最後に、研究者・現場それぞれの視点を確認した上で、OTISがこの領域でどのような役割を担っているのかを述べる。

■半導体製造装置では「μmの部材」が「nmの製品」に影響する

これは重要な視点である。

装置内部では、

0.1mm。

50μm。

10μm。

といった加工精度の部材が使われる。

しかし、その装置が作っているのは、

さらに微細な半導体構造である。

 

つまり、

装置側の小さな熱変形や部材ズレが、半導体製品の精度へ影響する

可能性がある。

そのため装置部材では、単なる寸法精度だけでなく、

温度変化後も寸法が安定することが重要になる。

■加工精度だけではなく、加工後の形状安定性を見る

部材を±0.05mmで加工できた。

それだけでは十分ではない。

高温になった後。

真空に入った後。

粘着材を貼った後。

冷却した後。

その状態でも、

●反らない

●縮まない

●剥がれない

●位置がずれない

ことが必要になる。

 

つまり、

加工直後の精度から、使用環境での精度へ考え方を広げる必要がある。

■薄膜化は装置にも重要になる

装置が小型化し、部材が高密度化すると、

●絶縁フィルム

●ヒーター

●センサー

●粘着材

●シールド材

も薄くしたくなる。

 

薄くすれば、

●高さを減らせる

●熱抵抗を減らせる

●軽量化できる

可能性がある。

 

一方で、

●シワ

●バリ

●伸び

●位置ズレ

●破損

の影響が大きくなる。

つまり半導体製造装置でも、薄膜化と高精度加工はセットになる。

■EMI対策と熱対策が近づく

半導体製造装置では、

●高周波

●高電圧

●高速信号

●精密センサー が共存する。

そのためEMI対策も重要になる。

 

しかしEMIシールド材として金属を追加すると、

熱の流れも変わる。

逆に放熱目的で銅箔を追加すれば、電気的な影響も出る。

 

つまり、

熱とノイズを別々に設計できない 場合がある。

ここでも複合機能部材が重要になる。

■シール・絶縁・放熱を一部材で考える

例えばチャンバー周辺で、

●シール材

●絶縁材

●熱遮蔽材

を別々に組み付けるとする。

部品点数が増える。

貼付工程が増える。

位置ズレの機会も増える。

用途によっては、これらをあらかじめ積層し、

一つの複合部材

として供給する考え方がある。

 

これによって、

●部品点数削減

●組立時間短縮

●位置精度向上

●自動化

につながる可能性がある。

■ただし複合化すればするほど難しくなる

絶縁。

シール。

熱伝導。

断熱。

EMI。

これらを一部材にまとめると、便利になる。

しかし材料ごとに、

●硬さ

●熱膨張

●粘着性

●耐熱性

が違う。

 

そのため、

●反り

●層間剥離

●厚みばらつき

●加工難易度 が上がる。

 

つまり、 複合化とは工程削減と加工難易度の交換でもある。

■半導体製造装置では自動化も重要になる

装置メーカー自身の生産工程でも、省人化・自動化が進む。

小型フィルム部材。

シール材。

絶縁材。

放熱材。

これらを一枚ずつ手貼りしていると、

●工数

●位置ズレ

●異物

●作業者差

が発生する。

 

そのため、

●リール供給

●自動剥離

●自動貼付

●画像位置補正

へ対応した部材設計が重要になる。

■クリーン環境では人を減らす意味も大きい

人が作業すれば、

●繊維

●ホコリ

●皮脂

●異物

の発生源になる可能性がある。

 

つまり半導体関連では、自動化は、人件費削減だけではなく、

異物リスク低減にもつながる。

高精度部材をリールで安定供給できれば、クリーン環境での組立自動化とも相性がよい。

■画像検査も重要になる

半導体製造装置向け部材では、

●バリ

●異物

●位置ズレ

●欠け

●穴形状

などを厳しく管理する必要がある場合がある。

量産数量が増えれば、人の目だけで確認し続けることは難しい。

 

そこで、

画像検査

を利用して、

同じ基準で連続検査する。

さらに検査データを残せば、

●金型摩耗

●材料ロット差

●加工位置変化

などの傾向を見ることもできる。

■試作と量産では条件が違う

試作では、

一枚ずつ慎重に貼る。

位置を確認する。

異物があればやり直す。

これで良い結果が出る。

 

