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10. OTISでできること編 熱問題を量産成立させる会社として 10-1. 高精度打ち抜き加工(後編) ― 熱対策材料を「使える部品」に変える最初の技術 ―

材料・加工技術

公開日:
10. OTISでできること編 熱問題を量産成立させる会社として 10-1. 高精度打ち抜き加工(後編) ― 熱対策材料を「使える部品」に変える最初の技術 ―

前編では、加工精度がそのまま熱性能につながることを見てきた。
位置。穴。開口。バリ。薄膜の変形。張力。積層。公差の累積。

ではここで、一つの問いが出てくる。

すべてを±0.01mmにすればよいのか。

答えは、そうではない。

精度を厳しくすれば、金型費も検査工数も上がる。
加工速度は落ち、歩留まりも悪化する。
そして、その精度が機能に関係していなければ、
コストだけが増えて品質は変わらない。

重要なのは、
機能に必要なところへ、必要な精度を使うこと である。

さらに言えば、精度は設備だけで作るものでもない。
角をRにする。細い部分を少し太くする。キャリアを残す。
形状を少し変えるだけで、加工安定性が大きく変わることがある。

後編では、
精度に「意味」を持たせるという考え方。
形状設計と材料歩留まり、そしてコストの関係。
ハーフカットやカス上げといった、切る以外の加工技術。
異物とクリーン環境が熱・絶縁へつながる理由。
検査と工程保証の使い分け。

そして最も重要な点。
一個作れることと、何万個同じ精度で作り続けることは別である。

さらに、実際に起きた失敗事例を見ていく。
図面公差内なのに熱性能がばらついた例。
寸法は合格なのにバリが絶縁へ影響した例。
高精度を要求しすぎてコストが上がった例。
試作では切れたが量産で安定しなかった例。

