■熱対策は重量を増やしやすい
熱対策を強化しようとすると、部材が増えやすい。
金属を厚くする。
ヒートシンクを大きくする。
冷却プレートを追加する。
放熱シートを増やす。
断熱材を入れる。
こうした対策は、熱には有効な場合がある。
しかし、その分だけ重量が増える。
つまり熱対策は、重量増加とセットになりやすい。
■軽量化すると熱対策は難しくなる
逆に、軽量化を優先すると、熱対策は難しくなる。
例えば、
金属部品を薄くする。
ヒートシンクを小さくする。
放熱面積を減らす。
樹脂部品へ置き換える。
すると軽くなる。
しかし、熱を逃がす能力は下がることがある。
つまり、軽くすると冷えにくくなることがある。
■熱と軽量化はトレードオフになりやすい
熱対策では、熱を運ぶために材料が必要になる。
軽量化では、材料を減らしたい。
この時点で、両者は衝突しやすい。
つまり、熱を逃がすには足したい、
軽量化するには減らしたいという関係である。
これが熱 × 軽量化の難しさである。
■EVでは軽量化が航続距離に直結する
EVでは、重量が航続距離に影響する。
車体が重くなると、走行に必要なエネルギーが増える。
つまりバッテリーを多く積んでも、その分重くなり、効率が落ちる。
ここで熱対策部材を増やしすぎると、さらに重量が増える。
しかし電池やインバーターは熱管理が必要である。
つまりEVでは、熱を管理したいでも重くしたくない
という課題が常に存在する。
■EV電池では熱対策と軽量化が同時に求められる
EV電池では、
● 放熱材
● 断熱材
● 絶縁材
● 難燃材
● 冷却プレート
● 保護材 などが使われる。
これらは安全性や性能には必要である。
しかしすべて重量になる。
そのため、EV電池では、必要な熱対策を、いかに軽く成立させるかが重要になる。
これは単なる材料選定ではなく、構造設計と工程設計の問題でもある。
■ロボットでは重量が動作性能を左右する
ロボットでは、重量が非常に重要である。
重くなると、
● モーター負荷が増える
● 消費電力が増える
● バッテリーが大きくなる
● 動作速度が落ちる
● 関節負荷が増える
● 発熱が増える という悪循環が起きる。
つまりロボットでは、重くなることで、さらに熱が増えることがある。
熱対策部材を増やして重くした結果、モーター負荷が増え、さらに発熱する。
これは熱 × 軽量化の典型的な矛盾である。
■ウェアラブル機器では重量が体験を決める
ウェアラブル機器では、重量がそのままユーザー体験に直結する。
スマートウォッチが重い。
ARグラスが重い。
イヤホンが重い。
それだけで、長時間使われなくなる。
しかしウェアラブル機器にも、AI処理、通信、バッテリー、センサーが入る。
当然、発熱する。
つまりウェアラブル機器では、
軽くしたい、でも熱くしたくない
という課題が非常に強くなる。
■航空宇宙では1gが重要になる
航空宇宙分野では、重量は極めて重要である。
衛星、ドローン、航空機では、重量が燃費、航続時間、打ち上げコストに直結する。
しかし電子機器、バッテリー、通信機器、センサーは発熱する。
さらに宇宙空間では対流が使えないため、熱対策は難しい。
つまり航空宇宙では、
軽く、かつ熱を制御できる材料が強く求められる。
■金属は冷えるが重い
熱対策でよく使われる銅は、熱伝導性が高い。
しかし重い。
アルミは銅より軽いが、熱伝導性は銅より低い。
つまり材料選定では、
熱伝導性と、重量のバランスを考える必要がある。
銅が最適とは限らない。
アルミが最適とも限らない。
用途によって判断が必要になる。
■グラファイトは軽量化に有利な場合がある
グラファイトシートは、金属より軽く、面方向に熱を広げやすい材料である。
そのため、スマートフォンやウェアラブル機器などでは有効な選択肢になる。
ただし、グラファイトは方向性がある。
また、電気的導通、粉落ち、割れ、加工性にも注意が必要である。
つまりグラファイトは、
軽く熱を広げられる材料である一方、
使い方に注意が必要な材料でもある。
■エアロゲルは軽量断熱に有利な場合がある
エアロゲルは非常に軽く、断熱性が高い材料として注目されている。
EV、ESS、航空宇宙などでは、熱を遮る用途で期待される。
特に、
軽く熱を止めたい場合には有効な候補になる。
ただし、
・脆い
・粉落ちしやすい
・加工しにくい
・コストが高い場合があるため、量産で使うには工夫が必要である。
■軽い材料ほど加工が難しいことがある
軽量材料は、必ずしも扱いやすいわけではない。
例えば、
・薄い
・柔らかい
・脆い
・伸びやすい
・粉が出る
・反りやすい といった課題がある。
つまり軽量化材料では、
軽いことだけでなく、
量産で扱えることが重要になる。
■薄型化と軽量化は似ているが同じではない
薄くすれば軽くなることが多い。
しかし、薄くすると強度が落ちたり、加工が難しくなったりする。
また、熱対策では、薄くしすぎると段差吸収や接触性が不足することがある。
つまり、
薄い
軽い
冷える
