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3. 熱対策材料編
3-6. ゲル・グリス・相変化材料 〜熱対策材料は、固いほど良いわけではない〜

材料・加工技術

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3. 熱対策材料編<br>3-6. ゲル・グリス・相変化材料 〜熱対策材料は、固いほど良いわけではない〜

ゲル、グリス、相変化材料は、熱対策で使われるTIMの代表的な材料である。
TIMとは、Thermal Interface Materialの略で、発熱部品と放熱部品の間に入れる熱伝導インターフェース材料である。
その中でも、ゲル、グリス、相変化材料は、隙間に入り込み、界面をなじませることに特徴がある。
熱対策では、発熱部品と放熱部品をただ重ねればよいわけではない。
表面には微細な凹凸があり、そこに空気層が残る。
その空気層が熱を止める。
だから、ゲル、グリス、相変化材料は、空気層を減らし、接触熱抵抗を下げる材料として重要になる。

■ゲル・グリス・相変化材料が必要になる理由

熱対策では、銅、アルミ、グラファイト、セラミックなどの高性能材料が注目される。

しかし、どれだけ高性能な材料でも、発熱部品と密着していなければ熱は流れない。

特に、

 ● GPU

 ● CPU

 ● パワー半導体

 ● EVバッテリー

 ● 電源部品

 ● 通信機器

 ● AIサーバー では、発熱部品と放熱部品の間に微細な隙間ができる。

この隙間を埋めるために、柔らかいTIMが使われる。

つまり、ゲル、グリス、相変化材料は、

熱を伝えるための材料であると同時に、熱が流れる接触状態を作る材料である。

■グリスとは何か

熱伝導グリスは、ペースト状のTIMである。

CPUやGPUの放熱でよく使われる材料で、発熱部品とヒートシンクの間に塗布して使う。

グリスの特徴は、

柔らかく、微細な隙間に入り込みやすいことである。

部品表面の凹凸に入り込み、空気層を減らす。

その結果、接触熱抵抗を下げやすい。

■グリスのメリット

グリスの主なメリットは以下である。

 ● 凹凸追従性が高い

 ● 接触熱抵抗を下げやすい

 ● 薄く塗布しやすい

 ● 高発熱部品に使いやすい

 ● 初期性能を出しやすい

特にGPUやCPUのように、強い圧力で部品を固定できる用途では、グリスが有効になる場合がある。

■グリスの注意点

一方で、グリスには課題もある。

 ● 塗布量の管理が難しい

 ● はみ出しが起きる

 ● ポンプアウトが起きることがある

 ● 経年で乾燥・硬化する場合がある

 ● 作業ばらつきが出やすい

 ● 自動化工程で管理が難しい場合がある

特に量産では、

どれだけ塗るか

どこに塗るか

均一に塗れているかが重要になる。

グリスは高性能だが、工程管理が難しい材料でもある。

■ポンプアウトとは何か

グリスでよく問題になるのが、ポンプアウトである。

ポンプアウトとは、温度変化や振動、熱膨張差によって、グリスが界面から押し出される現象である。

初期状態ではよく冷えていても、長期間使用するとグリスが移動し、接触状態が悪化することがある。

すると熱抵抗が増え、温度が上がる。

つまりグリスでは、初期性能だけでなく、長期信頼性が重要になる。

■ゲルとは何か

熱伝導ゲルは、柔らかく変形しやすいTIMである。

グリスよりも形状保持性があり、シートよりも柔らかい中間的な材料として使われることがある。

ゲルは、部品間の段差や隙間を埋める用途に向いている。

特に、

 ● 電源部品

 ● 車載機器

 ● EV電池周辺

 ● 通信機器

 ● AIサーバー内部などで使われることがある。

■ゲルのメリット

ゲルの主なメリットは以下である。

 ● 段差吸収性が高い

 ● 柔らかく追従しやすい

 ● 圧力を分散しやすい

 ● 隙間を埋めやすい

 ● 部品へのストレスを抑えやすい

硬い材料では密着しにくい凹凸や段差がある場合、ゲルは有効な選択肢になる。

■ゲルの注意点

一方で、ゲルにも課題がある。

 ● 厚みが大きいと熱抵抗が増える

 ● 形状保持性に注意が必要

 ● 取り扱いが難しい場合がある

