■加工精度とは何か
加工精度とは、設計された形状、寸法、位置、厚みなどを、どの程度正確に再現できるかを示す考え方である。
熱対策部材では、例えば次のような精度が関係する。
・外形寸法精度
・穴位置精度
・貼り合わせ位置精度
・積層位置精度
・厚み精度
・部分配置精度
・ピッチ精度
・端面品質
・バリ高さ
・平面度
・反り
・リール内の送り位置精度
これらは、単独で存在するものではない。
一つの精度不良が、別の機能へ影響する。
例えば貼り合わせ位置がズレれば、熱源を十分に覆えない。
外形寸法が大きすぎれば、周辺部品へ干渉する。
厚みが大きすぎれば、部品へ過剰な圧力をかける。
つまり加工精度は、寸法の問題であると同時に、
熱・絶縁・組立・信頼性の問題でもある。
■熱対策部材はどこに置くかが重要
熱対策材料は、製品内部のどこへ置いても同じ効果を発揮するわけではない。
熱源の中心。
ホットスポット。
冷却プレートとの接触面。
筐体へ熱を渡す部分。
こうした場所へ、狙った状態で配置する必要がある。
例えば、発熱部品の大きさが10mm角で、放熱シートも10mm角だったとする。
放熱シートが1mmズレれば、熱源の10%が十分に覆われない可能性がある。
部材がさらに小さくなれば、同じ1mmのズレはもっと大きな影響を持つ。
つまり熱対策では、高性能材料を使うことより前に、
高性能材料を必要な場所へ正確に置くことが必要になる。
■外形寸法が熱経路を決める
放熱部材の外形は、単なる見た目の形状ではない。
外形によって、
・熱を受け取る面積
・熱を広げる面積
・冷却部材へ接触する面積
・周辺部品との距離 が決まる。
外形が小さすぎれば、熱源を十分に覆えない。
外形が大きすぎれば、他の部品、コネクター、配線、筐体へ干渉する。
また導電性材料の場合、外形が大きすぎると、絶縁距離を不足させることもある。
つまり外形精度は、部品が組み付くかどうかだけではなく、
どこからどこまで熱を受け持つかを決める。
■貼り付け位置のズレがホットスポットを残す
放熱シートやTIMが熱源から外れると、一部の熱が十分に逃げなくなる。
平均的には接触しているように見えても、最も温度が高い部分を覆えていなければ、局所温度は下がらない。
特に半導体では、チップ全体が均一に発熱するとは限らない。
演算回路、電源回路、メモリ周辺など、一部に発熱が集中することがある。
そのため、熱対策部材は単に部品中央へ置けばよいとは限らない。
ホットスポットを正確に覆う位置精度が必要になる。
貼り付け位置がわずかにズレるだけで、
・最大温度
・温度分布
・熱拡散方向
・周辺部品への熱影響 が変わる可能性がある。
■穴位置のズレも熱性能へ影響する
熱対策部材には、ネジ、コネクター、電子部品、突起を避けるための穴や切り欠きが設けられる。
穴位置がズレると、組み付けできないだけでなく、熱経路が細くなることがある。
例えば、熱拡散シートに大きな穴が開いている場合、その周囲を熱が回り込む必要がある。
穴の位置が熱源へ近づきすぎれば、熱を広げる有効面積が減る。
また、細い橋状の部分が生じれば、そこで熱の流れが制限される。
つまり穴や切り欠きは、逃げ形状であると同時に、
熱経路を変える形状でもある。
■狭い部分では熱が集中する
放熱部材の途中に細い部分があると、そこを通過できる熱量が限られる。
広い面積で受け取った熱を、狭い形状へ集めて流そうとすれば、熱抵抗が高くなる。
これは電気配線の細い部分で抵抗が増える考え方と似ている。
例えば、
・穴と外形の間
・切り欠き周辺
・細い連結部
・段差回避部分 では、熱の通り道が狭くなる。
加工寸法がわずかに変わるだけでも、この狭い部分の幅が変わり、熱性能へ影響する可能性がある。
つまり微細形状では、全体寸法だけでなく、熱が通る最小幅も重要になる。
■厚み精度が熱抵抗を変える
材料内部の熱抵抗は、厚みの影響を受ける。
同じ材料であれば、一般に厚みが大きいほど、厚み方向の熱抵抗は増えやすい。
