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6. 微細加工と熱問題編
6-7-2. 異種材料の熱膨張と自動化供給(中編) ― 図面どおりに加工できても、温度・張力・剥離で部材は動く ―

材料・加工技術

公開日:
6. 微細加工と熱問題編<br>6-7-2. 異種材料の熱膨張と自動化供給(中編) ― 図面どおりに加工できても、温度・張力・剥離で部材は動く ―

加工が終わった熱対策部材は、そのまま製品へ届くわけではない。

リールへ巻き取られる。
箱に詰められ、輸送される。
工場で剥がされる。
吸着ノズルで持ち上げられる。
そして製品へ貼り付けられる。

この一連の工程で、部材はさまざまな力を受け続ける。
曲げ。引っ張り。振動。温度変化。圧力。

加工段階では正確に作られた部材でも、
工程を通過するたびに、少しずつ状態が変わっていく可能性がある。

前回(6-7-1)では、異種材料の熱膨張差が反りや剥離を生む仕組みを整理した。

今回は、その部材が加工工場を出た後に通過する工程、
すなわちリール供給・剥離・吸着・自動貼付の各場面で何が起きるかを見ていく。

材料が正しくても、工程が合わなければ部材は正しく機能しない。
熱対策部材の量産とは、加工だけで完結するものではないのである

■高温では、粘着層が少しずつ動く

粘着材は、金属や硬質樹脂とは異なり、時間と温度の影響を受けやすい。

一定の力が加わった状態で温度が上がると、粘着層が時間とともに変形することがある。

加工直後には各層の位置が合っていても、

・高温保管

・長時間の使用

・リールでの巻き締まり

・温度サイクル

・部品の自重や締結荷重

によって、少しずつ位置が変わる可能性がある。

このとき問題になるのは、部材全体が大きく動く場合だけではない。

例えば、放熱層が熱源に対して0.2mmずれる。

絶縁フィルムの端部から導電材がわずかに露出する。

剥離用タブの位置が変わり、自動機でつかみにくくなる。

このような小さな変化でも、微細な部材や高密度実装では大きな問題になる。

したがって位置精度は、ラミネート直後の位置だけではなく、

温度と時間を経た後の位置まで評価する必要がある。

■温度サイクルは界面を繰り返し動かす

製品は、一度だけ温度が上がるわけではない。

電源を入れると発熱する。

電源を切ると冷える。

車載機器では、外気温も大きく変化する。

サーバーでは、計算負荷によって温度が変動する。

この加熱と冷却の繰り返しによって、異種材料は何度も伸び縮みする。

一回の温度変化では問題がなくても、繰り返されることで、

・粘着界面が疲労する

・端部剥離が進む

・微小な隙間が大きくなる

・硬い材料に亀裂が入る

・反りが戻らなくなる 可能性がある。

熱対策部材に求められるのは、初期の密着性だけではない。

温度変化を繰り返しても、同じ接触状態を維持することである。

■湿度でも部材は動く

樹脂フィルム、発泡体、粘着材などは、水分を吸収することがある。

吸湿によって、

・寸法

・硬さ

・粘着力

・絶縁性

・平面性 が変わる場合がある。

金属箔自体の吸湿変化が小さくても、一緒に積層された樹脂フィルムだけが伸びれば、積層体は反る。

加工環境と顧客工場の湿度が違えば、加工時には合っていた寸法が、使用時に変化する可能性もある。

例えば、

・乾燥した加工室

・高湿度の輸送環境

・空調された顧客工場

・高温高湿の製品内部

では、材料が置かれる環境が異なる。

そのため寸法精度は、加工機から出てきた瞬間の精度ではなく、

実際の保管・輸送・使用環境で維持される精度として考える必要がある。

■自動化供給は同じ位置へ置くだけではない

自動化供給というと、部材をリールに並べ、ロボットで貼り付ける工程だと思われやすい。

しかし実際には、

1.リールを安定して送り出す

2.部材位置を認識する

3.キャリアから剥離する

4.ノズルで吸着する

5.姿勢を保ったまま搬送する