 ● はみ出しや汚染のリスクがある

 ● 自動機での供給が難しいことがある

 ● 長期圧縮で特性が変わる場合がある

ゲルは柔らかいから良い、という単純な材料ではない。

柔らかさと熱抵抗、作業性、長期安定性のバランスが重要になる。

■相変化材料とは何か

相変化材料は、温度によって状態が変化するTIMである。

英語ではPCM、Phase Change Materialと呼ばれる。

一定温度以上になると柔らかくなり、発熱部品と放熱部品の間になじむ。

冷えている状態では固体に近く、加熱されると軟化して界面を埋める。

つまり相変化材料は、

使う温度でなじむTIMである。

■相変化材料のメリット

相変化材料の主なメリットは以下である。

 ● 初期取り扱いがしやすい

 ● 加熱時に界面へなじみやすい

 ● グリスより塗布管理しやすい場合がある

 ● シート状に加工できる場合がある

 ● 接触熱抵抗を下げやすい

特に、組立時の作業性と使用時の密着性を両立したい場合に検討される。

■相変化材料の注意点

相変化材料にも注意点がある。

 ● 相変化温度の設定が重要

 ● 使用温度域に合わないと性能が出にくい

 ● 繰り返し熱履歴で特性が変わる場合がある

 ● はみ出しや移動が起きることがある

 ● 保管条件に注意が必要な場合がある

つまり相変化材料では、

どの温度で柔らかくなるか

どの温度範囲で使うか が重要になる。

■ゲル・グリス・相変化材料の違い

3つの材料は、どれも界面をなじませる材料である。

しかし特徴は異なる。

グリスは、微細な凹凸に入り込みやすい。

ゲルは、段差や隙間を吸収しやすい。

相変化材料は、使用温度で柔らかくなり界面になじむ。

つまり、

グリスは塗布性

ゲルは追従性

相変化材料は温度応答性 に特徴がある。

用途によって使い分ける必要がある。

■熱伝導率だけでは比較できない

ゲル、グリス、相変化材料を比較するとき、熱伝導率だけを見ると判断を誤ることがある。

例えば、熱伝導率が高くても、

 ● 厚みが厚い

 ● 密着しない

 ● 気泡が入る

 ● 経年で劣化する

 ● はみ出す

 ● 自動化に向かない 場合、実際の性能は出ない。

逆に、熱伝導率が少し低くても、よく密着し、安定して薄く使える材料の方が冷えることもある。

つまり重要なのは、

カタログスペックではなく、実装後の熱抵抗である。

■AIサーバーでの用途

AIサーバーでは、GPU、CPU、メモリ、電源部品などが高発熱化している。

そのため、発熱部品と冷却プレートの間の界面管理が非常に重要になる。

ゲル、グリス、相変化材料は、

 ● GPUと冷却部材の密着

 ● 電源部品周辺の段差吸収

 ● 高密度部品間の熱経路形成

 ● 液冷プレートとの界面成立

などで使われる可能性がある。

AIサーバーでは連続稼働が前提になるため、初期性能だけでなく、長期信頼性も重要である。

■EV・ESSでの用途

EVやESSでは、バッテリーセル、冷却板、筐体、電源部品の間で熱を制御する必要がある。

ゲルやギャップフィラーは、部品間の隙間を埋め、熱を冷却部材へ逃がす用途で使われる。

ただしEV・ESSでは、

 ● 振動

 ● 熱履歴

 ● 圧縮

 ● 長期信頼性

 ● 難燃性

 ● 絶縁性 も重要になる。

つまりEV・ESSでは、熱性能だけでなく、安全性と耐久性も同時に考える必要がある。

■スマートフォン・ウェアラブルでの用途

スマートフォンやウェアラブル機器では、スペースが限られている。

そのため、薄く、軽く、狭い場所で使えるTIMが求められる。

グリスよりもシート状や相変化材料が扱いやすい場合もある。

またウェアラブル機器では、人に近い場所で使うため、

表面温度

快適性

長時間使用 も重要になる。

■研究者視点 : 柔らかいTIMは界面制御材料である

研究開発では、ゲル、グリス、相変化材料に対して以下の性能が求められる。

 ● 低熱抵抗

 ● 高熱伝導

 ● 柔軟性

 ● 圧縮追従性

 ● 長期信頼性

 ● 耐熱性

 ● 難燃性

 ● 低アウトガス性

 ● 電気絶縁性

 ● ポンプアウト抑制

これらの材料は、単なる熱伝導材料ではない。