そのため、TIMや絶縁放熱シートの厚みがばらつけば、製品ごとの熱性能もばらつく可能性がある。
しかし、単純に薄い方がよいとは限らない。
薄すぎると、部品表面の段差や反りを吸収できず、空気層が残ることがある。
厚すぎると、材料内部の熱抵抗が増える。
つまり厚みには、適切な範囲がある。
厚み精度とは、目標値へ近づけることだけではない。
接触と熱抵抗を安定させることである。
■総厚みのばらつきが接触圧力を変える
積層部材では、各層の厚みが積み重なる。
熱伝導層。
絶縁層。
粘着層。
保護層。
それぞれの厚みが公差内でも、完成品の総厚みにはばらつきが出る。
総厚みが大きい部材では、組立時の圧力が高くなる。
総厚みが小さい部材では、圧力が不足する。
圧力が変われば、
・TIMの圧縮率
・接触面積
・空気層
・接触熱抵抗 も変わる。
つまり総厚みのばらつきは、
寸法ばらつきではなく、接触条件のばらつきである。
■柔らかい材料は測定方法で厚みが変わる
TIM、ゲル、発泡体、粘着材などの柔らかい材料は、測定時の圧力によって厚みが変化する。
強い力で測れば薄くなる。
弱い力で測れば厚く見える。
そのため、同じ材料でも測定器、測定子、荷重、測定時間によって結果が変わることがある。
図面上で厚み公差を定めても、測定条件が違えば、サプライヤーと顧客で数値が一致しない可能性がある。
つまり柔らかい熱対策材料では、
厚みの数値だけでなく、どの条件で測った厚みかを明確にする必要がある。
■圧縮後の厚みが本当の使用厚みになる
柔らかいTIMや発泡体は、組立時に圧縮される。
そのため、自由状態の厚みと、製品内で使われている厚みは異なる。
熱性能へ直接影響するのは、組立後の厚みである。
例えば、自由状態で1mmのTIMが、組立後に0.7mmまで圧縮される場合、熱抵抗や接触状態は0.7mmの状態で評価する必要がある。
しかし圧縮率がばらつけば、製品ごとの実使用厚みもばらつく。
つまり厚み管理では、加工後の厚みだけでなく、
組立後に何mmになるかまで考える必要がある。
■平面度が接触状態を左右する
部材の外形や厚みが図面どおりでも、反りやカールがあれば、全面は接触しない。
中央だけ接触する。
端部だけ浮く。
片側だけ接触する。
このような状態では、接触面積が減り、空気層が発生する。
特に薄い金属箔、グラファイト、積層フィルムでは、材料の張力差や熱膨張差によって反りが起きることがある。
つまり熱対策部材では、寸法精度と同じように、平面状態も重要である。
■反りは自動貼付にも影響する
反りのある部材は、吸着ノズルで取りにくい。
吸着できても、搬送中に落下する。
基準面へ正しく位置合わせできない。
貼り付け時に端部が巻き込まれる。
その結果、貼りズレや浮きが生じる。
つまり反りは、熱性能の問題だけでなく、自動化工程の問題にもなる。
量産では、部材単体で平らに見えるだけでは不十分である。
リールから剥離された後。
吸着されたとき。
貼り付けられたとき。
それぞれの状態で、形状が安定している必要がある。
■バリが接触を妨げる
打ち抜きや切断によって、端面にバリが発生することがある。
金属箔のバリ。
フィルムのめくれ。
粘着材のはみ出し。
グラファイトの欠けや粉。
これらが存在すると、部材が平面へ密着しなくなる。
小さなバリが支点となり、部材全体を浮かせることもある。
その結果、バリ高さ以上の空気層が広い範囲に形成される可能性がある。
つまりバリは、端面だけの問題ではない。
部材全体の接触状態を変える問題である。
■導電性材料のバリは絶縁リスクにもなる
銅箔、アルミ箔、グラファイトなどの導電性材料では、バリや欠けが電気的な問題を起こすことがある。
バリが絶縁フィルムを突き破る。
導電性の粉が周辺へ付着する。
金属端面が回路へ近づく。
こうした状態では、ショート、漏電、ノイズの原因になる可能性がある。
つまり熱対策用の導電材料では、
