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10-4. 高精度ラミネート(前編) ― 材料を重ねるのではなく、機能を正しい位置に積み上げる技術 ―

材料・加工技術

公開日:
10-4. 高精度ラミネート(前編) ― 材料を重ねるのではなく、機能を正しい位置に積み上げる技術 ―

熱対策部材は、一枚の材料だけで成立するとは限らない。
TIM。
グラファイト。
絶縁フィルム。
銅箔。
アルミ箔。
粘着材。
保護フィルム。
シール材。
これらを組み合わせることで、
熱を伝える。
熱を広げる。
電気を止める。
固定する。
保護する。といった複数の機能を持たせる。
しかし材料を重ねれば、それで完成するわけではない。
位置がずれる。
気泡が入る。
シワができる。
反る。
厚みがばらつく。
粘着層がずれる。
こうした問題が起きれば、各材料が持つ性能を十分に発揮できない。
つまり高精度ラミネートとは、単に材料を貼り合わせる技術ではない。
複数の機能材料を、必要な位置・厚み・状態で一体化し、量産で再現する技術である。

目次

■なぜ熱対策でラミネートが重要なのか

■ラミネートすると「材料」が「部品」になる

■位置がずれれば機能がずれる

■熱対策では積層位置が熱経路を決める

■複数材料の位置公差は積み重なる

■基準をどこに置くかが重要になる

■フィルム同士は簡単には重ならない

■張力が位置精度へ影響する

■張力を一定にするだけでは足りない

■ローラー圧力も重要になる

■圧力分布が均一であることも重要

■ローラー硬度でも結果が変わる

■速度によって貼り合わせ状態が変わる

■量産では「貼れる速度」ではなく「安定して貼れる速度」が重要

■気泡はラミネートの代表的な課題

■気泡が発生する場所には理由がある

■貼り合わせ順序も重要になる

■部分的な開口やスリットで空気を逃がすこともある

■部分粘着も有効になる

■異種材料の熱膨張差が反りを作る

■常温で平らでも、高温で反ることがある

■非対称積層は反りやすい

■ラミネート時の残留応力もある

■高温ラミネートでは冷却工程も重要

■粘着材の厚みも位置精度へ影響する

■粘着材には応力緩和という役割もある

■強く貼ればよいわけではない

■接着界面が一つ増えるたびに熱経路も変わる

■「全部重ねる」より「必要な場所だけ重ねる」

■部分ラミネートはOTISとの接点が大きい

■多層化すると厚み公差が累積する

■ラミネート後にさらに打ち抜く場合もある

■前編のまとめ:ラミネートは、材料を重ねると同時に拘束する工程である

■なぜ熱対策でラミネートが重要なのか

熱対策では、一つの材料にすべての機能を持たせることは難しい。

例えばグラファイトは熱を広げる能力に優れる。

しかし導電性がある。

そこで絶縁フィルムを重ねる。

さらに製品へ固定するために粘着材を加える。

つまり、

グラファイト
 +
絶縁フィルム
 +
粘着材

という構成になる。

一枚ずつ別々に顧客が貼ることもできる。

しかし工程が増える。

位置ズレが増える。

貼付回数が増える。

そこで加工段階であらかじめ一体化する。

これがラミネートの大きな役割である。

■ラミネートすると「材料」が「部品」になる

グラファイト単体は材料である。

絶縁フィルム単体も材料である。

粘着材単体も材料である。

それらを必要な位置関係で一体化すると、

熱を広げる。

絶縁する。

貼り付ける。

という複数機能を持つ一つの部品になる。

つまりラミネートとは、異なる材料性能を、一つの部品性能へ変換する工程とも言える。

■位置がずれれば機能がずれる

例えば、

グラファイトの外周を絶縁フィルムで覆う。

という構造を考える。

絶縁フィルムが0.5mmずれる。

すると一方ではグラファイトが露出する。

反対側では絶縁フィルムが余る。

