TECH COLUMN 技術コラム

1. 基礎編 熱とは何か
1-5. 接触熱抵抗とは何か 〜未来産業を止めるのは、“材料性能”ではなく“わずかな隙間”かもしれない〜

材料・加工技術

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1. 基礎編 熱とは何か<br>1-5. 接触熱抵抗とは何か 〜未来産業を止めるのは、“材料性能”ではなく“わずかな隙間”かもしれない〜

前回、熱抵抗とは、熱の流れにくさであることを整理した。

そして、未来産業では、
• 小型化
• 高密度化
• 積層化によって、
熱抵抗問題が急激に重要になることも見えてきた。

では今回、その中でも特に重要な、
接触熱抵抗について考えてみたい。
実はこれは、OTISの世界そのものと言っても良いくらい重要なテーマだ。

■なぜ接触が問題になるのか

例えば、

 ● CPU

 ● 放熱材

 ● ヒートシンクを、ぴったり接触させたつもりでも、

実際には、完全には接触していない。

 

これが、熱問題の本質の1つだ。

■金属表面は凸凹している

一見、平らに見える金属でも、顕微鏡レベルでは、

微細な凸凹が存在する。

つまり実際には、点で接触している状態に近い。

■接触していない場所には空気がある

ここで問題なのが、空気層である。

前回も触れた通り、空気は熱を非常に伝えにくい。

つまり、わずかな隙間だけでも、熱の流れが悪化する。

これが、接触熱抵抗である。

■材料は良いのに冷えないが起きる理由

現場でよくあるのが、高熱伝導材料を使ったのに冷えないという現象だ。

これは多くの場合、接触熱抵抗が原因になっている。

つまり、材料性能より、どう接触しているかの方が重要になるケースがある。

■接触熱抵抗は最後の敵

ここが非常に重要だ。

例えば、

CPU

 ↓

TIM

 ↓

ヒートシンク という熱経路があったとする。

材料自体は高性能でも、

 ● 浮き

 ● 圧力不足

 ● 段差

 ● 表面粗さ などによって、

接触部分で熱が止まることがある。

つまり、最後の接触が、全体性能を決めてしまう。

■TIMは隙間埋めの技術

ここで重要なのが、TIM(Thermal Interface Material)である。

TIMとは簡単に言えば、隙間を埋める材料である。

例えば、

 ● グリス

 ● シート

 ● ゲル

 ● パテなど。

これらは、空気層を減らすために使われる。

つまりTIMとは、接触熱抵抗を減らす技術とも言える。

■しかしTIMを入れても終わらない

ここが現場では重要だ。

TIMを入れても、

 ● 圧力不足

 ● 厚みムラ

 ● 気泡

 ● ズレ

 ● 経年変化 などによって、

接触熱抵抗は変化する。

つまり、TIMを使っただけでは足りない。

■AI時代は接触熱抵抗がさらに重要になる

AI時代では、

 ● 半導体高密度化

 ● 積層化

 ● 小型化 が進む。

すると、熱密度が急上昇する。

つまり、少しの隙間。

でも、大きな温度上昇につながる。

■数十μmが未来を止める

未来産業では、

 ● 数十μmの浮き

 ● 微細段差

 ● 圧力ムラだけでも、熱性能が変わる。

つまり未来では、数十μmが、

 ● AI性能

 ● EV寿命

 ● 半導体性能

 ● ロボット安定性 を左右する可能性がある。

■なぜ量産で難しくなるのか

試作では問題なくても、量産では崩れることがある。

理由は、

 ● 公差

 ● 組立ばらつき

 ● 圧力変動

 ● 材料変形

 ● 自動化誤差 など。

つまり接触熱抵抗は、量産すると急に難しくなる問題でもある。

■EVでは接触が安全性に直結する

EVでは、

 ● バッテリー

 ● 放熱板

 ● TIM

 ● 絶縁材 などが使われる。

ここで接触不良が起きると、

 ● 熱集中

 ● 劣化

 ● 熱暴走 につながる可能性がある。

つまり接触熱抵抗は、性能問題だけではなく、

安全問題でもある。

■人体装着機器では快適性まで変わる

ARグラスやウェアラブルでは、

 ● 顔接触

 ● 曲面

 ● 圧迫

 ● 発汗 なども関係する。

つまり人体装着型では、熱を逃がせるかだけではなく、

違和感なく接触できるかも重要になる。

■研究者視点 : 理論性能より界面が重要になる

現在研究されているのは、

 ● 次世代TIM

 ● ナノ構造

 ● 柔軟放熱材

 ● 表面制御

 ● 接触最適化 など。

つまり今後は、材料そのものだけではなく、

界面が極めて重要になる。

■現場視点 : 接触熱抵抗は見えない

実際の現場では、

 ● 浮き

 ● 気泡

 ● 圧力不足

 ● 微細ズレ

 ● 表面粗さなどが問題になる。

しかしこれらは、目で見えないことも多い。

つまり接触熱抵抗とは、見えない敵でもある。

最終製品化した場合、空気層が入っていても、気づけていないケースもあるかもしれない。

その場合、想定した熱対策は半減以下になっていると思われる。

■接触熱抵抗は工程で決まる

ここがOTIS的に最重要。

例えば、

 ● 打ち抜き精度

 ● 貼り合わせ精度

 ● 圧力条件

 ● 材料厚み

 ● 公差

 ● 自動化安定性などでも、接触熱抵抗は変わる。

つまり熱対策とは、材料性能だけではなく、

工程成立で決まる。

■OTIS視点で重要なこと

OTIS視点では、接触熱抵抗問題で重要なのは、

 ● 微細加工

 ● 高精度打ち抜き

 ● 高精度ラミネート

 ● 異種材料接触

 ● 圧力安定性

 ● 公差管理

 ● 自動化供給

 ● 量産安定性

 ● 剥離バランス など。

つまりOTISは、熱が流れる接触状態を量産で成立させることへ向き合っている。

■OTISでできること

OTISでは、

 ● 微細加工

 ● 高精度打ち抜き

 ● 高精度ラミネート

 ● 熱対策材料加工

 ● 異形状積層

 ● 薄膜加工

 ● リール供給 対応などを通じて、

接触熱抵抗を増やさない量産工程へ貢献できる可能性がある。

■OTISの専門外

一方でOTISは、

 ● 半導体回路設計

 ● GPU設計

 ● CFD専業解析

 ● 冷却装置設計を専門とする会社ではない。

しかし、接触熱抵抗を量産で成立させるという領域では、重要な役割を担える可能性がある。

■まとめ : 未来産業を止めるのは、わずかな隙間かもしれない

熱問題では、材料性能 だけでは足りない。

実際には、

 ● 浮き

 ● 空気層

 ● 圧力

 ● 接触状態によって、接触熱抵抗 が発生する。

そして未来産業では、

 ● 小型化

 ● 高密度化

 ● 積層化 によって、

数十μmの隙間 が、巨大な問題になる。

つまり未来では、熱の最後の接触条件 を、どれだけ成立できるかがますます重要になっていく。

 

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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