半導体とは何か ― 導体・絶縁体・半導体の違い
物質は電気の通しやすさで3種類に分かれる。
電気をよく通す導体(銅・アルミなど)、ほとんど通さない絶縁体(ガラス・ゴムなど)、 そしてその中間に位置する半導体だ。
半導体の最大の特徴は、温度・光・電圧などの外部条件によって導電性が変化することにある。この「条件に応じて応答する素材」という性質が、スイッチ・センサー・演算素子すべての基礎となっている。 現代社会のあらゆる電子機器はこの性質なしには成り立たない。
シリコンが主役の理由 ― ドーピングと電子・正孔の仕組み
半導体素材のなかでシリコン(Si)が圧倒的な主流である理由は3点だ。 地球上に豊富で安価なこと、結晶構造が安定して精密加工に向いていること、 そして酸化膜(SiO₂)を内部に形成できるため絶縁層として活用できること。 扱いやすさと高性能を両立した素材として、現在も半導体産業の中心に君臨している。
半導体内の電気の流れは、電子(マイナス)と正孔(電子が抜けた空席・プラス) の2種類のキャリアの移動によって生じる。 不純物を微量添加するドーピングによって、電子が多いN型と 正孔が多いP型を作り分けることができ、これがすべてのデバイスの出発点となる。 半導体はいまや「産業の米」と呼ばれ、国家の技術力・経済力・安全保障を左右する戦略物資となっている。
半導体材料の種類 ― 元素半導体と化合物半導体
半導体材料は元素半導体と化合物半導体の2種類に大別される。 シリコン・ゲルマニウムに代表される元素半導体は安価で量産性に優れ、 ロジックICやメモリの主流素材として使われている。 一方、2種類以上の元素を組み合わせた化合物半導体は、 シリコンでは実現できない特性を持ち、用途に応じて選択される。
Si(シリコン)
汎用・安価。ロジック・メモリの主流素材
Ge(ゲルマニウム)
電子移動度が高い。高速動作向き・赤外線センサー用途
GaAs(ガリウムヒ素)
高周波・高速。5G通信・衛星・宇宙用途に強い
InP(インジウムリン)
光通信・レーザーダイオードに使用。高速光デバイスの主力
次世代材料の台頭 ― SiC・GaN・グラフェンが変える産業
シリコンの性能限界を超えるため、ワイドバンドギャップ半導体と呼ばれる 新世代材料が急速に普及している。バンドギャップが広いほど高耐圧・高温動作・低損失が実現でき、 EV・5G・再生エネルギーなど脱炭素社会の実現に不可欠な素材となっている。
● SiC(炭化ケイ素):高耐圧・高温対応。EV向けインバーターのパワー半導体として急速に採用拡大中
● GaN(窒化ガリウム):高速スイッチング・小型化に優れる。急速充電器・5G基地局で標準化が進む
● Ga₂O₃(酸化ガリウム):SiCを上回る耐圧特性を持つ次世代パワー半導体材料として研究が進行中
● グラフェン・2D材料:炭素原子1層の超薄膜素材。極めて高い電子移動度を持ち、ポストシリコン材料として注目
デバイスの進化 ― PN接合からGAAチップまで
N型・P型を接合したPN接合がすべての出発点だ。 一方向にのみ電流を流すダイオード、電流を制御・増幅するMOSFETへと発展し、 N型・P型を組み合わせたCMOS構造が静止時の消費電力をほぼゼロに抑えることで デジタル回路の標準となった。
PN接合 → ダイオード → MOSFET → CMOS → FinFET → GAA
微細化の限界に対し、22nm以降は3次元ゲート構造のFinFET、 2nm以降はゲートがチャネルを全周囲から制御するGAA(Gate-All-Around)が必須となっている。 チップ上には用途別に、高速キャッシュのSRAM・大容量のDRAM・ 不揮発のフラッシュメモリ、汎用演算のCPU、 大規模並列処理のGPUなどが集積されている。
このコラムのポイント
● 半導体は「条件で導電性が変わる」素材。導体・絶縁体の中間に位置する
● シリコンが主流の理由は安価・安定・酸化膜形成の3点。ドーピングがすべての基礎
● 材料は元素半導体と化合物半導体に大別。用途に応じた選択が性能を決める
● SiC・GaNなどワイドバンドギャップ材料がEV・5G・再エネ産業を変えている
● デバイスはPN接合→MOSFET→CMOS→FinFET→GAAと進化。微細化の限界を構造で突破
監修:角本 康司(オーティス株式会社 代表取締役)
※本記事は第1〜3章の内容を統合・要約したものです。各章の詳細は元記事をご参照ください。
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