放熱性能だけでなく、端面の電気的安全性も管理する必要がある。
■粘着材のはみ出しも精度不良になる
粘着材は、圧力や温度によって端部からはみ出すことがある。
粘着材がはみ出すと、
・外形寸法が変わる
・周辺部品へ付着する
・異物を引き寄せる
・部品同士が貼り付く
・自動搬送が不安定になる 可能性がある。
また、粘着材のはみ出し量が製品ごとに違えば、貼り付け位置や剥離性もばらつく。
つまり外形精度は、基材の寸法だけでは決まらない。
粘着材を含めた完成状態で管理する必要がある。
■積層位置精度が多機能部材を成立させる
多層部材では、各層が異なる機能を持つ。
熱拡散層。
絶縁層。
粘着層。
EMI層。
防水層。
各層の位置がズレると、必要な機能が必要な場所へ存在しなくなる。
例えば、
・絶縁層がズレて導電材が露出する
・粘着層がズレて固定面積が減る
・放熱層がズレて熱源を覆えない
・シール材がズレて防水ラインが切れる という問題が起きる。
つまり積層位置精度とは、見た目をそろえる精度ではなく、
複数機能を同じ場所で成立させる精度である。
■公差は工程ごとに累積する
一つの完成部材を作るまでに、複数の工程がある。
材料をスリットする。
一層目を打ち抜く。
二層目を貼り合わせる。
積層後に外形加工する。
リールへ巻き取る。
それぞれの工程には位置誤差がある。
個々の工程が公差内でも、誤差が同じ方向へ重なると、完成品では大きなズレになる可能性がある。
これが、公差の累積である。
そのため多層・多工程品では、完成品公差を単純に各工程へ均等配分するだけでは不十分な場合がある。
どの工程が基準になるのか。
どの工程で位置を補正するのか。
どの誤差が最も機能へ影響するのか。
これらを考えて工程を設計する必要がある。
■基準の取り方で精度が変わる
加工や貼り合わせでは、どこを基準に位置を決めるかが重要である。
外形を基準にする。
穴を基準にする。
印刷マークを基準にする。
材料端面を基準にする。
前工程の加工形状を基準にする。
基準が不安定であれば、加工精度も安定しない。
例えば材料端面が蛇行しているのに、その端面を基準にすれば、部品位置も蛇行する。
つまり精度を高めるには、高精度な設備だけでなく、
安定した基準を設計することが必要になる。
■位置精度と形状精度は別である
部材の中心位置が正しくても、形状が変形していることがある。
反対に、形状は正しくても、全体がズレていることもある。
例えば、円形部材が正しい直径で加工されていても、熱源中心からズレていれば十分な効果を発揮しない。
また中心位置は正しくても、材料が伸びて楕円になれば、周辺部品へ干渉する可能性がある。
つまり熱対策部材では、
・どこにあるか
・どの形であるか を分けて管理する必要がある。
■材料の伸縮が加工精度を変える
樹脂フィルム、粘着材、発泡体は、温度、湿度、張力によって寸法が変わることがある。
加工時には図面どおりでも、保管後に縮む。
リール搬送中に伸びる。
剥離フィルムから剥がした後に戻る。
こうした変化によって、完成品寸法が変わる場合がある。
つまり柔軟材料の加工精度は、刃物や金型の精度だけでは決まらない。
材料が加工前後でどのように動くかまで考える必要がある。
■温湿度管理も寸法管理の一部である
樹脂材料や粘着材は、温度や湿度によって柔らかさ、伸び、粘着性が変わることがある。
加工環境が変われば、
・寸法
・厚み
・剥離力
・反り
・貼り合わせ状態 も変化する可能性がある。
夏と冬で結果が違う。
朝と夕方で粘着状態が違う。
材料を保管場所から出してすぐ加工した場合と、室温へ馴染ませた場合で寸法が違う。
こうした問題を防ぐには、加工設備だけでなく、
材料保管と加工環境も管理する必要がある。
■加工精度は試作品一個では判断できない
試作品を一個作り、図面どおりであれば、加工できるように見える。
しかし量産では、数千、数万、数百万個を同じ状態で作る必要がある。
