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7. 次世代冷却技術編 冷やすから、熱を制御する時代へ
7-6. 3D実装向け熱対策(前編) ― 半導体を積み上げるほど、「熱を外へ出す道」が難しくなる ―

材料・加工技術

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7. 次世代冷却技術編 冷やすから、熱を制御する時代へ<br>7-6. 3D実装向け熱対策(前編) ― 半導体を積み上げるほど、「熱を外へ出す道」が難しくなる ―

半導体の性能を高める方法は、微細化だけではない。
複数のチップ。
メモリ。
演算回路。
インターポーザー。
これらを近接させ、さらに垂直方向へ積み上げる。
いわゆる、2.5D実装・3D実装である。

チップ同士の距離を短くできれば、高速なデータ通信が可能になる。
配線を短くできる。
実装面積も小さくできる。
AI半導体をはじめとする高性能半導体にとって、非常に重要な技術である。
しかし、半導体を積み上げるほど難しくなる問題がある。
それが、熱である。
従来の半導体では、熱源の上にTIMやヒートシンクを配置し、比較的単純な方向へ熱を逃がすことができた。
しかし3D実装では、
熱源の上に、別の熱源が存在する。
内部で発生した熱は、外へ出るまでに複数の材料や界面を通らなければならない。
つまり3D実装とは、
半導体を高密度化する技術であると同時に、熱の出口を狭くする技術でもある。

■なぜ半導体を積み上げるのか

半導体の性能向上は、長い間、トランジスタを小さくすることで実現されてきた。

しかし微細化だけで性能を伸ばし続けることは、技術的にも経済的にも難しくなっている。

そこで、

●CPU

●GPU

●メモリ

●I/O

●通信回路

などを一つの巨大なチップへすべて作るのではなく、

複数のチップを組み合わせて一つのシステムとして動かす

という方向が重要になっている。

チップレット。

2.5D実装。

3D実装。

HBM。

これらは、その代表例である。

■2.5D実装とは何か

2.5D実装では、複数のチップを、

インターポーザーなどの上に近接配置する。

例えば、

GPU + HBM + HBM + HBM

を同じ基板上へ高密度に配置する。

チップを完全に上下へ積層するわけではないが、従来の基板実装よりはるかに近い距離で接続できる。

配線距離が短くなるため、高速通信に有利である。

一方で、狭い面積に複数の高発熱部品が集中する。

そのためパッケージ全体の熱密度が高くなる。

■3D実装とは何か

3D実装では、チップを垂直方向へ積み重ねる。

イメージとしては、

チップ
 ↓
チップ
 ↓
チップ
 ↓
基板

という構造である。

上下のチップをTSVなどによって電気的に接続する。

これによって配線距離を大幅に短くできる。

しかし熱の観点では、

上に積まれたチップが、下のチップの熱の出口を塞ぐ

可能性がある。

ここが3D実装特有の難しさである。

■HBMはすでに「積み上げる時代」を象徴している

AI半導体では、

HBM の重要性が急速に高まっている。

HBMは複数のDRAMを垂直方向へ積層し、高速・大容量のデータ転送を可能にするメモリである。

GPUとHBMを近接配置することで、大量のAI演算に必要なデータを高速に供給できる。

しかし、

GPUが発熱する。

HBMも発熱する。

それらが非常に近い場所に配置される。

つまりAI半導体では、

演算性能を高めるための高密度化そのものが、熱問題を難しくしている。

■従来の熱対策は「上へ逃がす」が基本だった

単純な半導体パッケージでは、

チップ
 ↓
TIM
 ↓
ヒートスプレッダー
 ↓
TIM
 ↓
ヒートシンク

というように、

Z方向

へ熱を逃がすことができる。

発熱体の上に冷却部材を配置すればよい。

 

しかし3D実装では、

上層チップ
 ↓
中層チップ
 ↓
下層チップ

と積み上がる。

内部のチップから見れば、

上にも材料がある。

下にも材料がある。

熱が外へ出るまでの距離と界面が増える。

■内部のチップほど冷やしにくい

例えば3枚のチップを積層したとする。

最上層のチップは、比較的冷却部材へ近い。

しかし中間層のチップは、

上層チップ。

接合層。

TIM。

などを通って熱を外へ出す必要がある。

下層のチップではさらに複雑になる。

つまり、

同じ発熱量でも、積層位置によって冷却条件が違う。

3D実装では、「パッケージ温度」だけを見るのでは不十分になる。

内部に、見えないホットスポットができる可能性がある。

 

