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2. 世の中の熱問題編 どこで熱問題が起きているのか
2-3. EV・電池の熱問題 〜未来のモビリティは、電池をどれだけ冷静に使えるかで決まる〜

材料・加工技術

公開日:
2. 世の中の熱問題編 どこで熱問題が起きているのか<br>2-3. EV・電池の熱問題 〜未来のモビリティは、電池をどれだけ冷静に使えるかで決まる〜

EVの進化が加速している。
長距離走行。急速充電。高出力化。
自動運転。電動化社会。

自動車産業は、エンジン中心の時代から、電池とモーター中心の時代へ大きく変わり始めている。
しかしEVの本質的な課題は、単に「電池をたくさん積めばよい」という話ではない。
EVには、常に大きな制約がある。熱である。

■EVは巨大な電池を積んで走る

ガソリン車では、エネルギー源は燃料だった。

一方、EVでは、エネルギー源はバッテリーである。

つまりEVは、巨大な電池を積んで走る機械とも言える。

この電池は、走行時にも、充電時にも、発熱する。

特に、

 ● 急速充電

 ● 高速走行

 ● 登坂

 ● 高出力加速

 ● 外気温が高い環境 では、熱問題が大きくなる。

■電池は温度で性能が変わる

電池は、温度に非常に敏感である。

温度が低すぎると、出力が落ちる。

温度が高すぎると、劣化が進む。

さらに異常高温になると、安全性の問題につながる。

つまり電池は、ただ電気を貯める箱ではない。

温度管理されて初めて性能を出せる部品である。

■急速充電は熱との戦い

EVで非常に重要なのが、急速充電である。

ユーザーは、できるだけ短時間で充電したい。

しかし短時間で大量の電力を入れるということは、電池に大きな負荷をかけるということでもある。

大電流が流れる。

内部抵抗で熱が出る。

温度が上がる。

劣化が進む。

安全性が下がる。

つまり急速充電とは、充電時間を短くする技術であると同時に、

熱を制御する技術でもある。

■EVで最も怖いのは熱暴走

電池の熱問題で最も怖いのが、熱暴走である。

熱暴走とは、一部のセルが異常発熱し、その熱が周囲のセルへ伝わり、連鎖的に温度上昇していく現象である。

簡単に言えば、熱が熱を呼ぶ状態である。

これが進むと、発煙、発火、安全性問題につながる可能性がある。

だからEVでは、熱を逃がすだけでは不十分である。

熱を広げすぎない

熱を隣へ伝えすぎない

異常時に拡大させない という考え方も重要になる。

■放熱と断熱の両方が必要になる

ここがEV電池の難しいところである。

通常、熱対策というと冷やすことを考える。

しかしEV電池では、冷やす技術と、

熱を遮る技術の両方が必要になる。

通常運転では、電池の熱を適切に逃がしたい。

しかし異常時には、一つのセルの熱が周囲へ広がらないようにしたい。

つまりEV電池では、放熱と断熱をどう使い分けるかが非常に重要になる。

■電池パックは異種材料の集合体

EVの電池パックには、さまざまな材料が使われる。

 ● セル

 ● バスバー

 ● 絶縁材

 ● 放熱材

 ● 接着材

 ● クッション材

 ● ケース

 ● 冷却プレート

 ● 難燃材

つまり電池パックは、異種材料の積層構造である。

ここで問題になるのが、界面である。

金属と樹脂。

電池と放熱材。

放熱材と冷却板。

絶縁材と接着材。

こうした接点部分で、熱が止まることがある。

■接点が一番熱くなることがある

EV電池では、材料そのものよりも、材料と材料の接点部分で熱問題が起きることがある。

例えば、

 ● 接着剤の厚みムラ

 ● 放熱材の浮き

 ● 絶縁材の段差

 ● 圧力不足

 ● 空気層

 ● 熱膨張差 などである。

すると、熱がうまく逃げず、局所的に温度が上がる。

 

つまり、材料Aが良い材料Bが良いだけでは足りない。

重要なのは、AとBをどう接触させるかである。

ここは、EV電池の熱対策で非常に重要な視点になる。

■熱膨張差が接触を壊す

EVは、走行中も充電中も温度変化を受ける。

すると、異なる材料はそれぞれ違う動きをする。

金属は金属の膨張をする。

樹脂は樹脂の膨張をする。

接着材は接着材の変形をする。

その結果、

 ● 剥離

 ● 浮き

 ● 反り

 ● 応力集中

 ● 接触不良  が起きることがある。

つまり熱問題は、温度が上がる問題だけではない。

温度変化で構造が変わる問題でもある。

■EV電池では量産ばらつきが怖い

試作では問題がなくても、量産では結果が変わることがある。

理由は、

 ● 材料厚みのばらつき

 ● 貼り合わせ位置のずれ

 ● 圧力条件の違い

 ● 組立工程のばらつき

 ● 自動化装置での搬送ズレ

 ● 経年劣化 などである。

EVでは、同じ構造が大量に使われる。

だから小さなばらつきでも、台数が増えると大きなリスクになる。

つまりEVの熱対策では、試作で冷えることより、

量産で安定して冷えることが重要になる。

■全固体電池でも熱問題は消えない

次世代電池として、全固体電池が注目されている。

全固体電池には、安全性や高エネルギー密度への期待がある。

しかし、全固体電池になれば熱問題がなくなるわけではない。

むしろ、高出力化、急速充電、高密度化が進めば、熱管理はさらに重要になる可能性がある。

つまり将来も、電池の進化と、熱管理の進化はセットで進む。

■ESSでも同じ熱問題が起きる

EVだけではない。

再生可能エネルギーやデータセンターの拡大により、ESS、つまり蓄電システムの重要性も高まっている。

ESSも大量の電池を集めたシステムである。

そのため、

 ● 発熱

 ● 劣化

 ● 熱暴走

 ● セル間ばらつき

 ● 冷却

 ● 断熱  といった問題を抱える。

つまりEV電池で起きる熱問題は、ESSでも重要になる。

EVとESSは、用途は違っても、

電池を安全に大量運用する技術という意味で、共通する課題を持っている。

■AI時代は事故原因が見える時代になる

今後、EVにはさらに多くのセンサーとAIが搭載される。

温度履歴。

充放電履歴。

振動。

電流。

劣化。

異常発生時の条件。

こうしたデータが蓄積されると、将来的には、

なぜ壊れたのかが、かなり明確に解析される可能性がある。

これまでは「原因不明」「使用環境による」とされていた問題も、AI解析によって、

 ● 放熱設計不足

 ● 接触不良

 ● 熱集中

 ● 構造上の弱点

 ● 材料劣化

 ● 量産ばらつき として可視化される可能性がある。

 

極端に言えば、未来では、壊れた製品ではなく、

壊れる設計そのものが見えるようになるかもしれない。

その結果、設計問題や構造問題が明確になり、リコールが増える可能性もある。

だからこそ、EVやESSでは、今から熱対策を工程レベルで考える必要がある。

■研究者視点 : 電池は熱を制御して初めて性能を出す

研究開発では、

 ● 高安全電池

 ● 全固体電池

 ● 高熱伝導材料

 ● セル間断熱材

 ● 相変化材料

 ● 冷却プレート

 ● BMSによる温度制御 などが進んでいる。

ただし本質は、電池をどの温度範囲で安定して使うかである。

高性能な電池ほど、熱管理が重要になる。

■現場視点 : 電池の熱対策は貼り方で変わる

実際の現場では、材料スペックだけでは決まらない。

 ● どの位置に貼るか

 ● どの圧力で密着させるか

 ● どの厚みで管理するか

 ● 気泡を入れないか

 ● 熱膨張後も接触が維持されるか

 ● 自動化工程でずれないか が重要になる。

つまりEV電池の熱対策は、材料選定ではなく、

材料をどう使える状態にするかで決まる。

■OTIS視点

OTIS視点では、EV・電池の熱問題で重要なのは、

 ● 放熱材加工

 ● 絶縁材加工

 ● 断熱材加工

 ● 高精度打ち抜き

 ● 薄膜加工

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料貼り合わせ

 ● リール供給

 ● 自動化対応

 ● 量産安定性 である。

特にEVやESSでは、熱を逃がす材料と、

熱を遮る材料の両方が必要になる。

そしてそれらを、量産工程で安定して使える形にすることが重要になる。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 放熱シート加工

 ● 絶縁シート加工

 ● マイカ・セラミック系材料の加工検討

 ● 断熱材・遮熱材の形状加工

 ● 高精度打ち抜き

 ● 高精度ラミネート

 ● 異形状積層

 ● リール供給対応

 ● 自動化工程向け供給形態設計

などを通じて、EV・電池・ESS向け機能部材の量産成立に貢献できる可能性がある。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 電池セル開発

 ● BMS開発

 ● EV車両設計

 ● モーター開発

 ● 冷却システム全体設計 を専門とする会社ではない。

しかし、電池周辺の熱対策部材を量産工程で成立させる

という領域では、重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ EV・電動車

★★★★★ ESS・蓄電システム

★★★★★ 電池パック

★★★★☆ 急速充電インフラ

★★★★☆ データセンター非常用電源

★★★★☆ 産業用バッテリー機器

■まとめ

EVの未来は、電池性能だけでは決まらない

EVの競争は、航続距離や充電速度だけで語られがちである。

しかしその裏側では、熱をどう制御するかが極めて重要になる。

電池は温度で性能が変わる。

高温では劣化する。

異常時には熱暴走のリスクがある。

そして材料同士の接点や貼り合わせ状態で、熱の流れは大きく変わる。

 

つまりEV・ESS時代の熱対策は、良い材料を選ぶことだけでは終わらない。

熱を逃がす、遮る、接触させる、量産で安定させるところまで成立して、初めて本当の熱対策になる。

 

未来のモビリティは、電池性能だけではなく、

電池をどれだけ安全に、安定して、冷静に使えるかで決まるのかもしれない。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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