つまり位置ズレは単なる外観問題ではない。

絶縁機能そのものの位置ズレになる。

■熱対策では積層位置が熱経路を決める

例えばTIMの一部分だけにグラファイトを重ねる。

その位置がずれる。

すると発熱源からグラファイトへ熱が入りにくくなる。

あるいは意図しない場所へ熱を広げる。

つまりラミネート位置は、熱の入口と出口を決める設計寸法になる。

■複数材料の位置公差は積み重なる

材料Aを±0.2mmで貼る。

材料Bも±0.2mm。

材料Cも±0.2mm。

それぞれ単独では小さな誤差に見える。

しかし最終部材では、AとCの相対位置が大きくずれる可能性がある。

つまり高精度ラミネートでは、一層ごとの位置精度ではなく、

最終的な機能間位置精度を見る必要がある。

■基準をどこに置くかが重要になる

外形基準。

穴基準。

認識マーク基準。

キャリア基準。

どこを基準に各材料を合わせるかで、最終位置精度が変わる。

例えば顧客が重要視しているのが中央開口であれば、外形より中央開口基準の方が合理的な場合もある。

つまり高精度ラミネートでは、何を基準に積層するかを機能から逆算することが重要になる。

■フィルム同士は簡単には重ならない

硬い金属板を二枚重ねる。

比較的安定する。

しかし薄膜フィルムでは、

伸びる。

たわむ。

静電気で動く。

シワになる。

そのため、単純に位置を合わせても、ラミネート中に位置が変わることがある。

つまり薄膜ラミネートでは、合わせる技術と、合わせた状態を維持する技術の両方が必要になる。

■張力が位置精度へ影響する

ロール材料を搬送しながらラミネートする。

上側材料の張力が強い。

下側材料の張力が弱い。

すると、貼り合わせた後に一方が縮もうとする。

その結果、

反り。

位置ズレ。

シワ。

が発生する可能性がある。

つまりラミネートでは、張力バランスが形状品質になる。

■張力を一定にするだけでは足りない

材料Aと材料Bでは、

厚み。

弾性率。

伸び。

が違う。

同じ張力をかけても伸び量は同じではない。

そのため、

数値として同じ張力

ではなく、

材料ごとに適切な張力

を設定する必要がある。

■ローラー圧力も重要になる

ラミネートでは、ローラーやプレスで材料を圧着する。

圧力が弱すぎる。

接着不足。

気泡。

浮き。

が出る。

強すぎる。

柔らかい材料が潰れる。

粘着材がはみ出す。

厚みが変わる。

つまり必要なのは、最も強い圧力ではなく、必要な接触を安定して作れる圧力である。

■圧力分布が均一であることも重要

ローラー中央だけ圧力が高い。

端部が弱い。

すると、

中央はしっかり接着。

端部は浮く。

という状態になる。

大面積ラミネートでは特に影響が大きい。

つまり平均圧力だけでなく、面内の圧力均一性を見る必要がある。

■ローラー硬度でも結果が変わる

柔らかいローラー。

硬いローラー。

では材料への追従性が違う。

柔らかければ段差へ追従しやすい。

一方、局所的に材料を変形させる可能性もある。

硬ければ平面性は出しやすい。

しかし段差吸収は難しい。

つまりラミネートでは、設備仕様も材料構成に合わせる必要がある。

■速度によって貼り合わせ状態が変わる

ゆっくりラミネートする。

粘着材が表面へ追従する時間がある。

高速化する。

タクトは上がる。

しかし空気が抜けにくい。

粘着材が十分なじまない。

ということがある。

つまり、

試作速度。

量産速度。

では、同じ材料でも結果が変わる可能性がある。

■量産では「貼れる速度」ではなく「安定して貼れる速度」が重要

速度を上げれば生産性は上がる。

しかし、

気泡。

シワ。

位置ズレ。

が増えれば意味がない。

重要なのは最高速度ではない。

品質を維持できる速度範囲を作ることである。

■気泡はラミネートの代表的な課題