6.正しい位置へ貼り付ける

7.必要な圧力で圧着する

という複数の動作が連続して行われる。

どこか一つでも安定しなければ、工程は停止する。

例えば、

・部材が反って吸着できない

・剥離時に細い部分が伸びる

・リールピッチが変化する

・粘着面がノズルへ付着する

・搬送中に部材が回転する

・貼り付け時に端部から接触して気泡が入る といった問題が起こる。

つまり自動化に適した部材とは、自動機が持てる部材ではない。

剥離から貼り付けまで、毎回同じ動きをする部材である。

■リール搬送では、材料は常に張力を受けている

リール・ツー・リール加工では、材料を安定して搬送するために張力をかける。

張力が弱すぎると、

・材料がたるむ

・蛇行する

・加工位置が安定しない

・シワが発生する 可能性がある。

一方、張力が強すぎると、

・樹脂フィルムが伸びる

・薄い金属箔が変形する

・発泡体が細くなる

・部材ピッチが変わる

・ラミネート後に反りが発生する 可能性がある。

問題は、加工中に伸びた状態で寸法やピッチを決めると、張力が解放された後に材料が戻ることである。

加工機上では100mmのピッチであっても、巻き取り後や顧客設備で張力条件が変われば、ピッチが変化する可能性がある。

したがってリール加工では、

・原材料の張力

・ラミネート時の張力

・打ち抜き時の張力

・巻き取り時の張力

・顧客設備での送り張力 まで含めて考える必要がある。

■複数材料の張力差が反りと位置ズレを生む

異種材料をリール状態でラミネートする場合、それぞれの材料へ別々の張力がかかる。

例えば、上側のフィルムだけを強く引っ張った状態で貼り合わせるとする。

貼り合わせ直後は、カメラ上で位置が合っている。

しかし巻き取り後に張力が解放されると、上側のフィルムは元の長さへ戻ろうとする。

その結果、

・積層体が反る

・各層の位置がずれる

・部材ピッチが変わる

・端部が浮く

・リールが蛇行する 可能性がある。

高精度ラミネートでは、位置合わせだけを見るのでは不十分である。

どの張力状態で位置を合わせたか が重要になる。

■リールに巻けることと、リール供給できることは違う

部材をリール状に巻くことができても、自動供給に適しているとは限らない。

リールに巻かれた部材は、

・曲げ

・圧縮

・張力

・長時間の拘束 を受ける。

特に巻き始め部分では、巻き径が小さく、部材へ大きな曲げが加わる。

硬い積層材。

厚い発泡体。

脆いグラファイト。

多層の複合部材。

これらは、巻き取りによって、

・巻き癖

・端部浮き

・層間剥離

・グラファイトの亀裂

・粘着材のはみ出し が起こる可能性がある。

重要なのは、巻けるかどうかではない。

巻いた後に、必要な平面性へ戻るかである。

■リールの芯径は部材の一部である

リールの芯径が小さければ、設備や梱包を小さくできる。

しかし、部材へ加わる曲げは大きくなる。

芯径を大きくすれば、巻き癖は小さくできる。

一方で、

・リール全体が大きくなる

・設備へ入らない

・搬送や交換が難しくなる

・保管スペースが増える 可能性がある。

したがって芯径は、単なる梱包仕様ではない。

・部材の厚み

・曲げ剛性

・脆さ

・巻き癖

・顧客設備

・供給数量 から決める必要がある。

リール径も、部材性能を維持するための加工設計の一部なのである。

■巻き締まりで、粘着材と柔軟材は変形する

リールを巻き取ると、内側の材料には、外側の材料から圧力がかかる。

巻き取り張力が強いほど、内層へかかる圧力も大きくなる可能性がある。

柔らかい粘着材、発泡体、ゲル状TIMなどは、この圧力によって、

・厚みが減る

・端部からはみ出す

・キャリアへ強く密着する

・剥離力が上がる

・外形が変形する ことがある。

加工直後には正常でも、リール状態で数週間保管した後に、剥離しにくくなる場合がある。

したがってリール品では、

・加工直後

・巻き取り直後