本質的には、界面を制御する材料である。

■現場視点 : 柔らかい材料ほど工程管理が難しい

現場では、柔らかいTIMほど扱いが難しくなることがある。

例えば、

 ● 変形する

 ● 伸びる

 ● 破れる

 ● 付着する

 ● はみ出す

 ● 位置がずれる

 ● 自動機で搬送しにくい という問題が起きる。

つまり柔らかいTIMでは、

材料性能だけでなく、

工程でどう扱うかが非常に重要になる。

■量産で起きやすい問題

ゲル、グリス、相変化材料の量産では、以下のような問題が起きることがある。

 ● 塗布量のばらつき

 ● 気泡混入

 ● 位置ズレ

 ● はみ出し

 ● 厚みムラ

 ● 搬送時の変形

 ● 剥離紙との相性不良

 ● 保管時の形状変化

 ● 熱履歴による特性変化

 ● 自動機供給時の不安定

これらは、熱性能だけでなく、組立性、歩留まり、信頼性にも影響する。

つまり、柔らかいTIMほど、量産工程への落とし込みが重要になる。

■OTIS視点

OTISはゲル、グリス、相変化材料そのものを開発する材料メーカーではない。

しかし、これらの材料を量産工程で使える形にする領域では貢献できる可能性がある。

OTIS視点で重要なのは、

 ● シート状材料を狙った形状に加工する

 ● 相変化材料を打ち抜き加工する

 ● 粘着材や絶縁材と貼り合わせる

 ● 剥離紙構成を設計する

 ● 自動化工程で供給しやすい形にする

 ● リール供給に対応する

 ● 量産時のばらつきを抑える

 ● それぞれの代替品を形状加工する ことである。

柔らかいTIMは、材料性能だけでは成立しない。

どう扱える形にするかが重要になる。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 熱伝導シート加工

 ● 相変化材料の加工検討

 ● ゲルシート系材料の加工検討

 ● 高精度打ち抜き

 ● 高精度ラミネート

 ● 粘着材との貼り合わせ

 ● 絶縁材との積層

 ● 異形状加工

 ● リール供給

 ● 自動化工程向け供給形態設計

 ● 顧客の歩留まり改善

などを通じて、柔らかいTIMを量産で使いやすい状態へ近づけることに貢献できる可能性がある。

特にAIサーバー、EV、ESS、スマートフォン、ウェアラブル機器では、材料の性能だけでなく、実装時の安定性が重要になる。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● ゲル材料そのものの開発

 ● グリス配合設計

 ● 相変化材料の配合設計

 ● フィラー開発

 ● 樹脂設計

 ● 熱シミュレーション専業解析

 ● 冷却装置設計 を専門とする会社ではない。

しかし、柔らかいTIMを量産工程で使える形にする

という領域では、重要な役割を担える可能性がある。

■この技術が重要になる産業

★★★★★ AIサーバー

★★★★★ GPU・半導体

★★★★★ EV・電池

★★★★★ ESS・蓄電システム

★★★★☆ スマートフォン

★★★★☆ ウェアラブル機器

★★★★☆ 通信機器

■まとめ

ゲル・グリス・相変化材料は、“界面になじむ”ための材料である

ゲル、グリス、相変化材料は、熱対策において非常に重要なTIMである。

これらの本質は、熱伝導率が高いことだけではない。

本質は、発熱部品と放熱部品の間になじみ、空気層を減らし、接触熱抵抗を下げることである。

グリスは微細な隙間に入り込みやすい。

ゲルは段差や公差に追従しやすい。

相変化材料は使用温度で柔らかくなり、界面になじみやすい。

しかし、柔らかい材料ほど、量産工程では扱いが難しくなる。

だからこそ、材料選定だけでなく、

どの形状で使うか

どう貼るか

どう供給するか

長期的に接触を維持できるかまで考える必要がある。

熱対策材料は、材料として優れているだけでは足りない。

量産工程で正しく使える形になって、初めて熱対策として機能する。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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