■金属はなぜ熱を伝えやすいのか
金属が熱を伝えやすい理由は、自由電子の存在にある。
金属内部では電子が移動しやすく、
熱エネルギーも効率よく運ぶことができる。
そのため、
● 銅
● アルミ
● 銀 などは高い熱伝導率を持つ。
例えば代表的な材料の熱伝導率を比較すると、
● 空気:約0.026 W/mK
● 樹脂:約0.2 W/mK
● シリコーン放熱材:1~10 W/mK程度
● アルミ:約200 W/mK
● 銅:約400 W/mK となる。
つまり銅は、樹脂の数百〜数千倍熱を伝えやすい。
■金属箔とは何か
金属箔とは、非常に薄く加工された金属材料である。
一般的には、
● 銅箔
● アルミ箔
● ステンレス箔
● ニッケル箔 などが使われる。
熱対策用途では主に、
銅箔とアルミ箔が使われることが多い。
■銅箔の特徴
銅は熱伝導率が非常に高い。
そのため、熱を素早く移動させることに優れている。
AIサーバーや半導体周辺では、
局所的に発生した熱を広範囲へ拡散させる用途で使われることがある。
また、
● EMI対策
● シールド用途
● 接地用途 も兼ねられるため、
熱とノイズを同時に考える設計では有利になる。
一方で、
● 重い
● 高価
● 曲げにくいという課題もある。
■アルミ箔の特徴
アルミは銅より熱伝導率は低い。
しかし、
● 軽い
● 安価
● 加工しやすい というメリットがある。
そのため、EVやESS、家電、通信機器などではアルミが使われることも多い。
特に軽量化が重要な用途では、銅よりアルミが選ばれることがある。
■金属箔は熱を「広げる」
金属箔の重要な役割は、熱を広げることである。
例えば発熱部品が1cm角しかない場合、
その周辺だけが高温になる。
ここに銅箔やアルミ箔を配置すると、熱がより広い面積へ拡散する。
すると局所温度が下がりやすくなる。
これはグラファイトと似た役割である。
■グラファイトとの違い
グラファイトも熱を広げる材料である。
では何が違うのか。
大きな違いは、等方性と異方性である。
銅やアルミは比較的均一に熱を伝える。
一方グラファイトは、面方向に強く、厚み方向には弱い場合が多い。
つまり、金属は比較的扱いやすく、グラファイトは方向性を考えて使う必要がある。
■金属箔だけでは解決しない
ここで重要な誤解がある。
熱伝導率が高い銅を使えば、すべて解決するわけではない。
実際には、
発熱部品
↓
TIM
↓
銅箔
↓
放熱板
↓
筐体
↓
空気 という熱経路全体で考える必要がある。
どこか一箇所でも熱が詰まれば、
十分な放熱はできない。
■AIサーバーではどう使われるか
AIサーバーでは、GPUや電源回路が大量の熱を発生する。
そのため、
● 銅プレート
● 銅箔
● ヒートスプレッダ
● 液冷プレート などが使われる。
特に最近では、冷却技術よりも、熱をどこまで均一に広げられるかが重要になっている。
■EV・ESSではどう使われるか
EVやESSでは、電池セル間の温度差が問題になる。
温度差が大きいと、
● 劣化速度の差
● 容量差
● 寿命低下
● 熱暴走リスク が発生する。
そのため、金属箔や金属プレートによって、
熱を均一化する設計が行われることがある。
つまりEVでは、冷やすことだけでなく、
温度差を減らすことも重要になる。
■研究者視点 : 金属箔は古くて新しい材料
銅やアルミは昔から存在する。
しかし、
AIサーバー
3D半導体
EV
ESS の進化により、再び注目されている。
最近では、
● 超薄箔化
● 多層化
● 異種材料積層
● 複合放熱構造
などの研究が進んでいる。
■現場視点 : 金属は加工すると別の問題が出る
現場では、熱伝導率よりも加工性が問題になることがある。
例えば、
● バリ
● シワ
● 反り
● クラック
● ラミネート不良 などである。
また金属は柔らかいため、薄くなるほど取り扱いが難しくなる。
つまり、熱性能と加工性の両立が必要になる。
■金属箔の量産で起きやすい問題
量産工程では、
● 微細形状の変形
● 打ち抜きバリ
● 搬送時の折れ
● ラミネートズレ
● 金属粉発生
● 巻き癖 などが発生することがある。
熱対策材料として優秀でも、量産で安定供給できなければ意味がない。
■OTIS視点
OTISは銅箔やアルミ箔そのものを製造する会社ではない。
しかし、
● 微細打ち抜き
● 異形状加工
● ラミネート加工
● 絶縁材との積層
● リール供給
● 自動化対応 を通じて、
金属箔を量産で使える形へ近づけることに貢献できる可能性がある。
特に、熱対策だけでなく、EMI対策、絶縁、粘着を同時に成立させる構成では、
加工技術の重要性が高くなる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 銅箔加工
● アルミ箔加工
● SUS箔加工
● 特殊超薄箔加工
● 微細打ち抜き
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● リール供給
● 自動化工程向け供給設計 などを通じて、
金属箔を量産工程へ落とし込む支援ができる可能性がある。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 銅箔製造
● アルミ精錬
● 金属材料開発
● 冷却装置設計
● CFD熱解析専業 を専門とする会社ではない。
しかし、金属箔を使いやすい形に加工し、量産成立させる
という領域では価値を発揮できる可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ AIサーバー
★★★★★ データセンター
★★★★★ EV・電池
★★★★★ ESS・蓄電システム
★★★★☆ 半導体製造装置
★★★★☆ 通信機器
★★★★☆ ロボット
■まとめ
金属箔は今も熱対策の主役である
新しい熱対策材料が次々と登場している。
しかし現実には、銅やアルミは今も熱対策の中心材料である。
その理由は単純で、熱を効率よく運べるからである。
そして今後のAIサーバー、EV、ESSでは、
熱をどれだけ早く逃がすかだけでなく、
熱をどれだけ均一に広げられるかが重要になる。
その意味で金属箔は、古くて新しい熱対策材料と言えるのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