最初の一個が合っていても、
・刃物が摩耗する
・材料ロットが変わる
・張力が変わる
・粘着材が設備へ付着する
・温度が変わる
・リール径が変わる
ことで、徐々に精度が変化する可能性がある。
つまり量産で重要なのは、一度だけ作れる精度ではなく、
作り続けても変わらない精度である。
■平均値だけでは量産安定性は分からない
加工寸法の平均値が目標値と一致していても、ばらつきが大きければ、量産は安定していない。
例えば目標寸法が10.00mmの場合、ほとんどの製品が10.00mm付近に集まっている工程と、
9.80mmから10.20mmまで広く分布している工程では、平均値が同じでも品質は異なる。
熱対策部材でも、
・接触面積
・貼り位置
・総厚み
・圧縮率
・バリ高さ
のばらつきが大きければ、製品温度もばらつく可能性がある。
つまり加工精度では、平均が合っているかだけでなく、分布が狭いかを見る必要がある。
■工程能力と熱性能を結び付ける
一般的な寸法管理では、公差内に入っているかを確認する。
しかし熱対策部材では、その公差が熱性能へどの程度影響するかを理解することが重要である。
例えば、
・位置ズレ0.1mmで温度が何度変わるのか
・厚みが20μm増えると熱抵抗がどれだけ変わるのか
・接触面積が5%減るとホットスポットがどう変わるのか
・バリ高さが何μmを超えると浮きが発生するのか
を把握できれば、本当に必要な公差を設定できる。
つまり図面公差は、加工できる範囲だけで決めるのではなく、機能を維持できる範囲から決める必要がある。
■必要以上に厳しい公差にも問題がある
精度は高いほどよいように見える。
しかし必要以上に厳しい公差は、
・金型費増加
・加工速度低下
・検査工数増加
・歩留まり低下
・コスト上昇 につながる。
熱性能へ影響しない寸法まで厳しく管理しても、製品価値は上がらないことがある。
重要なのは、すべてを高精度にすることではない。
熱性能・絶縁性・組立性へ影響する部分を見極め、そこへ精度を集中させることである。
■精度を上げる前に重要寸法を決める
図面上のすべての寸法が、同じ重要度とは限らない。
例えば、
・熱源との位置関係
・冷却部材との接触面積
・絶縁距離
・シールライン
・自動機の吸着位置
・部品の基準穴 は重要度が高い。
一方、熱や組立に影響しない外周の一部は、比較的広い公差でも問題ない場合がある。
そのため、設計者と加工メーカーは、どの寸法が機能を決めるのかを共有する必要がある。
図面だけでは、すべての設計意図が伝わらないこともある。
■カメラ検査で見えるものと見えないもの
加工精度を確認するために、画像検査が使われることがある。
カメラによって、
・外形
・穴位置
・貼りズレ
・欠け
・異物
・印刷位置 などを確認できる。
しかし画像検査だけでは、
・厚み
・内部気泡
・接触状態
・層間剥離
・圧縮後の状態
・熱抵抗 までは分からない場合がある。
つまり検査では、見える寸法と、
見えない機能を分けて考える必要がある。
外観が良いことと、熱性能が良いことは同じではない。
■寸法検査だけでは熱性能を保証できない
すべての寸法が図面公差内でも、接触界面に気泡があれば熱性能は低下する。
厚みが規格内でも、局所的に圧縮ムラがあればホットスポットが残る。
外形が正しくても、材料の熱伝導方向が間違っていれば期待した性能は出ない。
つまり寸法検査は重要だが、それだけで熱性能を完全に保証することは難しい。
必要に応じて、
・熱抵抗評価
・温度測定
・圧縮評価
・接触状態確認
・熱サイクル試験 などと組み合わせる必要がある。
■AIサーバーで求められる加工精度
AIサーバーでは、GPU、HBM、電源部品、光通信部品など、多くの高発熱部品が高密度に配置される。
部品間の距離が狭いため、放熱部材の外形や位置が少しズレるだけで、周辺部品へ干渉する可能性がある。
また、導電性のグラファイトや金属箔が回路へ近づきすぎれば、絶縁やノイズの問題も起きる。