目次

■必要以上の高精度も正解ではない

■精度には「意味」が必要である

■形状設計で加工安定性を上げることもできる

■加工しやすい形状は量産コストにも効く

■材料歩留まりも設計段階で決まる

■加工精度と材料歩留まりは競合することがある

■ハーフカットという加工方法

■ハーフカットでは深さ管理が重要になる

■不要部分をどう除去するかも加工技術である

■微小な抜きカスが品質問題になる

■加工後の洗浄では解決できない材料もある

■クリーン環境が必要になる理由

■検査できることも高精度加工の一部である

■全数検査と工程保証を使い分ける

■高精度加工の本当の難しさは「繰り返すこと」にある

■金型メンテナンスも品質設計である

■加工データを蓄積すると精度は強くなる

■失敗例:図面どおりに加工したが熱性能がばらつく

■失敗例:金属箔のバリが絶縁フィルムを傷つける

■失敗例:高精度を要求しすぎて量産コストが上がる

■失敗例:試作では切れたが量産では安定しない

■研究者視点:加工は材料物性を製品機能へ変換する工程

■現場視点:加工不良を見るときは「切断」だけを見ない

■顧客図面の先を見る

■OTIS視点:高精度打ち抜きは「入口」である

■「切れます」から「使えます」へ

■高精度とは、数字の小ささではない

■OTISでできること

■OTISの専門外

■まとめ:高精度打ち抜きは、熱の最後の1mmを作る

■必要以上の高精度も正解ではない

すべて±0.01mmにする。

それが常に正しいわけではない。

精度を厳しくすれば、

金型費。

設備条件。

検査工数。

加工速度。

が厳しくなる。

結果としてコストが上がる。

重要なのは、製品機能に必要なところへ、必要な精度を使うことである。

■精度には「意味」が必要である

なぜこの寸法は±0.05mmなのか。

なぜこの穴位置は±0.1mmなのか。

それが、

熱接触面積。

絶縁距離。

組付位置。

自動認識。

に関係するなら意味がある。

逆に、機能に影響しない寸法まで厳しくすると、量産性を悪化させる。

つまり高精度加工とは、単に数字を小さくする技術ではない。

機能に必要な精度を見極め、安定して実現する技術である。

■形状設計で加工安定性を上げることもできる

加工が難しい。

だから高性能な設備を導入する。

という方法だけではない。

例えば、

鋭い角をRにする。

細すぎる部分を少し太くする。

穴間距離を少し広げる。

キャリアを残す。

こうした形状変更で加工安定性が大きく上がることがある。

つまり加工会社は、図面を受け取るだけではなく、量産しやすい形状を提案することもできる。

■加工しやすい形状は量産コストにも効く

複雑な形状を一回で抜ける。

材料歩留まりが良い。

金型寿命が長い。

搬送しやすい。

こうした設計にできれば、

加工速度が上がる。

不良率が下がる。

設備停止が減る。

つまり形状設計は、品質だけでなくコストにもつながる。

■材料歩留まりも設計段階で決まる

同じ部材でも、ロール上にどう配置するかで材料使用量が変わる。

横向き。

縦向き。

千鳥配置。

複数個取り。

によって歩留まりが変わる。

高価なTIMやグラファイトでは、材料歩留まりが部品価格へ大きく影響する。

つまり高精度加工では、製品形状だけでなく、材料上の配置まで設計対象になる。

■加工精度と材料歩留まりは競合することがある

部材間隔を狭くすれば材料歩留まりは上がる。

しかし狭すぎると、

金型強度。

加工安定性。

剥離性。

が悪化する場合がある。

つまり最も材料を使わない配置が、最も安いとは限らない。

必要なのは、材料費・加工性・品質を合わせた全体最適である。

■ハーフカットという加工方法

粘着材やフィルムでは、材料全体を切り抜くのではなく、上層だけを切ってライナーを残すハーフカットを使うことがある。

これによって部材をライナー上に保持できる。

つまり、

加工。

搬送。

供給。

を一体化できる。

ハーフカットは単なる切断技術ではなく、量産工程へつなぐための加工技術でもある。

■ハーフカットでは深さ管理が重要になる

深すぎる。

ライナーまで切れる。

浅すぎる。

製品が切れていない。

つまり、刃物の深さを安定して管理する必要がある。

材料厚みも完全には一定ではない。

そのためハーフカットでは、

材料公差。

刃物状態。

設備精度。

を含めた管理が必要になる。

■不要部分をどう除去するかも加工技術である

打ち抜いた後には、不要部分が残る。

この不要部分を除去する工程をカス上げなどと呼ぶ。

複雑な形状。

細い形状。

小さな穴。

では、不要部分がきれいに除去できないことがある。

残れば異物になる。

製品へ付着する。

設備を止める。

つまり、切ることと、不要部分を安定して取り除くことの両方が必要になる。