フィルム同士を貼り合わせると、内部に空気を閉じ込めることがある。

熱対策部材では、この気泡が熱抵抗になる可能性がある。

また絶縁用途では、局所的な構造不均一にもなる。

つまり気泡は、外観だけではなく、熱・絶縁・耐久性に関わる品質問題である。

■気泡が発生する場所には理由がある

中央に残る。

段差周辺に残る。

開口近くに残る。

これは偶然ではないことがある。

貼付方向。

圧着角度。

粘着材の流動性。

材料平面性。

によって空気が逃げにくい場所が生まれる。

つまり気泡対策では、空気がどこへ逃げるかを設計する必要がある。

■貼り合わせ順序も重要になる

大面積フィルムを全面同時に貼る。

空気が中央に残る。

端から順に貼る。

空気を外へ逃がしやすい。

つまり、

どの方向から。

どの順番で。ラミネートするかも品質へ影響する。

■部分的な開口やスリットで空気を逃がすこともある

全面粘着では空気が逃げにくい。

そこで、

開口。

微細スリット。

非粘着部。

を設ける。

これによって、貼付時の空気を逃がしやすくできる場合がある。

つまり微細加工とラミネートは別技術ではない。

加工形状によってラミネート性を改善することができる。

■部分粘着も有効になる

全面固定が不要な場合、

必要部分だけ粘着材を配置する。

外周だけ。

数点だけ。

という構造にする。

すると、

気泡低減。

熱抵抗低減。

剥離性改善。

ができる場合がある。

つまり高精度ラミネートでは、どこを貼るかまで設計対象になる。

■異種材料の熱膨張差が反りを作る

銅箔。

PET。

PI。

グラファイト。

粘着材。

それぞれ熱膨張率が違う。

これらを貼り合わせる。

温度が変化する。

各材料が異なる量だけ伸び縮みする。

しかし接着されているため自由に動けない。

その結果、積層体が反ることがある。

つまりラミネートは、材料を一体化すると同時に、材料同士を拘束する工程でもある。

■常温で平らでも、高温で反ることがある

加工直後。

平坦。

寸法も合格。

しかし80℃へ加熱する。

反る。

冷却すると戻る。

あるいは完全には戻らない。

こうしたことがある。

つまりラミネート品質は、加工直後だけでは判断できない。

使用温度での形状安定性まで考える必要がある。

■非対称積層は反りやすい

片面だけ金属箔。

反対側はフィルムのみ。

という積層では、上下構成が大きく違う。

そのため、熱膨張や残留応力のバランスが崩れやすい。

反りを抑えるため、

材料厚み。

粘着材。

積層順。を調整することがある。

つまり構造の対称性も設計要素になる。

■ラミネート時の残留応力もある

温度をかけながら貼る。

張力をかける。

圧力をかける。

その状態で固定する。

加工後に条件が解放される。

すると材料が元へ戻ろうとする。

この残留応力が、

反り。

剥離。

寸法変化。につながる場合がある。

つまり完成品の形状は、材料構成だけでなく加工履歴にも左右される。

■高温ラミネートでは冷却工程も重要

熱をかけてラミネートする。

材料が軟化する。

その状態で接着する。

その後冷える。

冷却中に材料が収縮する。

このとき拘束状態が不均一だと、反りや位置ズレにつながる。

つまり、加熱条件。だけでなく、冷却条件まで工程の一部になる。

■粘着材の厚みも位置精度へ影響する

柔らかい粘着層が厚い。

すると積層後に材料が少し動ける。

高温ではさらに柔らかくなる。

長期間荷重がかかる。

位置がずれる。

可能性がある。

つまり積層位置精度は、加工時だけでなく使用中にも変化する可能性がある。

■粘着材には応力緩和という役割もある

一方で、柔らかい粘着層は異種材料間の応力を吸収できることがある。

硬い接着層では応力が集中する。

柔らかい層なら動きを吸収する。

