■熱対策材料は高くなりやすい
熱対策材料には、高機能材料が多い。
例えば、
● TIM
● グラファイト
● セラミック系材料
● 熱伝導ゲル
● エアロゲル
● 銅箔
● 絶縁放熱シート などである。
これらは一般材料より高価になることが多い。
そのため、顧客は当然、もっと安くできないかと考える。
しかし、熱対策では材料単価だけで判断すると失敗することがある。
■材料単価だけを見ると危険
例えば、A材とB材がある。
A材は高い。
B材は安い。
一見するとB材を選びたくなる。
しかしB材が、
● 加工しにくい
● 歩留まりが悪い
● 貼りにくい
● 自動化できない
● 不良が増える
● 熱性能が安定しない
材料だった場合、結果的に高くつくことがある。
つまり熱対策では、
材料単価より、
総コストで考える必要がある。
■総コストとは何か
総コストとは、材料費だけではない。
実際には、
● 材料費
● 加工費
● 歩留まり
● 検査費
● 設備対応費
● 自動化対応費
● 不良対応費
● 保証費
● リワーク費
● 在庫管理費
● 顧客工程での使いやすさ
まで含めて考えるべきである。
熱対策材料は、単体で使われることは少ない。
多くの場合、加工され、貼り合わされ、組み込まれ、量産工程で使われる。
だから、材料価格だけでは本当のコストは見えない。
■高性能材料ほど高いとは限らない
高性能材料は高価に見える。
しかし、結果的には安くなる場合もある。
例えば、高性能な放熱材を使うことで、
● 部品点数が減る
● ヒートシンクを小さくできる
● 冷却機構を簡素化できる
● 不良率が下がる
● 寿命が延びる
● 保証リスクが下がる
なら、材料単価が高くても総コストは下がる可能性がある。
つまり、高い材料=高コストとは限らない。
■安い材料ほど高くつくこともある
逆に、安い材料を選んだ結果、問題が増えることがある。
例えば、
● 熱が逃げない
● 接触が悪い
● 剥がれる
● 粉が出る
● 絶縁不良が出る
● 自動機で止まる
● 検査工数が増える
● 不良解析が増える というケースである。
この場合、材料費は下がっても、全体のコストは上がる。
つまり熱対策では、安く買うことと、
安く作れることは違う。
■AIサーバーでは停止コストが大きい
AIサーバーでは、熱対策不良によるコストは非常に大きくなる。
GPUや電源部品が高温になると、
● 性能低下
● サーマルスロットリング
● 故障
● サーバー停止
● 保守対応
● 冷却効率低下 につながる。
AIサーバーでは、装置価格も運用コストも大きい。
そのため、熱対策材料の数円、数十円を削った結果、設備停止や性能低下が起きれば、損失ははるかに大きくなる。
つまりAIサーバーでは、熱対策コストより、
熱対策不足のコストの方が大きくなる可能性がある。
■EV・ESSでは安全コストが大きい
EVやESSでは、熱対策不良が安全性に直結する。
電池の温度管理が不十分だと、
● 劣化
● 寿命低下
● 出力低下
● 熱暴走リスク
● 回収・リコール
● ブランド毀損 につながる可能性がある。
この場合、材料費削減の効果より、不具合時の損失の方が圧倒的に大きくなる。
つまりEV・ESSでは、安全性を含めたコストで考える必要がある。
■スマートフォン・ウェアラブルでは体験コストがある
スマートフォンやウェアラブル機器では、熱問題がユーザー体験に影響する。
少し熱い。
電池持ちが悪い。
性能が落ちる。
長時間使えない。
装着して不快。
これらは、直接的な故障ではなくても、製品評価を下げる。
つまり小型デバイスでは、熱によるユーザー体験の悪化もコストである。
■加工しにくい材料は高くなる
熱対策材料には、加工しにくいものが多い。
例えば、
● グラファイトは割れやすい
● エアロゲルは粉落ちしやすい
● セラミック系材料は欠けやすい
● ゲルは変形しやすい
● 金属箔はバリやシワが出やすい
こうした材料は、材料費だけでなく、加工費や歩留まりに影響する。
つまり、材料が高いか安いかだけでなく、
加工しても安定するかが重要になる。
■歩留まりがコストを決める
量産では、歩留まりが非常に重要である。
例えば、材料費が安くても、加工不良が多ければコストは上がる。
逆に、材料費が高くても、歩留まりが高ければ総コストは抑えられる場合がある。
つまり熱対策材料では、
単価ではなく、良品として使える割合が重要になる。
■自動化できないとコストが上がる
熱対策材料が自動化工程に乗らない場合、人手作業が増える。
人手作業が増えると、
● 工数が増える
● 貼りズレが増える
● 品質ばらつきが増える
● 検査が増える
● 生産速度が落ちる ことがある。
つまり、自動化できない材料は、量産ではコストが上がりやすい。
熱対策材料では、自動機で流せることもコスト性能の一部である。