・一定期間保管後

・輸送振動後 の状態を確認する必要がある。

■同じリールの中でも、条件は同じではない

一つのリールでも、巻き始め、中央、巻き終わりでは部材が受ける条件が異なる。

巻き始め部分は、

・曲げ半径が小さい

・長時間圧力を受ける

・巻き締まりの影響が大きい 可能性がある。

巻き終わり部分は、

・曲げ半径は大きい

・外部からの衝撃を受けやすい

・巻きずれや緩みの影響を受けやすい 場合がある。

そのため、一つのリールから一か所だけを抜き取り、品質を判断するだけでは不十分な場合がある。

少なくとも、

・巻き始め

・中央

・巻き終わり

で、

・剥離力

・ピッチ

・反り

・外観

・厚み を確認する考え方が必要になる。

■剥離工程で、部材は最も変形しやすい

自動機が部材を使用するとき、多くの場合、部材を剥離フィルムから剥がす。

このとき部材には剥離方向への力が加わる。

特に、

・薄いフィルム

・柔らかいTIM

・細長い部材

・グラファイト

・複雑な異形状

・粘着面積の大きい部材 は、剥離時に変形しやすい。

剥離力が高すぎると、

・部材が伸びる

・端部が曲がる

・細い部分が破れる

・積層位置がずれる

・グラファイトが割れる 可能性がある。

一方、剥離力が低すぎると、

・搬送中に部材が浮く

・リール上で位置がずれる

・二枚取りが起こる

・カス取り時に製品まで持ち上がる 可能性がある。

必要なのは、単に剥がれることではない。

形を変えず、毎回同じ力で剥がせることである。

■剥離角度と剥離速度で必要な力は変わる

部材の剥離性は、材料の組み合わせだけで決まるわけではない。

・剥離角度

・剥離速度

・温度

・キャリアの硬さ

・粘着面積

・剥離フィルムの表面状態 によって変わる。

低速で手作業により剥がせた部材が、高速の自動機では剥がれないことがある。

反対に、高速で急に剥がすことで、柔らかい部材が変形することもある。

またキャリアを鋭く折り返して部材を剥離する方式では、剥離しやすくなる一方、脆い材料へ大きな曲げが加わる可能性がある。

したがって剥離評価は、実際の設備に近い角度と速度で行う必要がある。

■剥離を始める位置まで形状設計に入れる

同じ外形の部材でも、どこから剥がし始めるかによって、変形のしやすさは変わる。

広い辺から剥がす。

細い先端から剥がす。

鋭角部から剥がす。

これらでは、部材に加わる力が異なる。

細い突起や鋭角部から剥離が始まると、応力が集中し、

・伸びる

・折れる

・破れる

・層間が剥がれる 可能性がある。

そのため自動化向けの形状では、

・剥離しやすい向きで配置する

・細い部分を剥離開始側に置かない

・必要に応じて剥離用タブを設ける

・キャリア上で部材を支持する といった工夫が必要になる。

完成品としては不要な部分でも、量産工程を安定させるために必要なことがある。

■自動機が必要とするのは、平らな吸着面である

人であれば、少し反った部材を指で押さえながら持つことができる。

自動機は、設定された位置へノズルを下げ、真空で部材を吸着する。

部材が反っていれば、

・ノズルとの間に隙間ができる

・真空が漏れる

・吸着できない

・持ち上げた瞬間にずれる

・搬送中に落下する 可能性がある。

特に熱対策部材には、

・穴が多い

・細い

・表面が粗い

・多孔質である

・柔らかい

・粘着面が露出している  ものがある。

そのため自動化向け形状では、

・ノズルが接触できる面積

・穴を避けた吸着位置

・平らな吸着面

・部材の重心に近い位置

・真空が漏れにくい表面 を確保する必要がある。

■柔らかい部材は、吸着した瞬間に変形する

発泡体、ゲル、柔軟な熱伝導シートなどは、真空ノズルで持ち上げたときに変形することがある。

ノズル部分だけが持ち上がる。

周囲が垂れ下がる。

細い部分が折れる。

粘着面同士が接触する。

搬送中に揺れて位置が変わる。

このような問題への対策としては、