■微小な抜きカスが品質問題になる

小さな穴を加工する。

抜きカスも小さい。

そのカスが材料上へ残る。

顧客工程で剥がれる。

電子部品へ付着する。

こうした問題が起こる可能性がある。

特に電子・半導体用途では、微小異物でも問題になる。

つまり高精度加工では、異物管理まで含めて品質である。

■加工後の洗浄では解決できない材料もある

粘着材。

TIM。

グラファイト。

などは、加工後に簡単に洗浄できない場合がある。

だからこそ、加工工程そのものをクリーンにする必要がある。

異物を出さない。

持ち込まない。

残さない。

という工程設計が重要になる。

■クリーン環境が必要になる理由

半導体。

光学。

医療。

高精度電子機器。

では、微小な異物が製品性能へ影響する。

TIMと発熱体の間に異物が入れば、その部分が浮く。

絶縁フィルムに金属異物が付けば、絶縁リスクになる。

つまりクリーン環境は外観品質のためだけではない。

熱・絶縁・信頼性を守るための工程条件でもある。

■検査できることも高精度加工の一部である

高精度に加工した。

しかし、本当に精度が出ているか確認できない。

これでは量産保証ができない。

必要に応じて、

寸法測定。

画像検査。

位置検査。

外観検査。

を行う。

つまり、作れることと、作れたことを証明できることの両方が必要になる。

■全数検査と工程保証を使い分ける

すべての寸法を全数測定するのは現実的ではない。

そのため、

重要項目は画像検査。

その他は抜き取り検査。

工程条件は設備側で管理。

というように組み合わせる。

重要なのは、検査を増やすことではなく、必要な品質を効率的に保証する仕組みを作ることである。

■高精度加工の本当の難しさは「繰り返すこと」にある

一個だけなら作れる。

これは試作技術である。

しかし量産では、

朝も。

夜も。

夏も。

冬も。

材料ロットが変わっても。

何万個作っても。

同じ精度が必要になる。

つまり高精度加工の価値は、最高精度の一個を作ることではない。

必要な精度を、量産で繰り返し再現することにある。

■金型メンテナンスも品質設計である

金型は使用すれば摩耗する。

摩耗すれば、

バリ。

寸法。

切断状態。

が変わる。

そのため、

何ショットで点検するか。

どの状態で交換するか。

どの項目を監視するか。

を決める。

つまり量産では、金型そのものを管理することが必要になる。

■加工データを蓄積すると精度は強くなる

この材料では、この条件。

この厚みでは、この金型。

この形状では、この送り条件。

というノウハウが蓄積される。

新しい案件でも、過去の加工データから条件を予測できる。

つまり加工会社の競争力は、設備だけではない。

材料と加工条件の組み合わせに関する経験値にもある。

■失敗例:図面どおりに加工したが熱性能がばらつく

TIMの外形寸法はすべて図面公差内。

しかし製品温度にばらつきが出た。

調べると、TIMの貼付位置と発熱部位置の組み合わせによって接触面積が変わっていた。

つまり外形精度だけではなく、実装位置まで含めた精度設計が必要だった。

■失敗例:金属箔のバリが絶縁フィルムを傷つける

銅箔を高精度に加工した。

寸法は合格。

しかし端面に微小なバリが残った。

積層時に絶縁フィルムへ局所的な負荷がかかり、絶縁信頼性に影響した。

つまり、寸法が合っていることと、機能品質が合格していることは同じではない。

■失敗例:高精度を要求しすぎて量産コストが上がる

すべての寸法を±0.02mmで指定した。

加工はできた。

しかし、

金型費。

検査費。

加工速度。

歩留まり。

が悪化した。

調べると、本当に厳しい精度が必要なのは一部だけだった。

つまり、精度要求そのものも設計する必要がある。

■失敗例:試作では切れたが量産では安定しない

少量試作では問題なく加工できた。

量産速度を上げる。

材料張力が変わる。

カス上げが不安定になる。

刃物への糊付着が増える。

設備停止が発生する。

つまり、

「切れる」

と、

「量産で切り続けられる」

は違う。

■研究者視点:加工は材料物性を製品機能へ変換する工程

材料メーカーが開発するのは、材料性能である。

熱伝導率。

絶縁耐力。

弾性率。

粘着力。

などである。

しかし製品が必要としているのは、

この場所から熱を逃がしたい。

ここは絶縁したい。

ここだけ固定したい。

この部品を避けたい。

という機能である。

加工とは、材料物性を、製品が必要とする空間配置へ変換する工程と考えることができる。

■現場視点:加工不良を見るときは「切断」だけを見ない

寸法がずれた。

原因は金型かもしれない。

しかし、

材料張力。

送り。

温湿度。

材料ロット。

積層位置。