しかし量産では、

●高速加工

●長時間連続運転

●複数材料ロット

●金型摩耗

●設備変化

が起こる。

 

つまり、一個作れることと、数万個同じものを作れることは別である。

半導体製造装置の部材では、特にこの差が重要になる。

■材料変更の影響も大きい

例えば絶縁フィルムを同等品へ変更する。

厚みも同じ。

絶縁性能も同じ。

しかし、

●熱膨張

●硬さ

●表面摩擦

●粘着性

●アウトガス

が違う可能性がある。

その結果、装置内での温度分布や加工性が変わることもある。

 

つまり、

材料スペックが同等でも、装置性能まで同等とは限らない。

実際の使用環境で確認する必要がある。

■半導体製造装置の熱問題は装置寿命にも関係する

高温が続けば、

●粘着材

●シール材

●電子部品

●ケーブル

●樹脂

の劣化が進む。

 

温度サイクルが繰り返されれば、

●接合部

●コネクター

●積層部材

に疲労が蓄積する。

 

つまり温度管理は、装置精度だけではなく、装置信頼性にも関係する。

■研究者視点 : 半導体製造装置の熱問題は「温度」より「温度場」の問題

半導体製造装置では、「装置温度が何℃か」だけでは十分ではない。

重要なのは、

●どこが高温か

●どこが低温か

●どのくらい温度差があるか

●時間とともにどう変化するか

である。

 

つまり、温度の値ではなく、空間と時間を含めた温度分布 を見る必要がある。

■現場視点 : 「熱いから冷やす」だけでは精度が悪くなることがある

装置部品が熱い。

だから、その部分だけ強く冷やす。

するとその場所だけ収縮する。

結果として装置が変形する。

つまり高精度装置では、冷却すること自体が新しい熱変形を生む 場合がある。

必要なのは、どこを、どの速度で、どの程度冷やすか という温度制御である。

■設計時に確認すべきこと

半導体製造装置の熱対策では、少なくとも次の点を確認する必要がある。

プロセス

●必要温度はいくらか

●温度均一性はどの程度必要か

●温度変化速度はどの程度か

●周辺へ熱を逃がしてよいか

 

精度

●熱膨張でどの部品が動くか

●熱ドリフトはどの程度か

●温度安定まで何分必要か

●位置精度へどこまで影響するか

 

冷却

●空冷か水冷か

●冷却プレートは必要か

●TIMは必要か

●冷却による局所収縮は起こらないか

●結露リスクはないか

 

断熱

●熱を閉じ込める必要があるか

●周辺部品を保護できるか

●断熱材の厚みは適切か

●高温で劣化しないか

 

絶縁

●高電圧部はどこか

●絶縁フィルムは必要か

●熱抵抗を増やしすぎていないか

●バリや異物の影響はないか

 

真空・シール

●真空度はどの程度か

●シール材は適切か

●高温後も気密性を維持できるか

●アウトガスは問題ないか

 

クリーン

●発塵しないか

●粘着材のカスが出ないか

●打ち抜き端面は安定しているか

●異物管理はできているか

 

量産

●自動貼付できるか

●リール供給できるか

●画像検査できるか

●長時間加工でも同じ品質を維持できるか

 

つまり半導体製造装置では、

熱・精度・絶縁・真空・清浄度・量産性を一つのシステムとして考える必要がある。

■OTIS視点 : 半導体そのものではなく、半導体を作る装置の「機能部材」に入る

OTISは、

露光装置メーカーではない。

成膜装置メーカーでもない。

エッチング装置メーカーでもない。

真空ポンプメーカーでもない。

 

しかし半導体製造装置の内部には、

多数の薄い機能部材が存在する。

絶縁フィルム。

放熱シート。

断熱材。

ヒーター周辺フィルム。

粘着材。

シール材。

金属箔。

EMI材。

センサー固定部材。

これらは一つ一つは小さい。

 

しかし、

温度精度

絶縁

真空

清浄度

位置精度

を支える重要な部材である。

ここがOTISの接点になる。

■OTISが狙うべき課題

完成した半導体製造装置そのものではなく、

装置内部で繰り返し発生する、

共通課題

を狙う。

 

