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4. 熱 × 複合課題編:熱は単独では存在しない
4-7. 熱 × コスト 〜安い材料を選んだ結果、高くつくことがある〜

材料・加工技術

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4. 熱 × 複合課題編:熱は単独では存在しない<br>4-7. 熱 × コスト 〜安い材料を選んだ結果、高くつくことがある〜

熱対策では、必ずコストの問題が出てくる。
AIサーバー、EV、ESS、スマートフォン、ウェアラブル機器、ロボット。
どの分野でも、熱を下げたい。
しかし同時に、コストは上げたくないという要求がある。
これが、熱 × コストの課題である。

■熱対策材料は高くなりやすい

熱対策材料には、高機能材料が多い。

例えば、

 ● TIM

 ● グラファイト

 ● セラミック系材料

 ● 熱伝導ゲル

 ● エアロゲル

 ● 銅箔

 ● 絶縁放熱シート などである。

これらは一般材料より高価になることが多い。

そのため、顧客は当然、もっと安くできないかと考える。

しかし、熱対策では材料単価だけで判断すると失敗することがある。

■材料単価だけを見ると危険

例えば、A材とB材がある。

A材は高い。

B材は安い。

一見するとB材を選びたくなる。

しかしB材が、

 ● 加工しにくい

 ● 歩留まりが悪い

 ● 貼りにくい

 ● 自動化できない

 ● 不良が増える

 ● 熱性能が安定しない

材料だった場合、結果的に高くつくことがある。

つまり熱対策では、

材料単価より、

総コストで考える必要がある。

■総コストとは何か

総コストとは、材料費だけではない。

実際には、

 ● 材料費

 ● 加工費

 ● 歩留まり

 ● 検査費

 ● 設備対応費

 ● 自動化対応費

 ● 不良対応費

 ● 保証費

 ● リワーク費

 ● 在庫管理費

 ● 顧客工程での使いやすさ

まで含めて考えるべきである。

熱対策材料は、単体で使われることは少ない。

多くの場合、加工され、貼り合わされ、組み込まれ、量産工程で使われる。

だから、材料価格だけでは本当のコストは見えない。

■高性能材料ほど高いとは限らない

高性能材料は高価に見える。

しかし、結果的には安くなる場合もある。

例えば、高性能な放熱材を使うことで、

 ● 部品点数が減る

 ● ヒートシンクを小さくできる

 ● 冷却機構を簡素化できる

 ● 不良率が下がる

 ● 寿命が延びる

 ● 保証リスクが下がる

なら、材料単価が高くても総コストは下がる可能性がある。

つまり、高い材料=高コストとは限らない。

■安い材料ほど高くつくこともある

逆に、安い材料を選んだ結果、問題が増えることがある。

例えば、

 ● 熱が逃げない

 ● 接触が悪い

 ● 剥がれる

 ● 粉が出る

 ● 絶縁不良が出る

 ● 自動機で止まる

 ● 検査工数が増える

 ● 不良解析が増える というケースである。

この場合、材料費は下がっても、全体のコストは上がる。

つまり熱対策では、安く買うことと、

安く作れることは違う。

■AIサーバーでは停止コストが大きい

AIサーバーでは、熱対策不良によるコストは非常に大きくなる。

GPUや電源部品が高温になると、

 ● 性能低下

 ● サーマルスロットリング

 ● 故障

 ● サーバー停止

 ● 保守対応

 ● 冷却効率低下 につながる。

AIサーバーでは、装置価格も運用コストも大きい。

そのため、熱対策材料の数円、数十円を削った結果、設備停止や性能低下が起きれば、損失ははるかに大きくなる。

つまりAIサーバーでは、熱対策コストより、

熱対策不足のコストの方が大きくなる可能性がある。

■EV・ESSでは安全コストが大きい

EVやESSでは、熱対策不良が安全性に直結する。

電池の温度管理が不十分だと、

 ● 劣化

 ● 寿命低下

 ● 出力低下

 ● 熱暴走リスク

 ● 回収・リコール

 ● ブランド毀損 につながる可能性がある。

この場合、材料費削減の効果より、不具合時の損失の方が圧倒的に大きくなる。

つまりEV・ESSでは、安全性を含めたコストで考える必要がある。

■スマートフォン・ウェアラブルでは体験コストがある

スマートフォンやウェアラブル機器では、熱問題がユーザー体験に影響する。

少し熱い。

電池持ちが悪い。

性能が落ちる。

長時間使えない。

装着して不快。

これらは、直接的な故障ではなくても、製品評価を下げる。

つまり小型デバイスでは、熱によるユーザー体験の悪化もコストである。

■加工しにくい材料は高くなる

熱対策材料には、加工しにくいものが多い。

例えば、

 ● グラファイトは割れやすい

 ● エアロゲルは粉落ちしやすい

 ● セラミック系材料は欠けやすい

 ● ゲルは変形しやすい

 ● 金属箔はバリやシワが出やすい

こうした材料は、材料費だけでなく、加工費や歩留まりに影響する。

つまり、材料が高いか安いかだけでなく、

加工しても安定するかが重要になる。

■歩留まりがコストを決める

量産では、歩留まりが非常に重要である。

例えば、材料費が安くても、加工不良が多ければコストは上がる。

逆に、材料費が高くても、歩留まりが高ければ総コストは抑えられる場合がある。

つまり熱対策材料では、

単価ではなく、良品として使える割合が重要になる。

■自動化できないとコストが上がる

熱対策材料が自動化工程に乗らない場合、人手作業が増える。

人手作業が増えると、

 ● 工数が増える

