■自動化とは何か
自動化とは、人手に頼らず、設備やロボットによって安定して工程を進めることである。
例えば、
● 材料を供給する
● 剥離紙を剥がす
● 部品を搬送する
● 所定位置に貼る
● 圧着する
● 検査する
● 巻き取る
● 次工程へ送る といった作業である。
量産では、これらを安定して繰り返す必要がある。
つまり自動化では、一度できることではなく、
何万回、何十万回と同じようにできることが重要になる。
■熱対策材料は自動化しにくいことがある
熱対策材料には、自動化しにくい材料が多い。
例えば、
● 柔らかい
● 薄い
● 伸びる
● 割れやすい
● 粉が出る
● 粘着する
● 反る
● 巻き癖がつく
● 静電気で貼り付く
といった性質を持つことがある。
つまり熱対策材料は、性能が高くても、工程で扱いにくい場合がある。
これが量産で大きな問題になる。
■材料が良くても、自動機で止まれば使えない
試作では、技術者が手で貼ることができる。
多少扱いにくくても、丁寧に作業すれば成立する。
しかし量産では違う。
自動機で材料を供給し、剥がし、貼り、圧着し、検査する必要がある。
このとき、
● 材料が詰まる
● 剥離紙が剥がれない
● 位置がズレる
● 吸着できない
● 搬送中に変形する
● 粉が落ちる
となれば、量産は止まる。
つまり熱対策材料は、冷えるかどうかだけでなく、
自動化できるかどうかが重要になる。
■AIサーバーでも自動化は重要になる
AIサーバーでは、GPU、電源部品、メモリ周辺に多数の熱対策部材が使われる。
放熱シート、TIM、グラファイト、絶縁材、EMI材などが高密度に配置される。
これらを人手で毎回正確に貼るのは難しい。
特に量産台数が増えるほど、自動化対応が重要になる。
つまりAIサーバーでは、熱対策部材を高精度に、安定して貼れるかが重要になる。
■EV・ESSではさらに量産性が重要
EVやESSでは、同じような部材を大量に使う。
バッテリーセル間。
冷却プレート周辺。
バスバー周辺。
絶縁部材。
放熱部材。
断熱部材。
これらを大量に、安定して、同じ品質で組み付ける必要がある。
つまりEV・ESSでは、熱対策材料の自動化適性が非常に重要になる。
材料が高性能でも、自動化工程に乗らなければ量産採用は難しくなる。
■ウェアラブル・スマートフォンでは小さすぎる問題がある
スマートフォンやウェアラブル機器では、熱対策部材が非常に小さい。
薄い。
細い。
複雑形状。
貼る位置が狭い。
こうした部材を正確に貼るには、自動化工程での位置精度が重要になる。
また小さな部材は、静電気や粘着力の影響を受けやすい。
つまり小型機器では、小さい材料をどう安定供給するかが大きな課題になる。
■ロボット生産でも自動化対応が必要になる
ロボットそのものも熱問題を抱えるが、ロボットを作る工程でも自動化が必要になる。
ロボット内部には、
● モーター周辺の放熱材
● 制御基板の絶縁材
● バッテリー周辺の熱対策材
● センサー固定材
● EMI材
● 粘着材 などが使われる。
これらを安定して貼るためには、材料形状、剥離紙、供給形態、自動貼付性まで考える必要がある。
■自動化では供給形態が重要になる
自動化工程では、材料そのものだけでなく、供給形態が重要になる。
代表的な供給形態には、
● シート供給
● 単片供給
● リール供給
● トレー供給
● キャリア付き供給
● 剥離紙付き供給 などがある。
同じ材料でも、供給形態が悪ければ自動機で扱いにくい。
つまり自動化では、材料性能だけでなく、
どう供給するかが重要になる。
■リール供給の重要性
大量生産では、リール供給が求められることが多い。
リール供給にすると、自動機で連続的に材料を供給しやすい。
しかし、すべての熱対策材料がリール供給に向いているわけではない。
例えば、
● 厚い材料
● 硬い材料
● 割れやすい材料
● 粉落ちする材料
● 曲げに弱い材料 は、リール供給が難しいことがある。
つまりリール供給には、
材料の曲げ性
剥離性
寸法安定性
巻き取り安定性 が重要になる。
■剥離紙設計も重要になる
粘着付きの熱対策部材では、剥離紙が重要になる。
剥離紙は、単なる保護紙ではない。
自動化工程では、
● 剥がしやすさ
● 剥がれるタイミング
● 材料が残るか
● 材料が浮くか
● 剥離角度
● 剥離力
● 静電気 が重要になる。
つまり剥離紙設計が悪いと、材料が正しく貼れない。
熱対策部材であっても、自動化では剥離紙まで含めて設計対象になる。
■吸着できるかも重要になる
自動機では、部材を吸着して搬送することがある。
しかし熱対策材料によっては、吸着が難しい。
例えば、
● 表面がザラついている
● 粉が出る
● 柔らかすぎる
● 変形する
● 通気する
● 粘着面が露出している
と、吸着搬送が不安定になる。
つまり自動化では、
吸着できる形状か
搬送中に変形しないか も重要になる。
■貼り位置精度が熱性能を左右する
熱対策部材は、貼る位置がズレると性能が変わる。
発熱部品から少し外れる。
放熱経路から外れる。
絶縁したい場所をカバーできない。
端面が露出する。
こうしたズレによって、熱性能だけでなく、絶縁性、防水性、ノイズ性能も変わる。