■薄くすれば安いとは限らない
材料を薄くすれば、材料使用量は減る。
しかし、薄くすると加工難易度が上がることがある。
例えば、
● 破れやすい
● シワになる
● 位置ズレする
● 搬送しにくい
● 貼りにくい
● 歩留まりが下がる という問題である。
つまり、薄くすれば安いとは限らない。
薄型化は、材料費を下げる一方で、加工費や不良費を上げることがある。
■高機能化すると工程が複雑になる
熱対策部材は、単一材料ではなく、複合構成になることが多い。
例えば、
● 放熱材+粘着材
● グラファイト+絶縁フィルム
● 金属箔+EMI材
● 断熱材+保護フィルム
● セラミック系材料+粘着層 などである。
複合化すると機能は増える。
しかし工程も増える。
工程が増えれば、コストも上がる。
そのため、どこまで複合化するかも重要な判断になる。
■研究者視点 : 熱対策材料は性能とコストの最適化が必要
研究開発では、高性能材料に注目が集まりやすい。
しかし実際の製品では、性能だけでなくコストが重要になる。
求められるのは、最高性能ではなく、
必要性能を最適コストで満たすことである。
過剰性能はコスト増になる。
性能不足は不良コストになる。
つまり熱対策材料は、性能とコストのバランス設計が重要になる。
■現場視点 : コストは量産で決まる
現場では、コストは材料単価だけで決まらない。
実際には、
● 加工しやすいか
● 貼りやすいか
● 検査しやすいか
● 不良が少ないか
● 自動化できるか
● リワークできるか
● 安定供給できるか で決まる。
つまり、コストは購買部門だけの問題ではない。>
工程設計の問題でもある。
■熱 × コストの量産で起きやすい問題
量産工程では、以下のようなコスト問題が起きることがある。
● 材料費は安いが歩留まりが悪い
● 加工費が高い
● 貼り合わせ工程が増える
● 自動化できず人手が必要になる
● 検査工数が増える
● 不良解析が増える
● 顧客工程で扱いにくい
● 保管条件が厳しい
● ロットばらつきで条件変更が必要になる
これらはすべて、総コストに影響する。
つまり熱 × コストでは、
材料価格
加工費
工程安定性
不良リスクを同時に考える必要がある。
■OTIS視点
OTISは、最安材料を売る会社ではない。
また、材料そのものを開発する会社でもない。
しかし、熱対策材料を量産で使いやすい形に加工することで、総コスト低減に貢献できる可能性がある。
OTIS視点で重要なのは、
● 歩留まりを考えた形状設計
● 自動化しやすい供給形態
● 貼り合わせ工程の簡素化
● 異種材料積層による部品点数削減
● リール供給による作業性向上
● 高精度加工による不良低減 である。
つまりOTISが貢献できるのは、材料単価を下げることだけではない。
量産工程全体のコストを下げることである。
■OTISでできること
OTISでは、
● 高精度打ち抜き
● 微細加工
● 高精度ラミネート
● 異種材料積層
● リール供給
● 自動化工程向け供給形態設計
● 放熱材加工
● 絶縁材加工
● 粘着材加工
● 金属箔加工
などを通じて、熱対策部材の総コスト低減に貢献できる可能性がある。
特にAIサーバー、EV、ESS、スマートフォン、ウェアラブル機器では、材料単価だけでなく、組立性、歩留まり、信頼性まで含めたコスト設計が重要になる。
■OTISの専門外
一方でOTISは、
● 材料原料価格の決定
● 材料配合そのものの開発
● 完成品全体の原価設計
● 冷却装置全体のコスト設計
● 顧客製品全体の保証設計
を専門とする会社ではない。
しかし、熱対策材料を量産工程で使える形にし、総コストを下げる
という領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ AIサーバー
★★★★★ EV・電池
★★★★★ ESS・蓄電システム
★★★★★ スマートフォン
★★★★☆ ウェアラブル機器
★★★★☆ ロボット
★★★★☆ 通信機器
■まとめ
熱対策は、材料単価ではなく総コストで考える
熱対策材料は、安ければよいわけではない。
高ければ悪いわけでもない。
重要なのは、
必要な熱性能を、量産で安定して、最適な総コストで成立させることである。
安い材料を選んでも、不良が増えれば高くつく。
高い材料でも、部品点数や不良率を減らせれば安くなることがある。
つまり熱 × コストの本質は、
材料費ではなく、工程全体で見ることである。
熱対策は、購買だけで決まるものではない。
材料、加工、貼り合わせ、自動化、検査、信頼性まで含めて設計して初めて、コスト競争力のある熱対策になる。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