・吸着面積を大きくする

・複数のノズルで支持する

・一時的な補強フィルムを設ける

・キャリアと一緒に搬送する

・工程用の支持部を設ける などが考えられる。

ここで重要なのは、完成品として必要な形と、

搬送中に形を維持するために必要な構造は同じとは限らないということである。

■重心を考えなければ、搬送中に回転する

複雑な異形状部材では、外形の中心と部材の重心が一致しないことがある。

例えば、一部分だけに銅箔を積層する。

片側だけに厚い発泡体を設ける。

一部だけに粘着材を配置する。

このような部材では、重量が片側へ偏る。

外形の中心を吸着しても、搬送中に部材が傾いたり、回転したりする可能性がある。

したがって吸着位置は、

図面の中心ではなく、部材の重量と剛性を含めた搬送上の中心として考える必要がある。

■画像認識しやすい形状も量産品質の一部である

自動貼付設備では、カメラを使って部材の位置や向きを認識することがある。

しかし熱対策部材には、画像認識が難しい材料も多い。

例えば、

・黒色のグラファイト

・光沢のある銅箔やアルミ箔

・透明な絶縁フィルム

・左右対称の外形

・薄く輪郭が見えにくい材料 である。

左右対称の部材では、方向を誤認する可能性がある。

透明フィルムでは、キャリアとの境界を検出できない場合がある。

金属箔では、照明の反射によって輪郭が不安定になることがある。

そのため必要に応じて、

・非対称な切り欠き

・認識用の穴

・アライメントマーク

・方向判別用の形状

・カメラが認識しやすい余白  を設けることがある。

これらは熱機能そのものではない。

しかし自動機が正しい向きと位置を認識できなければ、熱機能も正しい場所へ置かれない。

■自動化用の穴が、熱経路を壊すこともある

位置認識や搬送のために穴や切り欠きを追加すれば、自動化はしやすくなる。

しかし熱対策部材では、穴を設けることで、

・有効な放熱面積が減る

・熱の流れる断面が細くなる

・応力が集中する

・絶縁距離が短くなる

・強度が低下する 可能性がある。

したがって自動化用の形状は、設備にとって便利な位置

だけで決めるのではなく、熱・絶縁・強度への影響が小さい位置 へ設ける必要がある。

自動化しやすくするための設計が、本来の熱性能を損なってはならない。

■細い形状は、熱と自動化の両方で弱点になる

周辺部品を避けるために、熱対策部材が細長い形状になることがある。

しかし細い部分は、

・熱が通れる断面積が小さい

・剥離時に伸びやすい

・吸着時に垂れやすい

・搬送中にねじれやすい

・貼り付け時にシワが入りやすい

・打ち抜きやカス取りで変形しやすい という問題を持つ。

つまり細い橋状部分は、 熱のボトルネックであると同時に、

自動供給のボトルネックにもなる。

可能であれば、幅を広げる

・曲線でつなぐ

・一時的な支持部を追加する

・キャリア上で保持する

・部材を分割する

といった方法を検討する必要がある。

■まとめ

リールへ巻き取れば、部材は曲げ続けられる。
輸送されれば、振動と温度変化を受け続ける。
剥離されれば、引っ張られる。
吸着されれば、ノズルの力を受ける。
貼り付けられれば、圧着圧力がかかる。

 

加工機から出てきた瞬間に正しくても、
この工程を通過する間に、部材は少しずつ変わっていく。

 

自動化とは、機械が同じ動作を繰り返すことではない。
部材が毎回、同じ形・同じ位置で工程を通過することである。
そのためには、加工精度だけでなく、工程全体を見た形状設計が必要になる。

 

では最後に、量産設計で確認すべき具体的な項目と、各産業での注意点を整理する。

 

次回(6-7-3)では、設計チェックリスト・OTISの役割・まとめを扱う。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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