TECH COLUMN 技術コラム

3. 半導体デバイスの基本構造と動作原理
3-13. 微細化限界と新しい動作原理

材料・加工技術

公開日:

【1】はじめに

半導体は40年以上、「微細化(スケーリング)=性能向上」
というムーアの法則に従って進化してきました。

 

しかし、3nm/2nm世代になると、物理限界量子効果が壁となり、従来の延長線では性能向上が難しくなっています。

 

ここでは、

・なぜ微細化が限界に近づくのか
・どんな新しい動作原理が必要なのか

を整理して学びます。

【2】微細化の歴史(簡単まとめ)

 ● 90nm → 65nm → 45nm → 32nm → 22nm → 14nm → 10nm → 7nm → 5nm → 3nm → 2nm

 ● MOSFETは平面構造からFinFETへ(22nm〜)

 ● さらにGAA(Gate-All-Around)へ(2nm〜)

微細化は「論理性能UP・低消費電力化」をもたらしたが、今は次の急ブレーキに直面。

【3】微細化の限界となる主要課題

【3-1】短チャネル効果(Short Channel Effects)

ゲートが短すぎて、以下の問題が発生する:

 ● ドレインの電界がソース側に干渉

 ● オフ状態でも電流が漏れる

 ● 閾値電圧(Vth)が安定しない

技術的にMOSFETが“制御しづらくなる”。

 

【3-2】リーク電流の急増

ゲート絶縁膜が薄くなると、
電子がトンネルして絶縁膜を通過し、漏れ電流が増加。

→ スタンバイ電力が跳ね上がる
→ スマホやサーバーの電力問題悪化

 

【3-3】量子効果(Quantum Effects)の顕在化

2nm以下のスケールでは、
電子は粒子ではなくとして振る舞ってしまう。

 ● トンネル電流

 ● 量子ゆらぎ

 ● 有効質量の変化

 ● エネルギーバンド構造変化

従来の「古典物理ベースのMOSFET理論」が使えなくなる。

 

【3-4】配線抵抗・RC遅延の増加

MOSFET本体は小さくなっても、
配線(メタル層)の抵抗と容量が限界に。

 ● 信号遅延(RC delay)がボトルネック

 ● 特にAIチップはメモリとの通信量が増え、顕著に影響

 

【3-5】熱問題(発熱と冷却)

微細化=高密度化 → 熱の逃げ場がない。
AIサーバーでは急激に問題化。

【4】微細化の限界を突破する「新しいデバイス構造」

微細化だけでは限界のため、構造の工夫が必要。

 

【4-1】FinFET

 ● フィン状のチャネル

 ● ゲートが3方向から制御
   → 短チャネル効果を抑制

22nm以降の主流。

 

【4-2】GAA(Gate-All-Around)ナノシートFET

 ● ゲートがチャネルを360°包む

 ● 2nm世代の主流構造

 ● チャネル幅を調整可能で柔軟性が高い

短チャネル効果を最も抑える構造。

 

【4-3】CFET(Complementary FET)

 ● NchとPchを上下に積層

 ● 配線距離を劇的に短縮

将来の3Dロジックの本命構造。

【5】微細化に頼らない新しい動作原理

今後の半導体は「微細化だけでは成長できない」。
そこで、ムーアの法則後の世界を支える新原理が研究されている。

 

【5-1】TFET(トンネルFET)

 ● 電子がトンネル効果で流れる

 ● 超低電圧(0.3V級)で動作可能

 ● 省電力チップの本命候補
   弱点:オン電流が小さい

 

【5-2】スピントロニクスデバイス

電子の「電荷」ではなく「スピン」を利用
例:

 ● MRAM(不揮発性メモリとして実用化)

 ● Spin-FET(研究段階)

メリット:

 ● 高速

 ● 不揮発

 ● 高耐久

AIやサーバー向けに期待。

 

【5-3】フェロエレクトリックFET(FeFET)

 ● 強誘電体をゲート絶縁膜に採用

 ● 電荷を使わずに状態を保持できる
   → 超低電力・高速・不揮発
   → 次世代メモリ&ロジック融合技術

 

【5-4】光半導体(Photonic Devices)

電子ではなく光で計算する・伝送する
例:

 ● シリコンフォトニクス

 ● 光インターコネクト
   メリット:

 ● 超高速(光速)

 ● 低損失

 ● 発熱が少ない

AIサーバーの配線限界を突破する有望技術。

 

【5-5】量子デバイス(Quantum Devices)

 ● 電子一つを制御する世界

 ● 量子ビット(qubit)を実現

 ● 超並列演算が可能
   用途:暗号、材料探索、最適化計算
   まだ大規模実用には課題が多い。

【6】3D化・異種統合も限界突破の鍵

微細化が遅くなると、「3D積層」や「Chiplet(チップレット)」で性能を上げる方向へ。

■ TSV積層(Through-Silicon-Via)
■ Chiplet(AMD、Intel)
■ HBM(高帯域メモリ)
■ CoWoS(TSMC)
■ SoIC(TSMCの3Dロジック)

これは「ムーアの法則」ではなく、システムのムーアの法則と呼ばれる方向性。

【7】まとめ

微細化は2nm世代に突入し、ついに物理限界が現実化。
この限界を突破するために、業界は次の方向に進んでいる:

1.構造の革新(FinFET → GAA → CFET)

2.新動作原理デバイス(TFET、スピントロニクス、FeFET)

3.光技術の導入(シリコンフォトニクス)

4.3D集積・チップレット統合

5.量子デバイスへの挑戦

【理解チェック】

1.微細化が限界に近づいている主な理由を2つ挙げてください。

2.2nm世代で採用される「GAA構造」のメリットは?

3.微細化ではないアプローチとして挙げられる技術は?

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません。

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