■実は人間に近づくほど、熱問題は難しくなる
これまでの電子機器は、ある程度、人間から離れていた。
● サーバー
● データセンター
● 工場設備
● 自動車 など。
しかし人体装着型では、人間そのものが熱設計条件になる。
つまり、
● 熱い
● 重い
● 硬い
● 蒸れる
● 痛い が、そのままユーザー体験悪化につながる。
■人間は意外と熱に弱い
人間の身体は、非常に繊細だ。私のようなおじさんでもだ。
例えば、
● 数℃の違和感
● 長時間接触
● 局所発熱
● 蒸れ
● 圧迫 だけでも、不快感が発生する。
さらに、低温火傷という問題もある。
■低温火傷は熱くないのに危険
低温火傷とは、そこまで熱くない温度でも、
長時間接触によって、皮膚深部が損傷する現象である。
例えば、
● スマートフォン
● ノートPC
● 発熱デバイス でも発生する可能性がある。
つまり人体装着機器では、熱いかどうかだけではなく、
どのくらい長時間、どこへ接触するかまで重要になる。
私も昔 冬の電気アンカで痛い目にあったことがあるので、この問題は大きいと捉えている。
■AI時代は身体の近くで演算が始まる
今後のAIは、クラウドだけではなく、
身体の近くでも動作するようになる。
例えば、
● ARグラス内AI
● リアルタイム翻訳
● 生体認識
● 視線解析
● 常時音声認識 など。
つまり未来では、顔の近くで高密度演算が始まる可能性がある。
これは熱的には非常に厳しい。
■小型化と高性能化は熱を集中させる
人体装着型では、
● 小さい
● 軽い
● 薄い
● 長時間駆動 が求められる。
しかし同時に、
● AI演算
● 通信
● センサー
● バッテリー も必要になる。
つまり、小さいのに熱いという状況が発生する。
しかも人体装着型では、冷却ファンを大型化することが難しい。
■静かで見えない冷却が必要になる
人体装着型では、
● うるさい
● 重い
● 分厚い
● ゴツい は致命的になる。
つまり今後は、
「静かで」 「軽く」 「薄く」 「違和感なく」
熱を制御する必要がある。
これは極めて難しい。
■人体装着AIは熱 × 快適性の時代
ここで重要なのは、人体装着機器では、冷えるだけでは足りないことだ。
実際には、
● 軽量
● 柔軟
● 快適
● 安全
● 長時間装着
● 通気性
● デザイン性 なども必要になる。
つまり未来では、「熱 × 快適性 × 安全性 × 軽量化」の複合問題になる。
■AIが人体異常を見抜く時代が来る
さらに今後、人体装着型AIでは、
● 皮膚温度
● 発汗
● 血流
● 脈拍
● 疲労
● 炎症 など、膨大な生体データを取得できるようになる可能性がある。
すると将来的には、この熱設計は人体へ負担を与えていることまで、AIが解析できるようになる可能性がある。
つまり未来では、なんとなく不快ではなく、どの構造が、どのように人体負荷を与えているかまで可視化される可能性がある。
■研究者視点
人体と共存する熱設計へ
現在研究されているのは、
● フレキシブル放熱材
● 超薄型放熱
● 柔軟材料
● 放射冷却
● 生体適合材料
● 微細熱制御
● AI温度制御 など。
つまり今後は、冷やすだけではなく、人体と共存する熱設計が重要になる。
■現場視点
理論通りに快適にならない
現場では、
● 顔形状差
● 曲面接触
● 発汗
● 動き
● 長時間使用
● 皮膚個人差
● 圧迫 など、非常に複雑な問題が起きる。
つまり、理論上冷えると、実際に快適は全く違う。
■人体装着型では接触が極めて重要
人体装着機器では、
● 放熱材
● クッション材
● 粘着材
● 絶縁材
● 柔軟部材 などが使われる。
しかし、どれだけ人体へ自然に接触するかで、熱性能も快適性も変わる。
つまり未来では、熱の最後の接触条件が極めて重要になる。
■OTIS視点で重要なこと
OTIS視点では、人体装着AI時代で重要なのは、
● 薄膜加工
● 微細加工
● 柔軟材料加工
● 高精度ラミネート
● 曲面追従
● 異種材料接触
● 軽量化
● 量産安定性 などである。
特に、薄く、軽く、柔らかく、それでも機能を成立させることが重要になる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 微細加工
● 高精度打ち抜き
● 薄膜加工
● 高精度ラミネート
● 曲面追従部材加工
● 放熱材加工
● 絶縁材加工
● 柔軟材料加工 などを通じて、人体装着型機器向け機能部材の量産成立に貢献できる可能性がある。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 医療機器設計
● AIアルゴリズム開発
● 生体解析
● ARデバイス開発
● バッテリー開発 を専門とする会社ではない。
しかし、人体近接機器を量産工程で成立させるという領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■まとめ
AIが人間に近づくほど、熱は難しくなる
未来のAIは、
● より小さく
● より軽く
● より身体に近く
● より長時間
人間と共存するようになっていく。
しかしその裏では、熱が大きな制約条件になる。
つまり未来では、どれだけ賢いAIかだけではなく、
どれだけ人間と自然に共存できるかが重要になるのかもしれない。
そしてその裏側では、熱の最後の接触条件を成立させる技術が、ますます重要になっていく。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません


