■防水とは何か
防水とは、製品内部へ水が入らないようにする設計である。
水が内部へ入ると、
● 回路ショート
● 腐食
● 絶縁劣化
● センサー不良
● バッテリー不良
● 故障
● 安全性低下
につながる可能性がある。
そのため、水がかかる環境や湿気の多い環境で使われる製品では、防水設計が重要になる。
■防水は密閉を求める
防水を高めるには、多くの場合、製品内部を密閉する必要がある。
例えば、
● シール材
● ガスケット
● 防水テープ
● 粘着材
● パッキン
● 防水フィルム
● コーティング
などを使って、水の侵入経路をふさぐ。
つまり防水設計とは、隙間をなくす設計である。
■熱対策は逃げ道を求める
一方、熱対策では、熱を外へ逃がす必要がある。
熱は発熱部品から周囲へ移動し、最終的には外部へ捨てなければならない。
そのため、熱対策では、熱の逃げ道が必要になる。
つまり、防水は隙間をふさぎたい。
熱対策は逃げ道を作りたい。
ここに矛盾がある。
■密閉すると熱がこもる
製品を密閉すると、空気の流れが少なくなる。
すると、対流による放熱が弱くなる。
つまり、空気が熱を運びにくくなる。
その結果、内部に熱がこもる。
これはスマートフォン、ウェアラブル、屋外機器、EV電装部品などで大きな問題になる。
つまり、水を止める設計は、
熱も止める設計になりやすい。
■スマートフォンで起きていること
スマートフォンは、防水性が求められる代表的な製品である。
雨、汗、水回り、屋外使用に耐える必要がある。
そのため、内部は密閉性が高い。
しかしスマートフォンの中には、
● CPU
● GPU
● AI処理チップ
● バッテリー
● 充電回路
● ディスプレイ
● 通信モジュール など、多くの発熱源がある。
つまりスマートフォンでは、防水したいと、
熱を逃がしたいが同時に発生している。
■ウェアラブル機器ではさらに難しい
スマートウォッチ、スマートリング、ARグラス、AIイヤホンなどのウェアラブル機器では、防水性が重要になる。
汗、雨、湿気、皮脂、洗浄などに耐える必要があるからである。
しかしウェアラブル機器は小さい。
しかも人体に触れる。
つまり、
● 密閉しなければならない
● 小さい
● 熱を逃がす面積が少ない
● 人体に熱さを感じさせてはいけない という条件が同時に発生する。
ウェアラブル機器では、防水と放熱と快適性を同時に成立させる必要がある。
■EV・車載機器で起きていること
EVや車載機器でも、防水は重要である。
車は雨、雪、泥、水たまり、洗車、高湿度環境で使われる。
特にEVでは、
● バッテリーパック
● インバーター
● モーター周辺
● 電源回路
● センサー
● コネクタ
などで防水・防塵設計が必要になる。
しかしこれらは同時に発熱する。
つまり車載機器では、水を入れないと、
熱を逃がすを同時に考えなければならない。
■屋外通信機器でも重要になる
5G基地局、屋外センサー、監視カメラ、通信ボックスなどの屋外機器でも、防水は必須である。
屋外機器は、雨、湿気、日射、温度変化にさらされる。
密閉すれば水は入りにくい。
しかし日射と内部発熱によって、内部温度が上がる。
つまり屋外機器では、
外からの熱と、内からの熱の両方を考える必要がある。
■防水材が熱抵抗になることがある
防水のために使う材料は、熱を通しにくい場合がある。
例えば、
● ゴム系パッキン
● 発泡シール材
● 防水テープ
● 樹脂コーティング
● 粘着材 などである。
これらは水を止めるには有効である。
しかし熱を逃がす経路に入ると、熱抵抗になることがある。
つまり、防水材が熱の壁になる可能性がある。
■粘着材も熱を止めることがある
防水テープやシール材には粘着材が使われることが多い。
しかし粘着材は、金属やグラファイトほど熱を伝えない。
そのため、熱経路に粘着層が入ると、熱抵抗が増えることがある。
つまり、防水のために粘着材を入れた結果、熱が逃げにくくなることがある。
■防水と放熱を両立する考え方
熱 × 防水では、どちらか一方を優先するだけでは不十分である。
必要なのは、水は止める熱は通すという設計である。
そのためには、
● 防水シール材の配置
● 放熱経路の確保
● 熱伝導性粘着材の使用
● 金属筐体との接続
● 防水しながら熱を逃がす構造
● 放熱材と防水材の積層設計 などが重要になる。
■防水部材は貼り合わせ精度が重要
防水テープやシール材は、位置ズレがあると性能が落ちる。
例えば、
● シールラインがズレる
● 端部が浮く
● 気泡が入る
● 圧着不足になる
● 厚みがばらつく
● 異物が入る と、水が入る可能性がある。
同時に、熱経路も変わる。
つまり熱 × 防水では、貼り合わせ精度が非常に重要になる。
■圧縮率も重要になる
防水ガスケットや発泡シール材では、圧縮率が重要である。
圧縮が不足すると、防水性が落ちる。
圧縮しすぎると、材料がつぶれすぎたり、応力が増えたりする。
また、圧縮状態によって熱の通り方も変わる。
つまり防水材では、どの程度つぶすかが性能を左右する。
■温度変化で防水性が変わることがある
熱によって、防水材の状態が変わることがある。
例えば、
● 粘着力低下
● シール材の硬化