つまり自動化工程では、貼り位置精度が非常に重要になる。
■自動化では材料ばらつきが問題になる
材料そのものにばらつきがあると、自動機での挙動も変わる。
例えば、
● 厚みばらつき
● 硬さのばらつき
● 粘着力のばらつき
● 剥離力のばらつき
● 寸法ばらつき
● 反り
● 巻き癖 があると、設備条件が安定しない。
つまり自動化では、材料の性能だけでなく、
材料の安定性が重要になる。
■自動化では工程で壊れないことが必要
熱対策材料は、工程中に壊れることがある。
例えば、
● グラファイトが割れる
● エアロゲルが粉落ちする
● セラミック系材料が欠ける
● ゲルが変形する
● 粘着材がはみ出す
● 金属箔がシワになる といった問題である。
つまり自動化では、製品になった後の性能だけでなく、
工程を通過できる性能が必要になる。
■研究者視点
熱対策材料は工程適性まで評価される時代へ
研究開発では、材料物性が重視される。
熱伝導率。
熱抵抗。
絶縁性。
耐熱性。
しかし今後は、それだけでは足りない。
量産を考えると、
● 自動貼付性
● リール供給性
● 剥離性
● 搬送性
● 形状安定性
● 長期保管性
● 工程内破損リスク
まで評価する必要がある。
つまり熱対策材料は、物性材料から、
工程適性材料へ進化していく。
■現場視点
試作で成功しても、自動化で失敗する
現場でよくあるのが、
試作ではうまくいった。
しかし量産設備に乗せると失敗する。
というケースである。
理由は、
● 手貼りでは調整できた
● 自動機では材料がずれる
● 剥離紙が安定しない
● 吸着できない
● 搬送中に変形する
● 貼り位置が安定しない などである。
つまり、試作成立と、
自動化成立は別物である。
■熱 × 自動化の量産で起きやすい問題
量産工程では、以下のような問題が起きることがある。
● リール供給中の蛇行
● 剥離不良
● 部材の取り残し
● 吸着ミス
● 貼りズレ
● 気泡混入
● 圧着ムラ
● 打ち抜きカスの残り
● 粉落ち
● 巻き癖による浮き
● 自動機停止
これらは、熱性能だけでなく、歩留まり、生産性、品質保証にも影響する。
つまり熱 × 自動化では、
材料性能
加工精度
供給形態
設備適性
を同時に考える必要がある。
■OTIS視点
OTISは、熱材料メーカーでも、自動機メーカーでもない。
しかし、熱対策材料を自動化工程で使える形に加工する領域では貢献できる可能性がある。
OTIS視点で重要なのは、
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● 剥離紙設計
● リール供給
● 自動化工程向け形状設計
● 量産時の寸法安定性
● 顧客工程を見た部材設計 である。
熱対策材料は、冷えればよいわけではない。
自動機で止まらず、ズレず、安定して貼れることが重要になる。
■OTISでできること
OTISでは、
● 放熱シート加工
● グラファイト加工
● 絶縁材加工
● 粘着材加工
● EMI材加工
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● 異形状積層
● リール供給対応
● 自動化工程向け供給形態設計
などを通じて、熱対策部材を量産設備で使いやすい状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。
特にAIサーバー、EV、ESS、スマートフォン、ウェアラブル機器では、熱性能だけでなく、自動化対応が量産採用の条件になる。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 自動機そのものの設計
● ロボット制御開発
● 材料そのものの開発
● 熱シミュレーション専業解析
● 顧客ライン全体の設備設計 を専門とする会社ではない。
しかし、熱対策材料を、自動化工程に乗る形へ変換する
という領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ EV・電池
★★★★★ ESS・蓄電システム
★★★★★ AIサーバー
★★★★★ スマートフォン
★★★★☆ ウェアラブル機器
★★★★☆ ロボット
★★★★☆ 半導体・電子部品製造
■まとめ
自動化できない熱対策材料は、量産では使いにくい
熱対策材料は、性能だけで評価してはいけない。
どれだけ冷えても、
● 自動機で流れない
● 剥がせない
● 吸着できない
● 貼れない
● ズレる
● 粉が出る
● 工程が止まる のであれば、量産では使いにくい。
つまり熱 × 自動化の本質は、
冷える材料を、量産で安定して使える形にすることである。
これからのAIサーバー、EV、ESS、スマートフォン、ウェアラブル機器では、熱対策材料の使用量と複雑性がさらに増えていく。
その中で重要になるのは、材料性能だけではない。
加工精度、供給形態、自動化適性、量産安定性まで含めた熱対策である。
熱対策は、設計図の上で完成するものではない。
自動化工程で正しく流れ、正しく貼られ、正しく機能して初めて完成する。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



