【1】エッチングとは何か
エッチングとは、不要な部分の膜を選択的に削って回路パターンを形成する工程。
リソグラフィでレジストに描いたパターンを型(マスク)として、
下地の膜を削り、微細な構造を形作る。
半導体製造において、リソグラフィ+エッチングは 図面を立体化するコンビ技術 である。
【2】エッチングの種類(大分類)
エッチングは大きく2種類に分類される。
●(1)ウェットエッチング(Wet Etching)
液体薬品で膜を溶かす。
●(2)ドライエッチング(Dry Etching)
プラズマを使用し、気体の反応で膜を削る。
微細化が進んだ現在は、ほぼすべてドライエッチングが主流 となっている。
【3】ウェットエッチングの特徴
液体(HF、H₃PO₄など)を使って膜を化学的に溶かす方式。
【特徴】
● 装置がシンプル
● コストが安い
● 等方性エッチング(横にも縦にも同じ速度で溶ける)
● 微細加工には不向き
● 感光材除去(レジストストリップ)にも利用
代表例:
● SiO₂ → HF
● Al → リン酸系エッチング液
最先端では、主にCMP清浄や後工程で使用される。
【4】ドライエッチングの種類と特徴
ドライエッチングは以下の3つに分類される。
●(1)プラズマエッチング
気体をプラズマ化して化学反応で膜を除去。
・ SiO₂ → CF₄、CHF₃
・ Si → Cl₂、HBr
特徴:
・ 化学反応によるエッチング
・ 高選択性(レジストや下地を保護しつつ削れる)
●(2)反応性イオンエッチング(RIE)
プラズマ+イオン衝撃のハイブリッド。
・ 方向性(異方性)を持ち、垂直な壁を形成できる
・ 微細化に不可欠
・ 今日の主流
●(3)深掘りエッチング(DRIE:Deep RIE)
MEMSなどで深い穴を掘るための方式。
代表技術:Boschプロセス
特徴:
・ 数百 μm の深さを垂直に掘れる
・ スマホの加速度センサーなどに必須
【5】異方性と等方性エッチングの違い
エッチング形状を理解する上で重要なのがこの2つ。
●等方性エッチング(Isotropic)
・ 横方向にも同じように削れる
・ 下地の下に潜り込む(アンダーカット)
●異方性エッチング(Anisotropic)
・ 垂直方向が優先的に削れる
・ 微細パターンを高精度で再現可能
→ 先端ロジックの配線やゲート加工には 異方性エッチング(RIE)が必須。
【6】選択比(Selectivity)とは
エッチングで重要な指標が 選択比。
削りたい膜:削りたくない膜の比率 のこと。
例
・ SiO₂ を削りたい場合
→ Si やレジストを極力削らない必要がある
選択比が低いと:
・ パターンが崩れる
・ レジストが薄くなりパターン倒れ
・ 過剰エッチングで素子破壊
高選択比=高度なエッチング技術の証。
【7】微細化に伴うエッチングの課題
エッチングは微細化するほど難しくなる。
・ パターン倒れ
・ LER/LWR(端のギザギザ)
・ 3D構造の深い溝の中まで均一に削る“High aspect ratio問題”
・レジストが薄くなり耐久性が不足
・ 過剰エッチング(オーバーエッチ)で寸法ばらつき
特に、FinFET → GAA(ナノシート)になると、
側面・上下を同時に高精度で削る3Dエッチング技術 が必須。
【8】代表的なエッチング用途
半導体のあらゆる場所でエッチングは使われる。
・ トランジスタゲート形成
・ STI(Shallow Trench Isolation)
・ 多層配線(vias と trenches)
・ 3D NANDの“深掘り穴”形成
・ MEMSの構造形成
特に3D NANDでは
高さ100μm超の深掘り縦穴 を掘るため、
世界最高レベルのハイアスペクト比エッチングが必要。
【9】エッチングの最新動向
● プラズマ損傷を抑える低ダメージエッチング
● ナノシート/GAA向けの選択性向上技術
● EUVレジストに対応した新反応ガス開発
● High Aspect Ratio構造の均一性制御
● AI制御によるエッチングプロセス安定化
今後、エッチングはますます材料科学 × プラズマ × AI の世界になっていく。
【10】まとめ
・ エッチングは不要部分を削り、回路を立体化する工程
・ ウェットよりドライ(RIE)が主流
・ 異方性エッチングが微細化の要
・ 選択比が加工精度を決める
・ 3D化によりエッチングの難易度は年々上昇
・ DRIEはMEMSや3D NANDの深掘り技術として重要
【理解チェック】
1.エッチングの目的を一言で説明してください。
2.近代プロセスでウェットエッチングよりドライエッチングが主流なのはなぜ?
3.選択比とは何か?
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。