「平均温度が低い」だけでは安心できない

パッケージ全体の平均温度が低くても、内部の一部分だけ高温になっている場合がある。

例えば、

全体平均 70℃

でも、

内部の一部分だけ 100℃

ということがあり得る。

この局所的な高温が、

●性能低下

●材料劣化

●接合部劣化

●寿命低下

につながる可能性がある。

つまり3D実装では、何度なのかだけでなく、

どこが何度なのかが重要になる。

■熱は最短距離だけを通るわけではない

熱は、熱抵抗の小さい経路へ流れる。

そのため、

上方向。

下方向。

横方向。

複数の方向へ熱が移動する。

従来は、Z方向へ熱を抜くことが中心だった。

しかし高密度化すると、XY方向へ熱を広げることも重要になる。

ここで、

●グラファイト

●銅

●ベイパーチャンバー

●熱拡散層 などが重要になる。

■「上へ逃がす」と「横へ広げる」を組み合わせる

3D実装の熱対策では、一方向だけで熱を処理するのではなく、

Z方向へ熱を逃がすと、XY方向へ熱を広げるを組み合わせる必要がある。

例えば、

発熱チップ
 ↓
薄型TIM
 ↓
熱拡散層

とし、

熱拡散層から、

→ 横方向へ熱を広げる
→ 筐体や冷却部材へ熱を導く

という考え方がある。

つまり、

熱を最短距離で上へ出すだけではなく、空いている場所へ逃がすという設計が必要になる。

■3D実装ではTIMがさらに重要になる

TIMは、二つの固体の間に存在する微細な隙間を埋める材料である。

3D実装では、界面の数が増える。

例えば、

チップ
 ↓
TIM
 ↓
ヒートスプレッダー
 ↓
TIM
 ↓
冷却部材

となれば、TIMが複数存在する。

それぞれのTIMがわずかな熱抵抗を持つ。

一つ一つは小さくても、

熱抵抗は積み重なる。

そのため、

●TIM材料

●TIM厚み

●接触面積

●圧力

●平面度 が重要になる。

■TIMは薄いほど有利。しかし薄すぎても難しい

一般に、同じ材料ならTIMは薄い方が熱抵抗を小さくしやすい。

しかし薄くすると、

●部品の反りを吸収できない

●表面粗さを埋められない

●段差へ追従できない

●塗布・貼付ばらつきの影響が大きくなる 可能性がある。

つまり、熱的には薄くしたい。

実装的には厚みが欲しい。という矛盾がある。

3D実装では、この数十μm単位の判断が重要になる。

■0.1mmが大きな意味を持つ

一般的な機械部品であれば、0.1mmは非常に小さな差に見える。

しかし薄膜熱設計では違う。

TIMが本来0.1mmであるべき場所に、

浮き。

反り。

異物。

位置ズレ。

によってさらに0.1mmの隙間が生まれれば、

熱経路の状態が大きく変わる可能性がある。

これは6-3で扱った、

「0.1mmの浮きが熱性能を壊す理由」

そのものである。

3D実装が進むほど、

μm〜0.1mmの加工精度が、数十mmの冷却部品の性能を左右する。

■チップの反りも無視できない

半導体パッケージは完全な平面ではない。

材料が異なれば、熱膨張係数も異なる。

シリコン。

銅。

樹脂。

基板。

TIM。

これらが温度変化すると、それぞれ異なる割合で膨張・収縮する。

その結果、

パッケージが反る。

反りが発生すると、

中央ではTIMが薄い。

端部ではTIMが厚い。

あるいはその逆になる。

すると熱抵抗も場所によって変わる。

■熱膨張差は接合部にも影響する

3D実装では、多数の微細接合部が存在する。

温度が上がる。

冷える。

再び上がる。

この熱サイクルを繰り返すと、異種材料の膨張差によって応力が発生する。

つまり熱問題は、

温度を下げる問題

だけではない。

温度変化による機械的ストレスを抑える問題

でもある。

ここでも、

●材料選定

●厚み

●柔軟性

●接着性 が重要になる。

■絶縁と熱伝導を同時に成立させる

半導体では電気を流す部分と、絶対に流してはいけない部分が近接している。

そのため、

熱は通したい。

電気は通したくない。

という要求が発生する。

そこで、

●セラミック系熱伝導材料

●絶縁TIM

●絶縁フィルム

●熱伝導性粘着材 などが使われる。

しかし絶縁層を増やせば、その層が熱抵抗になる可能性がある。

薄くすれば熱には有利。

しかし絶縁信頼性には余裕がなくなる。

ここでも、熱性能と絶縁性能のトレードオフが存在する。

■絶縁材の「端部」が重要になる

絶縁材料は、中央部分だけ正常ならよいわけではない。