なども考える。

高精度加工は、複数の工程条件の結果として成立している。

だから問題解決も、金型だけではなく工程全体を見る必要がある。

■顧客図面の先を見る

顧客図面には、

外形。

穴。

寸法。

公差。

が書かれている。

加工会社は、そのとおり作ることが基本である。

しかしさらに、

この穴は何のためか。

この部分はなぜ細いのか。

どこが熱源か。

どこが絶縁部か。

どう貼るのか。

自動化するのか。

まで分かれば、より良い加工提案ができる。

つまり、図面を加工するのではなく、図面の目的を理解して加工する。

ここに加工会社の付加価値が生まれる。

■OTIS視点:高精度打ち抜きは「入口」である

OTISにとって、高精度打ち抜き加工は重要な基盤技術である。

しかし、そこで終わる必要はない。

打ち抜く。

ラミネートする。

複数材料を積層する。

ハーフカットする。

リール化する。

検査する。

顧客設備へ供給する。

ここまでつなげることで、高精度打ち抜きは単なる加工工程ではなくなる。

量産工程を成立させるための入口になる。

■「切れます」から「使えます」へ

材料を図面どおりに切る。

これは加工会社として必要な能力である。

しかし顧客が本当に欲しいのは、

切られた材料

ではない。

製品へ組み込める部品である。

さらに量産では、

自動機へ投入できる。

安定して貼れる。

性能がばらつかない。

ことまで求められる。

だからOTISが目指すべきなのは、

「この材料を切れます」

ではなく、

「この材料を、顧客工程で使える部品にできます」

という立ち位置である。

■高精度とは、数字の小ささではない

±0.01mm。

±0.05mm。

こうした数字は分かりやすい。

しかし顧客にとって重要なのは、その数字そのものではない。

必要な場所へTIMがある。

必要な場所だけ絶縁されている。

穴が正確に合う。

自動機が正しく認識できる。

何万個作っても同じ状態になる。

これが重要である。

つまりOTISが考える高精度とは、製品機能を安定して成立させるための精度である。

■OTISでできること

OTISでは、

● 高精度打ち抜き加工

● 薄膜加工

● 微細形状加工

● 金属箔加工

● TIM加工

● グラファイト加工

● 絶縁フィルム加工

● 粘着材加工

● 発泡体加工

● ハーフカット

● 開口加工

● スリット加工

● 高精度ラミネート

● 異種材料積層

● リール・ツー・リール加工

● キャリア設計

● 画像検査

● 自動化向け供給形態

● 試作から量産への工程設計

などを組み合わせ、材料を実際の製品工程で使える部材へ変えていく。

■OTISの専門外

OTISは、

● 熱伝導材料そのものの開発

● 半導体チップ設計

● 冷却装置そのものの設計

● CFD専業解析

を専門とする会社ではない。

材料そのものは材料メーカー。

製品全体の熱設計は顧客や専門会社。

必要に応じて、それぞれと連携する。

OTISが担うのは、その間にある、**「高性能な材料を、実際に組み込める量産部材へ変える領域」**である。

■まとめ:高精度打ち抜きは、熱の最後の1mmを作る

高性能なTIMがある。

高性能なグラファイトがある。

高性能な絶縁フィルムがある。

しかし、

必要な形になっていない。

位置が合わない。

穴がずれる。

バリがある。

貼りにくい。

自動機で扱えない。

量産するとばらつく。

のであれば、材料性能を十分に生かすことはできない。

熱対策では、材料を選んだところで終わりではない。

その材料を、

どの形にするか。

どこを切るか。

どこを残すか。

どの位置に置くか。

どの精度で作るか。

どう供給するか。

まで成立させる必要がある。

だから高精度打ち抜き加工は、単なる切断技術ではない。

熱設計を、現実の部品へ変換する技術である。

材料メーカーが作った熱性能と、顧客が求める製品性能。

その間には、わずか数mm、時には1mm以下の加工領域がある。

しかし、そのわずかな領域が成立しなければ、熱対策全体が成立しないことがある。

OTISが支えるのは、その領域である。

熱の最後の1mmを、正しく、安定して、量産できる形にする。

それが、熱問題における高精度打ち抜き加工の役割なのである。

 

コラム監修:角本 康司 (オーティス株式会社)
語学留学や商社での企画開発を経て2011年にオーティス株式会社入社。経営企画部を中心に製造・技術部門も兼任し、2018年より代表取締役として事業成長と組織強化に努めている。

 

※本記事は教育・啓発を目的とした一般的な技術解説であり、特定企業・製品・技術を示すものではありません

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