つまり粘着材は、固定材。だけではなく、応力緩和材としても機能する場合がある。

■強く貼ればよいわけではない

高接着力の粘着材を使う。

剥がれにくい。

しかし膨張差を逃がせず、材料本体へ応力がかかる。

逆に柔らかすぎる。

位置が動く。

つまりラミネートでは、

接着力。

柔軟性。

熱性能。のバランスを見る必要がある。

■接着界面が一つ増えるたびに熱経路も変わる

例えば、

発熱体
 ↓
粘着層
 ↓
グラファイト
 ↓
粘着層
 ↓
筐体

という構造。

粘着層が固定には必要でも、熱経路には抵抗になる場合がある。

つまり複合化によって、

工程は減る。

しかし熱抵抗は増える。

こともある。

だからラミネート構造では、各層が本当に必要かを考える必要がある。

■「全部重ねる」より「必要な場所だけ重ねる」

全面グラファイト。

全面絶縁。

全面粘着。

とすれば簡単に見える。

しかし、

厚い。

重い。

熱抵抗が増える。

コストが上がる。

そこで、

必要部分だけグラファイト。

高電圧部だけ絶縁。

外周だけ粘着。

とする。

つまり高精度ラミネートでは、機能を面内で作り分けることが重要になる。

■部分ラミネートはOTISとの接点が大きい

部分ラミネートでは、

材料Aをここだけ。

材料Bをこの位置だけ。

という高い位置精度が必要になる。

単にロール全面を貼り合わせるより難しい。

しかしその分、

材料削減。

薄型化。

軽量化。

熱抵抗低減。

につながる可能性がある。

つまり部分ラミネートは、加工会社の提案価値が出やすい領域である。

■多層化すると厚み公差が累積する

フィルム50μm。

粘着材25μm。

グラファイト40μm。

絶縁材25μm。

合計140μm。

しかし各材料には厚み公差がある。

4層、5層と増えれば、最終厚みのばらつきも大きくなる可能性がある。

この厚み差が、

接触圧力。

組立クリアランス。

熱抵抗。

へ影響する。

つまり積層部材では、総厚み管理が重要になる。

■ラミネート後にさらに打ち抜く場合もある

材料を先にラミネートする。

その後、完成外形を打ち抜く。

この方法なら各層の外形を揃えやすい場合がある。

一方、

粘着材。

金属箔。

グラファイト。

が一緒に重なるため、打ち抜き難易度が上がる場合もある。

つまり、先に打ち抜くか。先にラミネートするか。という工程順も重要になる。

■前編のまとめ:ラミネートは、材料を重ねると同時に拘束する工程である

熱対策部材は、一枚では成立しない。

グラファイトは熱を広げるが導電性がある。

だから絶縁フィルムを重ね、固定のために粘着材を加える。

 

しかし重ねれば完成ではない。

 

位置が0.5mmずれれば、片側でグラファイトが露出する。

それは外観不良ではなく、絶縁機能の位置ズレである。

 

張力バランスが崩れれば反り、シワが出る。

圧力が弱ければ気泡が残り、強ければ粘着材がはみ出す。

速度を上げれば空気が抜けきらない。

 

さらに、重ねた材料は自由に動けなくなる。

熱膨張率の違う材料を接着すれば、温度が変われば反る。

常温で平坦でも、80℃で反ることがある。

 

そして界面が一つ増えるたびに、熱抵抗も増える。

工程は減っても、熱経路は悪くなることがある。

 

各層の厚み公差も、積み重なれば接触圧力を変える。

 

つまり、

ラミネートは材料を一体化すると同時に、

材料同士を拘束し、新しい界面を作る工程である。

 

では、その積層をどの順番で作り、

どこまで一体化すべきなのか。

後編では、工程設計の側から見ていく。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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