 ● 貼りズレが増える

 ● 品質ばらつきが増える

 ● 検査が増える

 ● 生産速度が落ちる ことがある。

つまり、自動化できない材料は、量産ではコストが上がりやすい。

熱対策材料では、自動機で流せることもコスト性能の一部である。

■薄くすれば安いとは限らない

材料を薄くすれば、材料使用量は減る。

しかし、薄くすると加工難易度が上がることがある。

例えば、

 ● 破れやすい

 ● シワになる

 ● 位置ズレする

 ● 搬送しにくい

 ● 貼りにくい

 ● 歩留まりが下がる という問題である。

つまり、薄くすれば安いとは限らない。

薄型化は、材料費を下げる一方で、加工費や不良費を上げることがある。

■高機能化すると工程が複雑になる

熱対策部材は、単一材料ではなく、複合構成になることが多い。

例えば、

 ● 放熱材+粘着材

 ● グラファイト+絶縁フィルム

 ● 金属箔+EMI材

 ● 断熱材+保護フィルム

 ● セラミック系材料+粘着層 などである。

複合化すると機能は増える。

しかし工程も増える。

工程が増えれば、コストも上がる。

そのため、どこまで複合化するかも重要な判断になる。

■研究者視点 : 熱対策材料は性能とコストの最適化が必要

研究開発では、高性能材料に注目が集まりやすい。

しかし実際の製品では、性能だけでなくコストが重要になる。

求められるのは、最高性能ではなく、

必要性能を最適コストで満たすことである。

過剰性能はコスト増になる。

性能不足は不良コストになる。

つまり熱対策材料は、性能とコストのバランス設計が重要になる。

■現場視点 : コストは量産で決まる

現場では、コストは材料単価だけで決まらない。

実際には、

 ● 加工しやすいか

 ● 貼りやすいか

 ● 検査しやすいか

 ● 不良が少ないか

 ● 自動化できるか

 ● リワークできるか

 ● 安定供給できるか で決まる。

つまり、コストは購買部門だけの問題ではない。>

工程設計の問題でもある。

■熱 × コストの量産で起きやすい問題

量産工程では、以下のようなコスト問題が起きることがある。

 ● 材料費は安いが歩留まりが悪い

 ● 加工費が高い

 ● 貼り合わせ工程が増える

 ● 自動化できず人手が必要になる

 ● 検査工数が増える

 ● 不良解析が増える

 ● 顧客工程で扱いにくい

 ● 保管条件が厳しい

 ● ロットばらつきで条件変更が必要になる

これらはすべて、総コストに影響する。

つまり熱 × コストでは、

材料価格

加工費

工程安定性

不良リスクを同時に考える必要がある。

■OTIS視点

OTISは、最安材料を売る会社ではない。

また、材料そのものを開発する会社でもない。

しかし、熱対策材料を量産で使いやすい形に加工することで、総コスト低減に貢献できる可能性がある。

OTIS視点で重要なのは、

 ● 歩留まりを考えた形状設計

 ● 自動化しやすい供給形態

 ● 貼り合わせ工程の簡素化

 ● 異種材料積層による部品点数削減

 ● リール供給による作業性向上

 ● 高精度加工による不良低減 である。

つまりOTISが貢献できるのは、材料単価を下げることだけではない。

量産工程全体のコストを下げることである。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 高精度打ち抜き

 ● 微細加工

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料積層

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態設計

 ● 放熱材加工

 ● 絶縁材加工

 ● 粘着材加工

 ● 金属箔加工

などを通じて、熱対策部材の総コスト低減に貢献できる可能性がある。

特にAIサーバー、EV、ESS、スマートフォン、ウェアラブル機器では、材料単価だけでなく、組立性、歩留まり、信頼性まで含めたコスト設計が重要になる。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 材料原料価格の決定

 ● 材料配合そのものの開発

 ● 完成品全体の原価設計

 ● 冷却装置全体のコスト設計

 ● 顧客製品全体の保証設計

を専門とする会社ではない。

しかし、熱対策材料を量産工程で使える形にし、総コストを下げる

という領域では、重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ AIサーバー

★★★★★ EV・電池

★★★★★ ESS・蓄電システム

★★★★★ スマートフォン

★★★★☆ ウェアラブル機器

★★★★☆ ロボット

★★★★☆ 通信機器

■まとめ

熱対策は、材料単価ではなく総コストで考える

熱対策材料は、安ければよいわけではない。

高ければ悪いわけでもない。

重要なのは、

必要な熱性能を、量産で安定して、最適な総コストで成立させることである。

安い材料を選んでも、不良が増えれば高くつく。

高い材料でも、部品点数や不良率を減らせれば安くなることがある。

つまり熱 × コストの本質は、

材料費ではなく、工程全体で見ることである。

熱対策は、購買だけで決まるものではない。

材料、加工、貼り合わせ、自動化、検査、信頼性まで含めて設計して初めて、コスト競争力のある熱対策になる。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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