貼れる を同時に満たすのは簡単ではない。
■熱 × 軽量化では複合材料が重要になる
熱と軽量化を両立するためには、単一材料ではなく、複合材料が使われることが多い。
例えば、
● グラファイト+絶縁フィルム
● アルミ箔+粘着材
● 放熱シート+軽量基材
● エアロゲル+保護フィルム
● セラミックフィラー入り樹脂 などである。
つまり軽量化と熱対策では、
材料単体よりも、積層構造が重要になる。
■AIサーバーでも軽量化は無関係ではない
AIサーバーは大きな設備なので、軽量化はあまり関係ないように見える。
しかし実際には、ラック重量、冷却機構、メンテナンス性、輸送性、設置制約がある。
また、冷却部品が増えるほど、構造は複雑になる。
つまりAIサーバーでも、
冷却能力と、実装性・重量・保守性のバランスが重要になる。
■研究者視点 : 熱 × 軽量化は比熱性能で考える
研究開発では、単純な熱伝導率だけでなく、
重さあたりの性能が重要になる。
例えば、同じ放熱性能でも、半分の重量で実現できれば大きな価値がある。
特にEV、ロボット、航空宇宙、ウェアラブル機器では、
軽量高熱伝導材料
軽量断熱材料 への期待が高まる。
■現場視点 : 軽い材料ほど、量産で暴れる
現場では、軽量材料は扱いが難しいことがある。
例えば、
● 搬送中に浮く
● 巻き癖がつく
● 伸びる
● 破れる
● 反る
● 粉が出る
● 静電気で貼り付く
● 自動機で位置が安定しない などである。
つまり軽量化材料では、材料性能だけでなく、
搬送性
供給性
加工安定性
が重要になる。
■熱 × 軽量化の量産で起きやすい問題
量産工程では、以下のような問題が起きることがある。
● 薄物材料のシワ
● 軽量材料の浮き
● 打ち抜き時の変形
● ラミネート時の反り
● 巻き取り時のズレ
● 自動機供給時の蛇行
● 粘着材との相性不良
● 端面の崩れ
● 輸送中の変形
これらは、熱性能だけでなく、組立性や歩留まりにも影響する。
つまり熱 × 軽量化では、
軽い材料をどう安定して扱うかが非常に重要になる。
■OTIS視点
OTISは、軽量材料そのものを開発する会社ではない。
しかし、軽量な熱対策材料を量産工程で使える形に加工する領域では貢献できる可能性がある。
OTIS視点で重要なのは、
● 薄膜加工
● 軽量シート材料の加工
● グラファイト加工
● エアロゲル加工検討
● 高精度打ち抜き
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● リール供給
● 自動化工程向け供給形態設計 である。
軽量材料は、軽いからこそ扱いが難しい。
だからこそ、軽い材料を安定して量産工程へ流す技術が重要になる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 薄膜放熱材加工
● グラファイトシート加工
● 金属箔加工
● 軽量断熱材の加工検討
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● 異形状積層
● リール供給
● 自動化工程向け供給形態設計
などを通じて、熱 × 軽量化対策部材を量産で使える状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。
特にEV、ロボット、ウェアラブル機器、航空宇宙、スマートデバイスでは、軽さ、薄さ、熱性能、量産性を同時に考える必要がある。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 軽量材料そのものの開発
● CNT材料開発
● グラフェン材料開発
● エアロゲル製造
● 構造設計全体
● 熱シミュレーション専業解析
を専門とする会社ではない。
しかし、軽量熱対策材料を、量産工程で使える形にする
という領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ EV・電池
★★★★★ ロボット
★★★★★ ウェアラブル機器
★★★★★ 航空宇宙
★★★★☆ スマートフォン
★★★★☆ ドローン
★★★★☆ AIサーバー
■まとめ
熱対策は、重くすればよいわけではない
熱を逃がすためには、材料を追加したくなる。
金属を厚くする。
放熱部材を増やす。
冷却構造を追加する。
しかし、それは重量増加につながる。
一方で、軽量化を優先しすぎると、熱が逃げにくくなる。
つまり熱 × 軽量化の本質は、
冷やすために足したい
軽くするために減らしたい という矛盾である。
これからのEV、ロボット、ウェアラブル機器、航空宇宙では、軽く、薄く、それでも熱を制御できる材料と構造が求められる。
そしてそれらの材料は、性能が高いだけでは足りない。
軽い材料を、狙った形状で、安定して量産工程へ流せること
まで成立して、初めて本当の熱対策になる。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