例えば、

●高温部周辺の断熱フィルム

●電源部の絶縁・放熱部材

●冷却プレート周辺のTIM

●センサー固定用薄膜粘着部材

●真空周辺のシール・ガスケット

●EMI対策金属箔

●高耐熱フィルム部材

●クリーン対応打ち抜き部材

●微細穴・異形状フィルム加工

自動貼付向けリール部材  である

■「熱材料」だけを売る必要はない

半導体製造装置では、

熱だけを解決する部材より、

熱+絶縁

熱+シール

熱+粘着

熱+EMI

熱+クリーン

という複合課題が多い。

ここはOTISの加工技術と相性がよい。

 

材料メーカーから、

●熱伝導材

●絶縁材

●粘着材

●金属箔

を調達し、必要な位置関係で高精度に積層する。

そして顧客がそのまま組み付けられる形で供給する。

これが価値になる。

■高精度加工だけではなく、「汚さない加工」が重要

半導体製造装置向けでは、

±0.01mmで加工できる。

それだけでは足りない場合がある。

さらに、

●バリが少ない

●粘着カスが少ない

●異物が少ない

●発塵しにくい

●トレーサビリティがある

ことが重要になる。

つまり、精密加工から、クリーンな精密加工へ要求が上がる。

■OTISでできること

OTISでは、

●高精度打ち抜き加工

●微細加工

●薄膜フィルム加工

●絶縁フィルム加工

●熱伝導シート加工

●金属箔加工

●EMI部材加工

●シール・ガスケット加工

●粘着材加工

●耐熱材加工

●高精度ラミネート

●異種材料積層

●部分ラミネート

●ハーフカット

●リール・ツー・リール加工

●自動貼付対応部材

●画像検査

●クリーン環境での加工

●トレーサビリティを含む量産管理

などを通じて、

半導体製造装置に使われる機能材料を、精度・清浄度・量産性を持った部材へ加工する

ことに貢献できる。

■OTISの専門外

OTISは、

●半導体プロセスそのものの開発

●露光光学系設計

●プラズマ源設計

●真空ポンプ設計

●プロセスチャンバー本体設計

●温調システム全体の設計

●CFD専業解析

●半導体材料そのものの開発 を専門とする会社ではない。

 

ただし、

●半導体製造装置メーカー

●材料メーカー

●ヒーターメーカー

●真空機器メーカー

●温調装置メーカー と連携し、

装置性能を支える薄膜・絶縁・シール・放熱部材を量産成立させる

領域では貢献できる。

■この技術が重要になる市場

★★★★★ 半導体製造装置

★★★★★ 先端半導体・3D実装

★★★★★ 成膜・エッチング装置

★★★★★ 検査・計測装置

★★★★★ 真空装置

★★★★☆ ウェハ搬送・自動化装置

★★★★☆ 光学・レーザー装置

★★★★☆ 高精度産業機器

■まとめ

半導体製造装置では、「冷やす」より「温度を動かさない」ことが重要になる

半導体製造装置では、

ヒーター。

プラズマ。

レーザー。

モーター。

電源。

真空ポンプ。

など、多くの熱源が存在する。

 

しかし重要なのは、熱が出ること自体ではない。

その熱によって、

ウェハ温度が変わる。

装置が膨張する。

位置がずれる。

反応速度が変わる。

真空シールが劣化する。

絶縁性能が変わる。

こうした影響が問題になる。

だから半導体製造装置の熱対策は、

温度を下げる技術

だけではない。

必要な場所を加熱し、

不要な場所へ熱を流さず、

冷やす場所は均一に冷やし、

装置全体の温度を安定させる技術 なのである。

そして装置が高精度になるほど、

μm単位の加工部材が、

さらに微細な半導体製造精度を支える。

絶縁フィルム。

TIM。

粘着材。

シール材。

金属箔。

断熱材。

これらは非常に小さな部材である。

 

しかし、

小さな部材の熱・寸法・清浄度が、巨大な製造装置の精度を左右する。

だからOTISが狙うべきなのは、

半導体そのものではない。

半導体製造装置そのものでもない。

その中に存在する、

熱・絶縁・真空・シール・薄膜・高精度・クリーン

という共通課題である。

半導体が微細化するほど、

製造装置はさらに精密になる。

製造装置が精密になるほど、

温度変化は許されなくなる。

そしてその先では、

「熱をどう逃がすか」ではなく、

「熱をどう動かさないか」

という技術が、半導体製造の精度そのものになるのである。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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