さらに冷却プレートとの接触高さがばらつけば、部品ごとの冷却性能に差が出る。
つまりAIサーバーでは、
・微細な外形精度
・高い貼り合わせ位置精度
・総厚み管理
・平面度管理
・導電材端面管理が重要になる。
■3D半導体・先端パッケージで求められる精度
3D半導体や先端パッケージでは、微細なチップや配線が狭い範囲に集中する。
熱対策部材も、小さく、薄く、高精度である必要がある。
わずかな位置ズレでも、
・発熱部を外す
・周辺回路へ干渉する
・絶縁距離を不足させる
・接合圧力を偏らせる 可能性がある。
また、微小な厚み差がチップやパッケージへ局所的な応力を与えることもある。
つまり先端半導体では、熱性能のための精度と、
部品を壊さないための精度が同時に必要になる。
■EV・電池で求められる加工精度
EVや電池では、セル、モジュール、バスバー、制御基板の周辺に、放熱材、絶縁材、シール材が使われる。
部材が大きくても、精度が重要でないわけではない。
絶縁材がズレれば、金属部が露出する。
シール材が切れれば、水分が侵入する。
放熱材の厚みがばらつけば、セルごとの接触圧力や温度が変わる。
また大型部材では、小さな割合の寸法差でも、絶対値として大きなズレになる。
つまりEV・電池では、広い面積を均一な状態で作る精度が重要になる。
■スマートフォン・ウェアラブルで求められる精度
スマートフォンやウェアラブル機器では、内部空間が極めて限られている。
熱拡散シート、絶縁材、粘着材、EMI材が、部品の隙間へ配置される。
数十μmのズレでも、
・カメラ
・バッテリー
・アンテナ
・フレキシブル基板
・センサー へ干渉する可能性がある。
また表面温度を均一にするには、グラファイトなどを狙った位置へ正確に配置する必要がある。
つまり小型機器では、加工精度が、
組立性
熱性能
通信性能
ユーザーの体感温度 へ同時に影響する。
■医療機器で求められる精度
医療機器や生体センサーでは、熱対策部材が人体へ近い場所で使われることがある。
貼り位置がズレると、局所的に表面温度が上昇する可能性がある。
絶縁部材がズレれば、安全性へ影響する。
粘着形状が不安定であれば、皮膚への接触や測定位置も変わる。
つまり医療機器では、加工精度が、
測定精度
安全性
装着性へ直結することがある。
■ロボットで求められる精度
ロボットでは、関節内部の狭い空間に、モーター、センサー、配線、制御部品が配置される。
熱対策部材がズレると、可動部へ干渉する可能性がある。
厚みが大きすぎれば、組立時に部品へ過剰な力を加える。
小さすぎれば、振動によって接触が失われる。
さらにロボットは動き続けるため、初期位置だけでなく、動作後も位置と接触状態を維持する必要がある。
■研究者視点 : 加工公差は、熱設計の入力条件である
熱解析では、材料物性や形状を入力する。
しかし実際の製品には、公差がある。
部材の位置が少しズレる。
厚みが変わる。
接触面積が変わる。
反りが生じる。
これらを考慮しなければ、解析結果と量産品の温度が一致しない可能性がある。
つまり加工公差は、製造上の問題だけではない。
熱シミュレーションへ与えるべき設計条件でもある。
理想寸法だけで解析するのではなく、最大・最小寸法や位置ズレを想定することで、量産時の温度ばらつきを予測しやすくなる。
■現場視点 : 精度とは、測定値ではなく、同じ機能を作り続ける力である
現場では、寸法測定によって加工精度を確認する。
しかし本来の目的は、寸法表を埋めることではない。
熱源を同じ面積で覆う。
同じ圧力で接触させる。
同じ絶縁距離を確保する。
同じ位置へ自動貼付する。
つまり加工精度の本質は、同じ寸法を作ることではなく、
同じ熱機能を繰り返し作ることにある。
■加工精度で確認すべきこと
熱対策部材の加工精度を設計・評価するときは、以下を確認する必要がある。
・熱源を十分に覆える外形か