端部に、

●バリ

●クラック

●めくれ

●位置ズレ

があると、電気的な安全性へ影響する可能性がある。

特に薄膜化すると、加工端部の状態が相対的に大きな意味を持つ。

つまり、材料の絶縁性能だけでなく、

加工後の絶縁性能を見る必要がある。

■熱拡散材料としてのグラファイト

グラファイトは、面方向への高い熱伝導性を持つ。

そのため、

局所的な熱を横方向へ広げる

用途と相性がよい。

例えば、

チップ
 ↓
TIM
 ↓
グラファイト

として、チップより大きなグラファイトへ熱を広げる。

そこから、

●金属フレーム

●筐体

●ヒートシンク

●冷却プレート などへ熱を渡す。

3D実装では、

熱源直上だけではなく、周囲の空間も熱経路として使う発想が重要になる。

■ただしグラファイトにも弱点がある

グラファイトは優れた熱拡散材料だが、

●面方向と厚み方向で性能が異なる

●薄い材料は扱いが難しい

●端部から粉が出る可能性がある

●電気を通す

●機械的に傷つきやすい場合がある などの特徴がある。

そのため実際には、

●絶縁フィルム

●保護フィルム

●粘着材 などと組み合わせる場合がある。

すると今度は、積層構造が重要になる。

■金属箔で熱を横へ逃がすという考え方

銅箔やアルミ箔も、熱を広げる材料として利用できる。

特に銅は高い熱伝導性を持つ。

例えば、

発熱体
 ↓
TIM
 ↓
銅箔
→→→ 筐体側へ熱を運ぶ

という構造が考えられる。

 

金属箔は、

●薄い

●曲げられる

●形状加工できる

●電気も流す という特徴を持つ。

そのため熱拡散と電気機能を組み合わせられる場合もある。

一方で導電性があるため、絶縁設計が必要になる。

■熱を逃がした先に何があるか

グラファイトや銅箔で横方向へ熱を広げても、

その先に熱を受け取る場所がなければ意味がない。

例えば、

チップ
 ↓
TIM
 ↓
グラファイト
→→→ 筐体

とするなら、

グラファイトと筐体の接触状態も重要になる。

ここが浮いていれば、

熱を横へ運んだのに、最後に熱が止まる。

つまり3D実装では、

熱源から最終排熱先まで、連続した熱経路を作ることが必要になる。

■ベイパーチャンバーとの組み合わせ

発熱密度がさらに高くなる場合、グラファイトや金属板だけではなく、ベイパーチャンバーを組み合わせることもできる。

例えば、

3Dパッケージ
 ↓
TIM
 ↓
ベイパーチャンバー
 ↓
ヒートシンク

という構造である。

ベイパーチャンバーで局所的な熱を広げ、その後ヒートシンクへ渡す。

あるいは液冷と組み合わせる。

重要なのは、どの冷却技術を使うかではなく、

どの場所で熱を受け、どこへ運び、どこで捨てるかである。

■液冷との組み合わせ

高発熱AI半導体では、3D実装と液冷の組み合わせが重要になる可能性が高い。

例えば、

3Dパッケージ
 ↓
TIM
 ↓
コールドプレート
 ↓
冷却液

という構造である。

液冷は大量の熱を運べる。

しかし、液冷だから界面問題がなくなるわけではない。

TIMが浮いていれば、

コールドプレートまで熱が届かない。

つまり高度な冷却技術になるほど、

冷却装置の性能と、界面の品質の両方が必要になる。

まとめ

ここまで見てきたように、3D実装が難しいのは、電気的には近づけたいチップ同士を、熱的には離したいという矛盾があるからである。

チップを積み上げるほど、熱源は密集し、界面は増え、内部の熱は外へ出にくくなる。

 

従来のようにZ方向へ熱を逃がすだけでは足りない。

XY方向へ熱を広げるグラファイトや金属箔。

局所的な熱を面で受け止めるベイパーチャンバー。

大量の熱を運べる液冷。

これらを組み合わせることで、ようやく熱源から排熱先までの経路が成立する。

 

しかし、どの方法を選んでも、TIMの厚みや接触圧力、反りといった界面の状態が悪ければ、熱はその手前で止まってしまう。

つまり3D実装の熱対策は、優れた冷却技術を選ぶことだけでは完成しない。

 

後編では、こうした熱設計を、実際にどう量産の中で実現していくのか。
薄膜化がもたらす加工上の課題、自動化や検査の難しさ、そしてOTISがこの領域でどのような役割を担っているのかを見ていく。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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