● ゴムの劣化
● 発泡材の圧縮永久ひずみ
● 剥離
● クラック
● 浮き などである。
つまり、熱問題が防水問題を引き起こすことがある。
初期状態では防水できていても、温度変化や長期使用で防水性が低下する可能性がある。
■水が入ると熱問題も悪化する
逆に、水が入ると熱問題が悪化することもある。
水分によって、
● 絶縁劣化
● 腐食
● 接触不良
● 粘着低下
● 材料膨潤
● センサー不良 が起きる。
その結果、発熱や故障につながることがある。
つまり熱と防水は、一方向の関係ではない。
熱が防水を壊し
水が熱問題を悪化させる ことがある。
■AI時代は防水機器も高発熱化する
今後、スマートフォン、ウェアラブル、車載機器、屋外機器にはAI処理が増えていく。
AI処理が増えれば、演算量が増える。
演算量が増えれば、発熱も増える。
つまり、防水が必要な機器ほど、高発熱化していく可能性がある。
これは非常に難しい。
密閉したいのに、熱が増えるからである。
■研究者視点 : 熱 × 防水は密閉熱設計である
研究開発では、防水と放熱を同時に考える必要がある。
● 熱伝導性シール材
● 防水放熱シート
● 熱伝導性粘着材
● 金属筐体との熱接続
● 防水膜と放熱経路の両立
● 密閉構造内の熱解析
● 長期信頼性評価 などが重要になる。
つまり熱 × 防水は、密閉構造の中で熱をどう逃がすかという設計課題である。
■現場視点 : 防水はズレで壊れる
現場では、材料性能だけでなく、加工・貼り合わせが非常に重要になる。
防水材は、少しのズレや浮きでも性能が落ちる。
● 打ち抜き寸法
● 貼り合わせ位置
● 圧着条件
● 端部処理
● 剥離紙設計
● 自動化供給
● 異物管理 が重要になる。
つまり、防水性は材料だけで決まらない。
どれだけ正確に加工し、正確に貼れるかで決まる。
■熱 × 防水の量産で起きやすい問題
量産工程では、以下のような問題が起きることがある。
● 防水テープの貼りズレ
● シール材の気泡
● 圧着不足
● 厚みばらつき
● 端部浮き
● 剥離紙の剥がし不良
● 自動機での位置ズレ
● 異物噛み込み
● 粘着材のはみ出し
● 熱による粘着劣化
これらは、防水性だけでなく、熱性能や絶縁性にも影響する。
つまり熱 × 防水では、
材料
加工
貼り合わせ
圧着
量産安定性 を同時に考える必要がある。
■OTIS視点
OTISは、防水材メーカーでも、冷却装置メーカーでもない。
しかし、防水材、放熱材、粘着材、絶縁材を組み合わせ、量産工程で使える形に加工する領域では貢献できる可能性がある。
OTIS視点で重要なのは、
● 防水テープ加工
● 放熱材加工
● 防水性内圧調整膜の提案
● 粘着材加工
● 絶縁材加工
● 高精度打ち抜き
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● 自動化供給
● 量産時の寸法安定性 である。
熱 × 防水では、単一材料ではなく、複合部材になることが多い。
ここに加工技術の重要性がある。
■OTISでできること
OTISでは、
● 防水テープ加工
● 熱伝導性粘着材加工
● 放熱シート加工
● 絶縁フィルム加工
● 内圧調整膜
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● 異形状積層
● リール供給
● 自動化工程向け供給形態設計
などを通じて、熱 × 防水対策部材を量産で使える状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。
特にスマートフォン、ウェアラブル機器、EV、屋外機器、医療機器では、熱、防水、絶縁、粘着を同時に考える必要がある。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 防水材そのものの開発
● 防水構造全体の設計
● IP規格試験代行
● 冷却システム設計
● 筐体設計 を専門とする会社ではない。
しかし、防水材と熱対策材料を、量産工程で成立する複合部材にする
という領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ スマートフォン
★★★★★ ウェアラブル機器
★★★★★ EV・車載機器
★★★★☆ 屋外通信機器
★★★★☆ 医療機器
★★★★☆ 産業機器
★★★★☆ ロボット
■まとめ
防水すると、熱は逃げにくくなる
熱 × 防水の本質は、水を止めたいと、
熱を逃がしたいの両立である。
防水設計では密閉が必要になる。
しかし密閉すると、熱はこもりやすくなる。
つまり、防水性を高めるほど、熱設計は難しくなる。
そして防水材そのものが熱抵抗になることもある。
だから熱 × 防水では、材料選定だけでは足りない。
どこをふさぐか。
どこへ熱を逃がすか。
どの材料を貼るか。
どの厚みで圧着するか。
量産でズレずに貼れるか。
ここまで考えて初めて、熱と防水は両立できる。
熱対策は、冷やすだけではない。
水を止めながら、熱の逃げ道を残す設計なのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