・ホットスポットに対する位置精度は十分か
・穴や切り欠きが熱経路を細くしていないか
・厚みばらつきが熱抵抗へどう影響するか
・総厚みのばらつきで接触圧力が変わらないか
・圧縮後の厚みを考慮しているか
・平面度や反りを管理できるか
・バリや粘着材のはみ出しがないか
・導電材端面の絶縁安全性は確保されているか
・各積層層の位置精度は十分か
・工程ごとの公差累積を考慮しているか
・材料の伸縮や温湿度影響を考えているか
・量産中の刃物摩耗を管理できるか
・重要寸法と一般寸法を分けているか
・寸法精度と熱性能の関係を確認しているか
・自動貼付工程で安定して扱えるか
つまり加工精度は、図面、公差、材料、工程、検査、熱評価を一体で考える必要がある。
■OTIS視点
熱対策部材において、加工精度はOTISが価値を提供できる重要な領域である。
OTISは、熱材料そのものを開発する会社ではない。
しかし、高性能な材料を、
・必要な外形へ加工する
・発熱部へ合う形状にする
・異種材料を狙った位置へ積層する
・厚みと段差を管理する
・バリや異物を抑える
・リール状で安定供給する
・自動貼付できる状態へ設計する
ことによって、材料性能を量産製品の中で再現することに貢献できる可能性がある。
高性能材料も、加工精度が安定しなければ、製品ごとに性能が変わる。
つまりOTISの役割は、材料の性能を変えることではなく、
材料の性能が失われない形と状態を作り続けることにある。
■OTISでできること
OTISでは、
・高精度打ち抜き加工
・微細外形加工
・穴・切り欠き加工
・ハーフカット加工
・高精度ラミネート
・異種材料積層
・部分ラミネート
・グラファイト加工
・銅箔・アルミ箔加工
・絶縁フィルム加工
・粘着材加工
・発泡体加工
・狭ピッチ加工
・リール・ツー・リール加工
・リール供給
・自動貼付向け部品設計
・画像検査を含む加工状態確認
などを通じて、熱対策材料を、安定した形状・位置・供給状態を持つ量産部品へ変えることに貢献できる可能性がある。
■OTISの専門外
OTISは、
・熱材料そのものの配合開発
・半導体チップ設計
・製品全体の熱設計
・CFD専業解析
・冷却機器全体の設計
・顧客製品全体の性能保証
を専門とする会社ではない。
しかし、熱設計で求められた形状・厚み・位置関係を、量産で繰り返し再現するという領域では、重要な役割を担える可能性がある。
■この技術が重要になる産業
★★★★★ AI半導体・3D半導体
★★★★★ AIサーバー
★★★★★ スマートフォン
★★★★★ ウェアラブル機器
★★★★★ EV・電池
★★★★☆ 医療機器
★★★★☆ ロボット
★★★★☆ 光通信・電子部品
■まとめ
加工精度とは、材料性能を製品性能へ変えるための条件である
熱対策材料には、熱伝導率、熱抵抗、絶縁性などの材料性能がある。
しかし、その材料を実際の製品で機能させるには、
・正しい形状
・正しい位置
・正しい厚み
・正しい積層状態
・正しい接触面積
・安定した端面品質 が必要になる。
加工精度が不安定であれば、
・熱源を覆う面積が変わる
・接触圧力が変わる
・空気層が発生する
・熱経路が細くなる
・絶縁距離が変わる
・製品ごとの温度がばらつく 可能性がある。
つまり加工精度とは、図面どおりの部品を作ることだけではない。
設計された熱の流れを、製品一個ごとに同じ状態で作ることである。
未来の熱対策では、材料性能がさらに高くなり、部材はさらに薄く、小さく、多層になる。
そのとき、材料メーカーのカタログ値だけでは製品性能は決まらない。
最後の数十μmを、どこまで正確に、安定して、作り続けられるが、熱対策の成否を決めるのである。
コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。
※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません



